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アイリ



登場:原作(32〜160話)TVアニメ版(25〜115話)、他
肩書:レイの妹
CV:安藤ありさ(TVアニメ版)
   満仲由紀子(PS版)
   佐藤聡美(DD北斗の拳)
   庄司宇芽香(北斗無双・真北斗無双)
   白石涼子(北斗が如く)


 レイの妹。結婚式を間近に控えていたが、七つの傷の男(ジャギ)によって両親を殺され、自らは奴隷として売却された。その後、数々の男達の間で売り買いされ、その辛さから逃れるために薬を浴びて目の光を閉ざした。


 プラハの元で働いていたとき、牙一族によって拐われ、レイに対抗するための人質として利用される事に。己のために兄が死ぬことを嘆き、舌を噛んで自決を試みたりもしたが、結果的にはケンシロウとレイの手によって牙一族は壊滅し、無事兄との再会を果たした。その後、ケンシロウの秘孔 建明によって視力も取り戻した。


 その後はマミヤの村で静かに生きていたが、村が拳王侵攻隊に攻め込まれ、やはり悪に翻弄されて生きるしかないと絶望。しかしリンから諦めないよう諭され、己をかばって捕まったその姿を見て覚醒。戦う勇気を持ち、ボウガンを手に拳王軍と戦った。


 天帝編では、長老の墓に祈っていた時、アスカを預けに来たケンシロウと再会。アインの葬儀にも参列した。



 『レイ外伝 蒼黒の餓狼』では、奴隷としてアスガルズルを経由した後、ソウという男のもとへ再び売られ、行方不明に。また、幼い頃はシュウの息子のシバとよく遊んでいたと語られている。


 『ジュウザ外伝 彷徨の雲』では、兄レイとともに、ジュウザとは旧知の仲だと語られている。マミヤの村に現れたジュウザと久しぶりの再会を果たし、既に兄が殺された事、マミヤがその兄の事を愛していた事を告げた。


 『劇場版 北斗の拳』では、ジャギのもとに捕らわれていたところを、ケンとレイの手によって救出。視力を取り戻しても目を開けることを怖がっていたが、リンの持ってきた花に希望を見出し、瞼を開いた。
 尚、マミヤの髪の色は、原作カラー絵では金、TVアニメ版ではピンクだが、本作では青色になっている。






 数ある北斗キャラの中で初登場が一番ド派手だったのが彼女だ。




 
闇夜の峡谷に、突如照らされるスポットライト!
光の中に浮かび上がる絶世の美女!



 いや〜凄い演出ですね。サラ・ブライトマンのライブでも始まりそうな勢いですね。更にはこのアイリの神々しさよ。ドレスキッラ〜、羽衣ヒッラ〜、髪ファッサ〜。つま先立ちピーンですよ。まあ、アイリ的には次の御主人様に気に入ってもらえないと生きていけないからね……。そんな哀しい美しさあるかね。


 実際このシーンは、その派手な演出に見合う、牙一族編における最重要ポイントでもある。ケンシロウとレイがいりゃあ牙一族なんて楽勝じゃ〜んという展開が、このアイリの登場で一気に雲行きが怪しくなるという、牙一族側の秘策がバッチリ決まった瞬間なんですよね。遊戯王なら例のBGMが流れ出すところですよ。 あのド派手な演出も、レイの感情をグチャグチャにして正常な判断を出来なくするためのものだろう。牙大王の敏腕っぷりが伺える。



 ただ、そんなセンセーショナルな初登場をした割には、アイリの人気はそれほど高くない。特に連載当時のキッズには、かなり受けは悪かったと思う。

 もちろん彼女の境遇を聞いて可哀想とは思うだろう。しかし子供にはそれがどれほどの地獄であったかはピンと来ないし、それよりも「こいつずっと暗いな……」というマイナスイメージの方が大きかった。初期の彼女はとにかくネガティブの塊のような存在だったんですよね。そんなやつ他にもいるだろと思われるかもしれないが、北斗の拳って意外と「絶望している人」ってのが少ないんですよ。時はまさに世紀末の中で、割とみんなポジティブに生きてるんです。だから余計にアイリのネガティブっぷりが悪目立ちしちゃうんですよねえ。


 しかしアイリが偉いのは、そんな絶望の中でも、決して死を選ぼうとはしなかったことだ。婚約間近に拉致され、その際に両親は殺され、姓奴隷として売買され、現実逃避のために両目の光を閉ざし、心を捨てた人形としての日々を送る。そんな生き地獄を強いられても、彼女は生きることを選んだのだ。


 アイリ自身は、「死ぬ勇気が無かった」だけだと言う。だが私はそうは思わない。実際、牙一族に人質に取られた時、彼女は兄の命を救うため、自ら舌を噛んで死のうとしていた。死のうと思えばいつでも死ねたのだ。




