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劉宗武
りゅうそうぶ



登場:第137話〜
肩書:北斗劉家拳伝承者 ドイツ軍少尉
流派:北斗劉家拳
CV:玄田哲章(ぱちんこ)

 北斗劉家拳伝承者。ドイツ軍少尉。

 幼き頃、杜天風に両親を殺され孤児に。乞食として生きていたが、劉玄信にその根性を認められ、北斗劉家拳の門下となってその才を発揮した。
 成人後、玄信の遺言により北斗劉家拳の伝承者となるが、あまりにも強い自らの力に溺れ、緩やかに狂気の道へ。更には夏文麗との間に生まれた子・阿光が死して生まれたことで、光を喪失。自らの力で世界を変えんと、ドイツ軍の将校として中国を離れる事を決めた。その際、自らを止めようとする文麗に対し、女であるが故に愛するのだと言い放ち、その乳房を抉り取った。

 ドイツに渡った後、ハンス・ゼークトよりヒトラー暗殺を命じられ、寝室へと潜入。だがあまりにも覇気の無いその標的を前に、己の拳の存在意義を見失い、天は乱を望んでいるのだと確信。自らの北斗劉家拳を、この世に戦乱をもたらすために使うことを決めた。その後、ゼークトの死と共にその存在を闇に伏されていたが、エドモンド・ヘッケラーの召喚を受け、上海に帰国。戦争を起こして兵器を売ろうとするヘッケラーと目的を共有し、和平の使者・鮫島義山を暗殺するなどして日本と中国の戦争を加速させた。だがその行為が、北大路剛士の夢を奪ったとして、拳志郎から戦いを挑まれる事に。ギーズの墓の前で対決に臨み、圧倒的な力で攻め立てたものの、拳志郎の中にある深い闇を感じ取り、結局闘いは痛み分けに終わった。

 拳志郎との闘いの後、の仇である杜天風が上海に現れた事を知り、一時的に標的を変更。ヘッケラーの裏切りに遭いながらも執拗に杜天風を追い、一旦は競馬場に追い詰めたが、杜が用心棒として雇っていたヤサカの不意打ちを受けて負傷した。その後、潘玉玲に頼まれて潜水艦を出動させるも、その狙いが杜天風であることを知り、その現場にて偶然杜天風と再会。秘孔指突防御装置にて感電させられたが、逆にそれを利用して感電死させ、長年苦しめられた悪夢を清算した。

 その後、拳志郎との闘いの時が近いことを感じ、寧波にある泰聖院へ。宿命の意味も知らず、虚無に彷徨った己の愚行を師に詫び、髪を全て剃り落し、いち拳士として拳志郎との天授の儀に臨んだ。激闘の末、戦いは蒼龍天羅による無想の拳の打ち合いへと突入し、己の左掌を貫通する拳志郎の一撃を受けて敗北。その後、止めとなる一撃を叩き込まれるはずであったが、女人像の慈悲によってその拳は止められ、生き永らえた。





 北斗の拳における最大最強の敵はラオウ様であった。果たして蒼天の拳はあのカリスマに匹敵しうる敵を登場させられるのか。期待高まる中、満を持して登場した北斗劉家拳伝承者は・・・ラオウ様であった。だがこれは作者が考える事を放棄したわけではない。あまりにもラオウ様が完成されすぎた存在だったのが悪いのだ。天才のたけし君よりテストで良い点数を取りたくても、たけし君が100点を取ったならば自分も100点をとるしかないのである。解答が全く同じでパクリだカンニングだ言われようとも100点をとるには仕方が無いのである。

 だが見た目こそ100点でも、その中身は残念ながらラオウ様には遠く及ばなかった。なんといってもドイツ軍に身を投じてからの行動理念がダサい。指一本で英雄を葬り歴史を弄ぶ。言葉にすると見栄えはいいが、言い換えれば裏でコソコソ動いていただけに過ぎない。どうせ悪事を働くなら、表に出て堂々と姿を晒して行動すべきだった。無論、その場合は数々の組織から標的にされることになるだろう。だが強すぎて人生に飽いていたというなら、それくらいスリリングな日常のほうが丁度良い筈だ。

 裏でコソコソという意味では、暗殺者である歴代の北斗神拳伝承者も同じだ。だが彼らの宿命は英雄を守護すること。あえて己が影となって行動することで、世を治めうる英雄を立てていたのだ。宗武がやっていたこととは根本的に違う。ゼークトにしろヘッケラーにしろ、宗武は「面白そうだから協力した」と言っているが、向こうからすれば使い勝手のいい刺客でしかなかっただろう。仮にも北斗劉家拳を極めた男がそんな事でいいのか。いや、良くは無い。だからこそ彼が鮫島義山を殺したとき、その瞳は深い虚無を映していたのだ。己が生きる目的を得るまで・・・つまり拳志郎と出会うまで、宗武は死んでいたのである。

