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北斗琉拳(北斗劉家拳)


 修羅の国にて伝承されている、北斗神拳と並ぶもう一つの北斗の拳。別名を北斗劉家拳と言い、三国志の時代に北斗神拳が三派に分かれた中の、劉家を守護するために生み出された拳であるとされている。TVアニメ版では、オウカの息子リュウオウが、野に下り創始した拳法であると語られている。伝承者はカイオウヒョウハンシャチと、彼等の師であるジュウケイ。北斗劉家拳としては、劉宗武劉玄信魏瑞鷹夏文麗泰峰などが拳を学んでおり、魏瑞鷹は劉家門を出た後に、この拳をベースにして極十字聖拳を創始している。
 羅聖殿が発祥の聖地とされており、そこには北斗神拳の陰に隠れ、世に出ることなく死んでいった歴代の伝承者たちの怨念が渦巻いている。

 北斗神拳からの分派であるため、拳法としての基本的な部分はかなり似通っている。秘孔術も北斗神拳同様に扱う事が出来るが、北斗琉拳ではこれを「経絡破孔」と呼んでおり、その数も秘孔の708個に対し、1109個と多い。

 北斗神拳との最も大きな違いとされているのが、「魔界」の存在である。拳の使い手が大きな怒りや憎しみを心に抱いたときに踏み入れる境地、それが「魔界」であり、北斗琉拳の究極の到達地とも呼ばれている。魔界を見た者は、悪魔の如き形相となり、その影は幻魔影霊と呼ばれる魔人の姿を地に映し出す。身体からは、邪の闘気とも言うべき「魔闘気」を止め処なく噴出しており、時にそれは一瞬の無重力状態を生み出し、相手に己の位置を見失わせるという強力な武器となるほか、敵の攻撃に込められた闘気を全て吸収し、威を弱めるといった効果も併せ持つ。

 魔界に入りし者は、一切の愛や情を持たぬ「魔神」へと変貌する。ジュウケイはかつて己の魔闘気に巻き込む形で妻と子を自ら殺めており、ヒョウは信頼厚き部下であった准将ナガトを惨殺し、その一族まで根絶やしにしようとした。だがこの二人の場合は、魔界に足を踏み入れたばかりの状態であったため、強い衝撃などによって正気を取り戻している。一方カイオウは、の死を忘れるために幼くして情を捨て、そのまま悪の心を抱いて育ったためか、魔界に振り回された前述の二人とは異なり、自らが魔界を支配し、感情をもコントロールできるまでに至っている。故に闘いの中で彼に愛を取り戻させることは出来ず、結果ケンシロウに倒されるまで、カイオウが改心することはなかった。

 こういった理由から、北斗琉拳は2000年もの長きにわたって魔道の拳として虐げられ、本来は伝承する事を禁じられてきたとされている。しかし蒼天の拳の中での北斗劉家拳には、上記のような「魔界」や「虐げられてきた」というような描写は無く、伝承も普通に行われている。それどころか、「北斗神拳に伝承者なき場合は、これを劉家拳より出す」という掟が存在するなど、むしろ北斗三家拳の中で最も北斗神拳と密接な関係にある拳として描かれている。しかし、闘気の扱いに長けている事や、梵語の呪文を唱えている点など、相似点もいくつかみられる事も確かである。


 『北斗の拳(セガサターン版)』には、次代の北斗琉拳伝承者であるホシムが登場する。彼はカイオウですら勝てなかった魔闘気に打ち勝ち、北斗琉拳を完成させたと言われていたが、心の動揺を突かれ魔界に落ち、拳の名を「魔道琉拳」と変えてケンシロウに戦いを挑む。また、彼の兄であるゼンオウは、ホシムとの伝承者争いに敗れた後に「北斗無明拳」なる拳を伝承しており、この二つの拳の間には『琉拳無明拳の誓い』なるものが存在し、どちらかが北斗神拳に挑むとき、もう片方はそれを支え、共に助け合い北斗神拳を討つという密盟が交されている。
 同様に、原作後のストーリーを描いた『北斗の拳4 七星覇拳伝 北斗神拳の彼方へ』では、幾人か残っていた北斗琉拳の使い手は、全て元斗皇拳の使い手達に滅ぼされ、後に元斗皇拳が北斗琉拳の魔界を取り込んだ「元斗琉拳」が創始されている。魔界を使いこなすと言われるこの拳は、北斗琉拳よりも魔闘気の扱いに長けており、バリアを張って道を塞いだり、敵に幻覚の世界を見せたりすることが出来る。