
生命線ともいえる体の謎を解かれたサウザーだが、彼の帝王としての誇りは未だ死んではいなかった。サウザーには、南斗鳳凰拳という最強の武器が残されていたからだ。跳躍し、シュウの眠る聖碑の上へとたったサウザーは、ゆっくりと両手を体の横へと掲げた。それは、帝王の拳、南斗鳳凰拳には無いはずの"構え"であった。南斗鳳凰拳奥技
天翔十字鳳。自らと対等の敵が現れたとき、帝王自ら虚を捨て立ち向かわねばならぬ、帝王の誇りをかけた不敗の拳。それは、サウザーがケンの力を認め、奥義を尽くしてきた事の証であった。その奥義に対し、ケンもまた奥義で応えた。北斗神拳秘奥技
天破の構え。天の守護神である北斗が、天乱れた時、天をも破るといわれる究極の奥義。その相対する二極星の秘奥義に興奮した天は、二人の頭上に大粒の雹を降らせるのだった。
再度跳躍したサウザーに向かい、ケンは自らも跳躍して立ち向かう作戦に出た。虚を突かれたのか、流石にケンの攻撃を透かすことができなかったサウザーだが、それでも空中戦ではサウザーに分があった。ケンの激しい攻めを全て受け止めた後、強烈な蹴りでケンを叩き落すサウザー。ダメージこそなかったものの、その攻防は、闘いの流れが己にあることをサウザーに確信させるには十分だった。天に輝く極星は北斗ではなく、将星。北斗の影に怯え、沈黙を強いられてきた南斗の先人達の恨みを晴らすべく、再びその身を舞い上がらせるサウザー。しかしその時、遂にケンは動いた。"構え"から"技"へ。ケンの突き出した手の先から、眩い光が迸る。そして次の瞬間、宙で動きを止めたサウザーの背後で、十字稜の石段が吹っ飛んだ。触れずして、闘気を持って秘孔を突く北斗神拳の奥義、天破活殺。ケンの指先から放たれた闘気の弾は、サウザーの背に、そしてその後にあった十字稜にまでも七つの傷を刻んだのであった。
無限に繰り出されるケンの拳が、顕わになったサウザーの秘孔を捕える。そして、最後に突き上げられた拳。それは、苦痛を生まぬ致命の奥義、北斗有情猛翔破であった。
十字稜の頂から流れ落ちる血。同じ南斗の男の死に、シュウの仁星もまた涙していた。そしてそれに堰を切られたかのように、聖帝十字稜は音を立てて崩れ出した。ケンとサウザーの激闘は、既にこの十字稜全体に大きなヒビを走らせていたのだ。2人の南斗の男の哀しみを背負い、またひとつ強くなったケンシロウ。一人の敵が死に、そして一人の敵の成長を見届けたラオウは、再び覇天への道へと帰っていった。トキとケンシロウ。その二人の敵を倒すため、今自分が為すべき事をラオウは解っていた。| [漫画版との違い] ・二度肩を切られた後の三度目のサウザー跳躍を、ケンも跳躍して迎え撃ち、空中戦に持ち込むシーン追加 ・最後のぶつかり合いのとき、闘気の衝撃で周りの建物が崩壊するシーン追加 ・有情猛翔破の時、サウザーは何も出来ずに喰らうが、アニメでは多少拳を交錯させた後喰らう ・十字稜から降りてきたケンが、リンや子供達に囲まれるシーン追加 |
|
| 第67話へ≪ | ≫第69話へ |