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天翔十字鳳
てんしょうじゅうじほう



流派: 南斗鳳凰拳
使用: ・サウザー (対 ケンシロウ)
 …北斗の拳(96話) アニメ版(68話)
・サウザー (対 ラオウ)
 …ラオウ外伝(小説版)
登場: 北斗の拳/アニメ版/ラオウ伝殉愛の章/ラオウ外伝(小説版)/
北斗の拳3/北斗の拳6/北斗の拳7/激打2/激打3/パンチマニア/
PS版/北斗無双/真北斗無双/審判の双蒼星/北斗が如く/リバイブ/
ぱちんこ北斗






 南斗鳳凰拳の秘奥義。構えのない南斗鳳凰拳の中で、唯一構えをとるこの奥義は、帝王である南斗鳳凰拳に対等の敵が現れた時に帝王自らが虚を捨て立ち向かう、帝王の誇りとプライドをかけた不敗の拳。

 両手を横に広げた十字の構えから跳躍。「天空を舞う羽根」と化したその体は何者にも捉える事はできず、迎撃せんとする相手の攻撃は空を切り、逆に己の斬撃は相手の体を切り裂く。

 サウザーケンシロウとの戦いで使用。ケンシロウの攻撃を躱しつつ、肩口を二度切り裂き、膝を付かせる程の傷を負わせた。だが「触れずに秘孔を突く奥義」である天破活殺までは躱す事が出来ず、秘孔の効果によって脚の動きを封じられたことで飛翔できなくなった。





 南斗鳳凰拳が南斗聖拳最強たる所以は、この奥義を有しているからに他ならない。なんせ相手の攻撃を回避しつつ、己の攻撃だけ一方的に命中させられるのだ。我が身を武器として攻撃する南斗聖拳では、どう足掻いても勝ち目はないだろう。シュウのような手練が、闘う前からサウザーに負けを認めるような発言をしていたのは、この天翔十字鳳の存在を知っていたからであろう。サウザーが北斗三兄弟をまとめて相手にして勝てる気でいたのも、帝王の体に加え、この秘奥義の存在があったからに違いない。もし北斗神拳に天破活殺が無ければ、ケンシロウもなすすべなく敗北し、救世主伝説にピリオドが打たれていた可能性は高いだろう。



●何故攻撃が当たらないのか



 相手の攻撃を空切らせつつ、自らの攻撃で相手を切り裂く。これは北斗神拳の究極奥義、無想転生の特性に近い。いや、自由に動けない空中で行うことを考慮すると、それ以上だと言っていいだろう。そんな伝説級の奥義に比肩する程の技を、サウザーはどのようにして行っているのだろうか。相手の攻撃をいかにして回避しているというのか。




 この奥義を繰り出す際、サウザーは自らを「天空に舞う羽根」と例えた。確かに宙を舞う羽根を殴ることは出来ない。質量がほぼゼロに近いので抵抗も生まれないし、パンチが起こす風圧で流されてしまうからだ。大リーグボール3号と同じ原理である。これが天翔十字鳳の極意なのだろうか。

 だが少なくとも、跳躍してから着地するまで、サウザーの体は通常の放物線を描いている。つまりその間は「羽根」状態では無いということになる。ならばケンのパンチが当たる瞬間にのみ「羽根」になっているのだろうか。98kgもあるサウザーの体重が一瞬で消失する……?いくらなんでも都合が良すぎやしないだろうか。それにサウザーが拳を回避する際の描写は、真っすぐ飛びながらスッと空振りさせているような感じだった。羽根であるなら、もっとフワリと躱していなければおかしい。

 そもそも、もし本当に羽根化が極意だとするなら、サウザーは秘奥義の謎をペラペラと喋った阿呆ということになる。イチゴ味じゃあるまいし、流石にそんな事はありえない。やはりサウザーの言う「羽根」は、あくまで比喩的な表現に過ぎないと考えるべきだろう。



 天翔十字鳳の謎を解く最大のカギは、やはりその奥義を破った天破活殺にあると考えるべきだろう。天破活殺の奥義は、触れずして闘気をもって秘孔を突くことにある。ならば天翔十字鳳は、パンチという物理攻撃は回避できるが、闘気による攻撃は回避できない。そういうことなのだろうか。