 そして天授の儀を目前に控え、遂に宗武は生まれ変わることになる。生きることに飽いた投げやりな心は拳志郎という最大の好敵手との出会いによって打ち消され、命を惜しむことで一片の隙も無い闘神へと化けた。そしてその変化は、見た目にも大きく顕れた。剃髪には、煩悩に塗れた己を一度殺し、清浄なる存在として生まれ変わらせるという意味がある。死ぬためには首を落とさねばならないが、本当に死ぬわけにはいかないので、代わりに髪を落とすのだ。彼が全ての髪を剃りあげた瞬間、虚無に彷徨っていた小さき宗武は死んだ。同時にそれは、彼が「100点の敵」であるラオウという名の呪縛から解き放たれ、"劉宗武"という新たな100点の敵として生まれ変わった瞬間でもあったのである。


 それにしても、本当にラオウ様に良く似ている。本当に宗武とラオウ様に血の繋がりは無いのだろうか。ラオウ様は北斗宗家の血を引く人間である。もし繋がりがあるなら、宗武にも宗家の血が流れているはずだが、残念ながら彼の実父・劉宗建はただの金貸しであった。杜天風にあっさり殺されている所を見ると、拳の心得もなさそうだ。ならばやはり北斗の一族とは無縁なのか。
 しかし気になるのは、姓の一致だ。宗武の姓も「劉」。宗武の師匠、玄信の姓も「劉」。そして学ぶ拳法は「劉」家拳。これは果たして偶然なのだろうか?まあ劉は中国でも4番目に多い姓らしいので偶然でもおかしくはなかろう。しかしである。たまたま劉玄信が弟子に迎えた「劉」姓の子供が稀代の天才で、北斗劉家拳史上最強の男になりましたというのはミラクル過ぎる。ならばやはり宗武にも宗家の血が流れていたと考えるのが自然だろう。
 そういえば、ラオウ様やカイオウに流れていた宗家の血はリュウオウの血脈であり、これは自他共に誰にも認識されていなかった。無論それはこの1930年代でも同じことだろう。ならば劉宗建が己が宿命を知らず、拳の才能に気付くこともなく、ミナミの帝王と化していてもおかしくないのだ。1800年の歴史の中で雑多に埋もれてしまった天才の血脈が、宗武と玄信の偶然の邂逅によって再び北斗の一族の下に帰ってきたのだとしたら、中々ドラマチックではないか。

 だが血の問題が解決したとしても、ラオウ様が宗武の子孫であると決まったわけではない。もしそうだとするなら、年齢的に考えてラオウ様は宗武の孫である可能性が高いということになるが、果たしてそれは有り得るのか。
 ここに絡んでくるのがジュウケイの存在だ。宗武以外に北斗劉家拳の使い手が残っていないことを考えると、蒼天の拳のストーリー終了後にジュウケイが宗武に弟子入りした可能性は高い。その後宗武には子供が生まれるが、おそらく女の子だったのだろう。故に拳を伝承することが出来ず、そのままジュウケイが次代の北斗劉家拳(北斗琉拳)伝承者となった。やがてジュウケイもまた妻と子を授かるが、魔界入りしたノリで二人を殺してしまい、後継者がいなくなるという事態に。しかしその後、宗武の娘がカイオウ、ラオウ様、トキといった子供らを次々と出産した。つまり宗武の娘が、いわゆる"母者"だったということだ。師匠(宗武)は、何の縁も無い自分に北斗劉家拳を授けてくれた。ならばその恩を返すためにも、今度は自分が師匠の孫達に拳を教えるべき。そう考えたが故に、ジュウケイはカイオウに北斗琉拳を学ばせた・・・なんて事があったのではないだろうか。

 ただこの説だと、納得のいかない部分もある。まずジュウケイがカイオウに厳しすぎること。大恩ある宗武師匠の孫に、あれだけ屑星クズボシ罵りながらのコーチングなどできるものだろうか。まあ、その屑星である自分が不相応に北斗神拳に対抗心を燃やしたことで妻と子を失っているのだから、しつこく言い聞かせたかった気持ちはわかるけどね(逆効果だったが)。あと宗武もジュウケイに対して非常にスパルタで、それを孫相手に晴らしてるだけかもしれんが。

 それともう一つ、こちらの方が問題なのだが、宗武にもし子供が生まれたのだとすれば、それは宗武が夏文麗亡き後に新たに妻を娶ったということになる(流石にあの身体ではもう生めないだろう)。私には、宗武が文麗以外の女性を愛したなどとはどうしても思えないのだ。宗武は、師・玄信亡き後にその骨をいつまでも持っていた。文麗もまた宗武との子・阿光の骨を懐に忍ばせていた。そんな過去を引きずるボーンコレクター同士の愛を、宗武が忘れられるはずが無いのだ。これは考察ではない。ただの私の願望である。だからラオウ様=宗武の孫説は無し!ありえません!これにて解散!