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北斗の拳 ジュウザ外伝 彷徨の雲
ストーリー キャラクター 流派・奥義



北斗の拳 ジュウザ外伝


[原案]
武論尊・原哲夫
[作画]
加倉井ミサイル



北斗の拳 ジュウザ外伝 彷徨の雲


は、コミックバンチ誌上にて連載された、雲のジュウザを主人公とした北斗の拳の外伝作品。ユリアを失い、生きる目的も見出せぬまま彷徨い続けるジュウザが、旅の中で様々な者達と出会い、懸命に生きようとするその者たちの生き様に触れるというストーリー。上巻、下巻の全二巻で単行本化されている。作者の加倉井ミサイル先生は女性であり、笠井先生のユリア外伝、ながて先生のトキ外伝に続き、三人目の女性作画北斗外伝となった。


 原作では決して重要な役所ではないのに、メインキャラを喰ってしまうほどの人気を誇るキャラクター、それが雲のジュウザだ。そんな魅力的なキャラクターが主人公であり、他の外伝がほぼ終了してしまったことも相成って、なかなかの注目度の中、連載がスタートしたこの作品。だが正直、第一話が始まった時点では、今後どうなってしまうのかと激しく不安にさせられた。なにより画風が独特で、特にバトルシーンでは「気合の入ったコマほど見難い」というとても残念な事になっていたからだ。今から思えば、週刊誌での連載という事で気合いが空回りしておられたような気がする。ただこの問題は回を追うごとに徐々に緩和され、最終回のラオウ戦では見違えるほど味のある絵になった。わずか16話の間でこれだけ上達されたのだから、話数を重ねれば更に評価は上がっていたかもしれない。短期連載で終わってしまった事が今更ながら悔やまれる。

 ストーリーに関しては、良い悪いというよりも、作品自体の方向性がジュウザというキャラクターに向いていない気がした。北斗の拳で一番の傾き者が主人公なのだから、やはりその設定を生かせる話にして欲しかったというのが本音だ。時折相手を小馬鹿にしたような態度をとる「プチ傾き」こそあれど、各ストーリーの締めは大体がシリアスジュウザさんであり、正直これはかなり勿体無い事だと思った。そういうのは他の月並なクールガイキャラにやらせておけばいいのである。他には真似できない、ジュウザならではの気持ちの良い御裁きが見てみたかった。そういう意味では、第一話が一番それに近い形であったかもしれない。
 作品全体の軸がハッキリ定まっていなかったのも問題だ。第1話でケンシロウをぶっ飛ばすために旅に出たのに、14話の時点で「どうでもよくなった」みたいな態度をとられては腰砕けもいいところである。まあこれは掲載誌の突然の休刊というハプニングも原因の一つなのだろうから、仕方がない部分もあるだろう。もし予定通りの話数をちゃんと描ききれていれば展開も変わっていたのだろうか、興味はある。単行本巻末等で少し触れて欲しかった。

 ただマニア視点で見た場合、この作品は「北斗の拳のボリュームを増すための肉付け」としてなかなかの優良作であると言える。原作のジュウザの行動と結びつけてもほぼ矛盾がないので、資料としては優秀だ。中でも今まで謎に包まれていた「五車星の成り立ち」について描いたエピソードは興味深かった。やはり外伝と言うからには、もっとこういったエピソードを増やすべきなのだ。
 中でも私が上手いと感じたのは、原作キャラとの距離感だ。サウザーやレイといった「メインキャラ」であり、「ジュウザと接点のない人物」との絡みは、過去のエピソードに顔見世程度で出てくるだけ。一転、本筋に登場するキャラクターには、ヒューイ、シュレン、リュウガといった、比較的自由に動かしやすい者達をチョイス。この辺りの線引きが絶妙だった。言い方を変えれば「作品としての切り込みが足りない」とも取れるが、私自身は外伝にそこまでの図々しさは望んでいないので、これくらいが丁度良い。

 主人公が殆ど奥義を使わなかったのは残念だが、我流拳という設定を考えればこれは仕方がないだろう。むしろ乱発されると逆に不自然だ。それよりも私は、ヒューイとシュレンに北斗の拳史上初のミックス奥義を使わせた事を評価したい。もしかしたらこれは革命になるかもしれない。特にゲームという分野においては、今後は北斗無双のようなアクション物がメインとなってくるだろう。その世界観をより広げるには、このミックス奥義は避けて通れぬコンテンツになるのではないかと思う。そうなった場合、このジュウザ外伝が開拓者となるわけだ。


 そんなこんなで、最終回時点では自分の中での評価もかなり上がっていたのだが、後に発売された単行本では、前半部分のジュウザの顔がほぼ全部描き直されているという事件があり、再び物議を醸した。確かに連載開始時の童顔ジュウザと、最終回時点で原作の絵に近い面長ジュウザは、もはや別人と言ってもいいレベルであった。短いスパンの中でこうも変わってちゃマズイだろうってことで、面長に統一することになったのだと思われる。だがこれは作者本来の画風ではなかったのだろう。無理に直した所為で、明らかにパースが狂い、完全に改悪となってしまっている場面も幾つか見られた。掲載誌の休刊といい、こういう不必要な修正作業といい、いろいろとツキが無かった作品であった。



作品キャッチコピー

「我が拳は我流、我流は無型――」

自由を愛する無頼の男・雲のジュウザ。
南斗五車星の宿命を捨て、
世紀末荒野をあてもなく彷徨う……。
暴力と腐敗の時代に、
何も恐れることなく
何からも縛られることなく
己の自由を貫いた男の
真の記録が遂に明かされる!!

掲載誌
週刊コミックバンチ 連載開始:414号(10年1月22日号)
連載終了:445号(10年9月10日号)



タイトルリスト

第1話 雲のジュウザ
第2話 最愛の女
第3話 籠の鳥
第4話 ジュウザVSラオウ
第5話 希望の光
第6話 究極の自由
第7話 変わらぬ景色
第8話 哀しき怒り
第9話 あの日の空
第10話 運命の印
第11話 天帝の使者
第12話 血の宿命
第13話 義の男
第14話 将の下へ…
第15話 灯の道
最終話 五車の星