 何故この時だけアイリは死のうとしたのか。それは、彼女の生きる希望がレイだったからだ。絶望と暗闇の中にあっても、頼れる兄の存在が、彼女に最後まで希望を捨てさせなかったのだ。その兄の命が危機を迎えたこの時、彼女は初めて己の死ぬべき理由を見つけてしまったのである。


 だが最終的には二人とも死ぬこと無く、アイリとレイは再会を果たすことができた。深い絶望の中でも、兄という名の希望を失わなかった事で訪れた奇跡の再会。マルコ・ロッシやセーラ・クルーに匹敵する、世界名作劇場級の人間ドラマと言えるだろう。まあ夜7時半に放送できる内容では無いが。




●覚醒のタイミング





 兄と再会し、視力も回復し、ようやく人並みの幸せを手に入れたアイリであったが、その安寧の日々は突然終わりを迎える。拳王侵攻隊に村を制圧され、物陰で身を潜めるアイリは、「やはり人形として生きるしかない」と再びダウナー化。そんな豆腐メンタルをリンにダメ出しされ、挙句そのリンが囮になることで助けられるという駄目っぷりで、アイリ株は過去最低値を更新してしまう。




 しかしリンの勇気を目の当たりにしたことで、アイリは遂に覚醒。拳王侵攻隊が「レイの弱点」として己を捜索する中、自分から姿を現したアイリは、襲い来る拳王軍兵士をボウガンで撃退する。


「私は戦う!もう逃げたりしない!」
「わたしはリンちゃんに戦うことを教えてもらったの」



兄依存からの卒業を宣言し、勇ましく戦う彼女の姿に、もはやかつてのネガティブさは何処にもなかった。まさにアイリ最大の見せ場と言えるシーンであろう。


 だがしかし、だからこそ言いたい。
 ここはもっと頁を使ってほしかった。


 なんというか、足りないんですよね、魅せ方が。さっきまではシーツに隠れながら泣いてて、次出てきたときにはもう覚醒状態だったじゃないですか。違うんすよ。こっちはその弱虫な自分を脱ぎ捨てる羽化の瞬間が見たかったんですよ。そこが一番のトリハダシーンな訳だし、インプレッション数を稼げる所だし、ショートで切り抜かれるところじゃないですか。それをカメラの前で見せられなかことが、私は無念でならない。


 しかしそれは仕方のない事。何故ならそのアイリの覚醒は、リンがもたらしたものだから。このシーンで表現したいのは、人々を奮い立たせるリンの天帝powerであり、アイリはその恩恵を受けた中の一人に過ぎないのだ。

 加えてここはレイの最高の見せ場でもあり、間もなくラオウ様初登場も控えている。アイリに頁を割いてる余裕など無いのだ。作中で一番ともいえるこの濃密な場面で覚醒してしまったことも、彼女の不幸エピソードの一つなのかもしれない。


 こうして見せ場を活かしきれなかったアイリに、再びチャンスが訪れることは無かった。実質、アイリの出番はここでほぼ終了。以降の彼女は、新血愁で死に行く兄の名を呼び続けるだけの「兄さんbot」と化した。


 以下が、覚醒後にアイリが発した全台詞である。





御覧くださいこの圧倒的なにいさん率。


29の台詞の中に21のにいさん。7割超にいさん。君ほんとに兄離れしたんか?と思うほどのにいさん豊漁祭である。


 まあもうすぐレイ死んじゃうんだから、こうなるのも仕方ないんですけど、このまま自立した姿をロクに見せぬまま退場ってのがね。勿体ないですよね。結局あの時のチャンスを逃したことで、彼女は「レイの妹」以上の存在になれなかった……ってことなんですかね。




●ラストチャンス


 しかしそんなアイリに、再び登場の機会が訪れる。


 月日は流れ、天帝軍が支配を強める中、再びマミヤの村を訪れるケンシロウ。そこにはレイの魂に祈りを捧げるマミヤとアイリの姿があった。







久しぶりに登場したアイリの第一声!


アイリ「ケ……ケンシロウさん」










終了〜〜〜!!!!



 これにてアイリさんの出番、完全終了となります!一応この後のアインの葬儀にも居るけど、ちっちゃく何コマか出てるだけで台詞は一切なし!!なので終了です!オールアップです!!お疲れ様でした!!


 いや〜〜……久々の登場なんだから、せめてもう少し出番はあげられなかったものか。あんな派手な初登場した娘ですよ。それが晩年はこんな扱いでいいんですか!落差ひどくないですか!大々的にデビューしたのに次第にフェードアウトして消えてったアイドルみたいじゃないですか!


 更にこの数年後には、リンとバットの結婚式が行われるのだが、そこにアイリの姿は無いんですよね。マミヤはいるのに。関係性を考えたらアイリも必ず出席するであろうに、一体どうしてしまったのだろうか。なにか体調面で問題でもあったのだろうか。おじさん心配です。