 だがその場合、北斗剛掌波や元斗皇拳の技諸々も回避できないという事になる。南斗聖拳にも真空波を飛ばす技があるが、これも物理攻撃ではないので十分効果がありそうだ。つまり他の南斗六星でも攻略可能ということになってしまう。南斗最強拳の秘奥義が、そんな簡単に攻略されてしまう程度の技だとは考えにくい。


 実は天破活殺には、他にも注目すべき特性がある。それは「攻撃が見えない」ことだ。あの技はケンが指先から闘気を飛ばす技だが、実は作中ではその闘気らしきものは描かれていないのだ。



 加えてあの場面、技を受けたサウザーは「な…これは!?」とリアクションしている。それは、自分の身に何が起こったのか理解できなかったことを意味する。つまり、彼にはケンの放った闘気が見えていなかったのだ。
 更にその後、階段の石が七星に穿たれたのを見た兵士たちも「ああ!なんだ うしろの岩が吹っ飛んだ!」と口にしている。彼らには急に石が崩れたように見えたということだろう。つまり、彼らもまた闘気が見えていなかったということだ。

 天破活殺は「蒼天の拳」にも登場するが、ここでも被弾した流飛燕は何をされたのか理解できていなかった。やはり天破活殺の闘気弾は見えないのだ。
 しかし、闘気が視認可能である事は、作中で何度も公言されている。拳士ではない少年バットですらバキバキに見えていたよね。だが天破活殺で放たれた闘気は、誰の眼にも見えなかった。この「見えない闘気」という天破活殺の特性が、天翔十字鳳攻略に繋がった事は間違いない。







 ラオウ様によると、サウザーはケンの体の流れを完全に見切っていたからこそ攻撃を回避できていたらしい。しかし天破活殺は「見えない闘気」を放つ技であったため、見切るとか以前の問題……何をしているのかも解らなかった。故に回避できなかった。当然である。

 だがサウザーは、天破活殺を喰らった後も、もう一度天翔十字鳳を繰り出そうとしていた。それは、二度と天破活殺を喰らわない自信があったからだろう。例え「見えない闘気」であろうとも、先程までと同様に、流れを完全に見切れば対処可能だと踏んだわけだ。つまりは「攻撃のタイミング」を掴んだということである。この「タイミング」こそが、天翔十字鳳を成功させるために最も重要なポイントなのだ。敵の攻撃を見切り、着弾のタイミングで"何らかの回避行動"を行う。これこそが、天翔十字鳳による回避のシステムであると推測される。



 ではその「回避行動」とは何なのか。その謎を解くためのヒントは、ちゃんと作中に隠されている。注目してもらいたいのは。天翔十字鳳を放った際のサウザーの脚の変化を見て欲しい。








 お分かり頂けただろうか。そう、ケンシロウがパンチを放った時と、それが空振りした時のコマを見比べると、サウザーの脚の形が変わっているのである。具体的に言うと、後方に突き出された脚が右脚から左脚に変わっているのだ。


 一瞬の間に左脚を後方にやった。これはつまり、超スピードで後方を蹴ったということ。この動作は、いわゆる「踏み込み」と同じ。サウザーがケンシロウと初対面した時に見せた、あの見えない踏み込みと同じ脚の動き……それを空中で行っているのである。

 足場の無い空中での踏み込み……実に荒唐無稽な話だが、サウザーならば不可能ではない。作中最速クラスの脚力、跳躍力を有している彼の蹴りは、音速に到達している可能性がある。木人形にされたボクサーのパンチが時速200キロなので、その約6倍だ。楽勝だろう。物体がマッハで動くと、その先端の空気が圧縮され、衝撃波が発生する。これを足場にすることが出来れば、空中にいながら「踏み込み」も可能というわけだ。

 それを行うことで、何が起こるのか。答えは、「サウザーの飛行速度が急加速する」である。この加速こそが、天翔十字鳳の真髄であると私は考える。


 たかがスピードの変化くらいで…と思われるかもしれない。だが野球が好きな人ならば、その脅威が理解できるだろう。野球のバッターは、ピッチャーがボールをリリースした0.25秒後にはスイングを開始するという。その僅かな時間で、ボールの軌道やスピードをもとにヒッティングポイントを予測し、そこに向けてバットを振っているのだ。故に、もしそのボールが途中で「急激な加速」などしようものなら、予測は完全に崩壊する。バットがボールに当たる可能性は皆無であろう。

