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夏文麗
かぶんれい



登場:第142話
肩書:劉玄信の娘
流派:北斗劉家拳
CV:岡本麻弥(ぱちんこ)

 北斗劉家拳の尼僧。劉宗武の元恋人。

 幼き頃に劉宗武と出会い、後に恋人同士に。宗武がドイツ軍に身を投じようとした際、愛するが故にそれを制止するが、女であるが故に愛するのだとして、乳房を抉り取られた。その後、死の病を患い、尼僧となるも、宗武への愛を消すことは出来なかった。

 宗武が上海に戻ってきた後、拳志郎のもとを訪ね、宗武の抹殺を依頼。だがそれは憎しみではなく、あの世で宗武と一緒になりたいという彼女の一途な愛であった。その後、かつて"死鳥鬼"と呼ばれた流飛燕の変貌ぶりを見て、拳志郎の拳が宗武の心を変えるのではないかという可能性を抱いた。

 自らの死期が近い事を悟り、泰聖院へと訪れ、美福庵主に最後の別れを報告。だが天授の儀を見届けるまで死んではならないと言われ、後に訪れた宗武の澄んだ眼差しを見て、憎しみを消失。宗武から全ての髪の毛を剃り落すよう頼まれ、生まれ変わった恋人を闘いへと送り出した。その後、美福庵主と共に天授の儀を見届け、宗武に生き続けてほしいという己の本心を顕にした。

かつて宗武との間に子供(阿光)をもうけたが、死して生まれたため、その遺骨を常に懐に忍ばせている。




 文麗姉さんである。可愛いのである。何を隠そう、私が蒼天の中で一番好きな女性キャラクターである。

 彼女は典型的・・・というかほぼ究極系のツンデレキャラだ。血を吐きながら宗武の死を願ったかと思えば、死して生まれた二人の子・阿光の骨に顔を寄せながら涙する。もはやツンとデレを越えて精神分裂を起こしているんじゃないかという程の感情のジェットコースターが実にチャーミングだ。
 それだけではない。彼女が宗武の死を願ったのは憎悪からではなく、己の死が間近に迫っていたからであった。せめてあの世でくらい宗武と一緒になりたいという、仮にも僧侶である者にあるまじき思考で拳志郎に殺害を依頼したのだ。つまり彼女にはツンにデレだけでなくヤンも備わっていたのである。ゆで理論的に言うと威力は12倍だ。強い。

 しかしツンもヤンもデレも含めて、彼女の最大の魅力はその業深きまでの愛である事は間違いない。捨てられ、乳をもがれても、宗武への愛を止められない。病で死に行く身体ならば、せめてあの世で宗武と一緒になりたいと望むも、愛した男の死が目前に迫ったとき、彼女はその弱りゆく手を精一杯空へと伸ばして男の生を願った。涙で顔を濡らしながら敗れた宗武へと駆け寄り、そこで彼女は口にする。「あ・・・あなた・・・」と。死して一緒になるのではない。己に残された僅かな時間を宗武と共に生きたい。それが自分の本心であることに、彼女はようやく気づいたのだ。そして宗武もまた、己に巣食う闇を全て払ったことで、文麗のもとへと戻ってくることができた。我が子・阿光が死した時に止まった二人の時間が、最後に再び動き出したのである。

 蒼天の拳の主人公とヒロインは、拳志郎と玉玲だ。悲劇によって引き裂かれ、天の導きによって再会した二人の愛は大きかった。だが運命に翻弄され、心すれ違わせた二人が最後に結ばれた時の愛は、それ以上に果てしなく大きくなる。故に、主役ではない二人の愛が、この壮大な物語のクライマックスを飾ることが出来たのである。


 ちなみに、彼女のモデルは女優の故・夏目雅子氏ではないかと思う。理由としては・・・まあ見たまんま、僧衣を纏った夏文麗と、西遊記で玄奘三蔵を演じられたときの尼僧の衣装が非常によく似ていること。ポイントはどちらも超絶美女尼僧である点ね。あと、どちらも名前が「夏」から始まるところも偶然とは思えない。それと悲しいかな、二人とも若くして病で亡くなっておられる点も一致しています。いや厳密にはまだ劇中の文麗は死んでないけど。

 そういうイメージで見ると、私が蒼天の拳で一番好きなこのシーンも、三蔵法師がお供の3妖怪を叱責している場面のように見えてきますよね。配役は、拳志郎が悟空、飛燕が沙悟浄、宗武が猪八戒ってのが妥当なところかな。