 天翔十字鳳のメカニズムもこれと同じ。上空から襲い来るサウザーに対し、ケンシロウとはドンピシャのタイミングで攻撃を繰り出しているはず。だがその拳が命中する直前、サウザーは空中で「踏み込み」を行い、急激に速度を増す。これにより、当たる「はず」だったケンシロウのパンチは虚空を切るのである。



図にするとこのようになる。





 おそらく加速の方向を若干上向きにすることで、コースも外していると考えられる。通算奪三振率ナンバーワンの11.74を記録した藤川球児のノビのあるストレートも、これを参考したのであろう事は想像に難くない。




 サウザーが天破活殺を受けた後の感情の変化を思い出して欲しい。秘孔が顕わになっても、サウザーの顔にはまだ余裕があった。しかし脚の動きまで封じられたと解った途端、彼は大粒の汗をかき、追い込まれた表情へと変わった。

 だがそれは「跳べなくなった」からではない。実際、サウザーはその後も逆立ちからのジャンプという手段で再び舞い上がっている。引き続き天翔十字鳳は使用可能だったのだ。あの絶望的な表情には、別の意味があったのである。

 それは、その後の決着の場面を見ればよく分かる。逆立ちから、再びケンシロウへと飛び掛かったサウザーであったが、先程までの回避術はどこへやら。彼はただ無防備に北斗有情猛翔破をその身に受けた。その原因は、脚が動かなかったから。空中での踏み込みを封じられたあの状態では、例え舞い上がることは出来ても、攻撃を躱すことはできなかったのである。あの絶望の表情、そして無防備に特攻せざるを得なかったという事実が、天翔十字鳳の真髄が「脚の動き」にある事を証明しているのである。





●原作以外での天翔十字鳳





 TVアニメ版では、鳳凰の形の闘気を纏う演出が加えられている。また、アニメでの台詞によると、鋼鉄をも切り裂く程の威力を持っているらしいが、ケンシロウの肉体は闘気によって鋼鉄以上の硬度になっているため傷が浅すんでいる事になっている。

 アニメでは三度目の跳躍時に、ケンシロウも跳躍し、空中で激しい攻防を繰り広げるというシーンが加えられている。






 ゲーム作品においては、「秘奥義」として見栄えを良くしたいためか、TVアニメ版の「鳳凰の形をした闘気」という演出が度々取り入れられている。




 『北斗の拳 -審判の双蒼星 拳王列伝-』では、サマーソルトキックで敵を蹴り上げた後、聖帝十字稜の上で鳳凰の闘気を纏い、それを発射してぶつけるという技になっている。当たれば即勝負が決まる一撃必殺奥義。





 『北斗無双』シリーズでは、周囲の敵を巻き込むように舞い上がり、巨大な鳳凰形の闘気を放出。聖帝十字陵の頂上でとったあの構えで攻撃するという奥義になっている。その鳳凰の羽ばたきで攻撃する鳳凰炎舞刃、鳳凰の闘気を飛ばす落鳳破という技も登場する。





 『北斗が如く』では、ナイトクラブ内にある鳳凰のオブジェの上に立ち、そこから跳躍するという演出になっている。天破活殺を喰らった後、さらに蹴りで吹っ飛ばされ、衝突した鳳凰のオブジェは崩れ去る。






 『北斗の拳6』でも鳳凰の闘気を纏って突進する。ただ「空を舞う羽」を意識したのか、フワフワとしながらおかしな軌道を描くという変わった技になっている。






 アプリゲーム『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』では、鳳凰拳の先代伝承者であるオウガイの天翔十字鳳も見ることができる。跳躍で相手の背後を取って切り裂き、舞い上がって上空から更なる追撃を加えるという技になっている。この背後を取る動きは、サウザーが15歳の時に行われた伝承者への試練の時の動きをモチーフにしているものと思われる。

 ちなみにこのゲームでの天翔十字鳳は十字に切り裂くのだが、他にも『北斗が如く』や『北斗の拳7』『激打2』 などでも同様に十字斬りが取り入れられている。




 外伝作品においては、天翔十字鳳は殆ど描かれていない。これは、互角の相手が現れた時のみ用いられるという設定の秘奥義であるため、安易に登場させられないのだと考えられる。
 唯一、『ラオウ外伝(小説版)』にて、ラオウとの戦いで登場している。だがやはり上記の理由の為か、漫画化の際には極星十字拳へと変更されていた。







概要