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[第67話]
極星激突ケンVSサウザー!
天を守るは我が星一つ!!


 ケンシロウとサウザー。二人の闘いの舞台として選ばれたのは、聖帝十字陵の上であった。ケンシロウを十字稜の礎とすべく、自ら段を登って行くサウザー。そんな中、サウザー様の手を煩わせるまでもないとケンに弓を構える男がいた。しかし、その正規兵を止めたのはラオウであった。この宿命の対決を汚すものには死あるのみ。そう言って、正規兵の首を捻り折ったラオウもまた、この闘いの行く末に心惹かれる一人であった。

 十字稜の階段の両脇に配置された子供達は、頂きへと向かう帝王の気に動くことすら出来ないでいた。しかしただ一人、レムだけは覚悟を決めていた。己達を未来を照らす光だと言ってくれたシュウ。そのシュウを殺したサウザーに対し、レムは怒りを抑え切れなくなっていたのだ。自らの立つ段にまで来たサウザーに向かい、隠していたナイフを突き立てるレム。全く意に介していなかったその子供の攻撃は、サウザーといえども避けられるものではなかった。だがサウザーは、レムに手をかけなかった。ゆっくりと右足に突き立てられたナイフを抜くそのサウザーの目にあったのは、呆れみであった。愛や情。それらの感情に振り回されることによって、こんな子供までをが狂わされてしまう。愛ゆえに人は苦しまねばならぬ。愛ゆえに人は悲しまねばならぬ。その辛さを一番知っていたのは、このサウザー自身であった。

 捨て子であったサウザーを拾ったのは、先代鳳凰拳伝承者オウガイだった。子の無かったオウガイは、サウザーを我が子のように育て、そして自らの拳をサウザーへと伝えていった。一つの技を習得した後そのオウガイに抱かれるぬくもり・・・その喜びを得る為、サウザーもまた驚くべき速さで拳を身につけていった。そしてサウザーが15になったとき、それは起こった。鳳凰拳伝承者への道としてサウザーに与えられた試練、それは襲い掛かってくる敵と目隠をしたままで戦い、勝利するというものであった。サウザーが経験する初めての真剣勝負。だが、結果はサウザーの圧勝に終わった。背後から飛び掛ってくる敵の気配を察知したサウザーは、宙へ逃げると同時に、その胸を十字に切り裂いたのである。確かな手ごたえに勝利を確信し、倒した相手へと近付くサウザー。だが、雷の光が映し出したその男は、師父オウガイの姿であった。南斗鳳凰拳もまた、北斗神拳と同じく一子相伝。伝承者が新たな伝承者に倒されていくのが彼等鳳凰拳伝承者に課せられた宿命だったのだ。オウガイは、サウザーの瞳の中に極星・南斗十字星を見ていた。自らを超え、立派に成長したサウザーに殺されることが、オウガイの本望なのであった。しかし、サウザーの心の傷はあまりにも大きかった。優しかった師父オウガイを自らの手で殺してしまったという事実。それによって背負った哀しみは、これ以上ないほどの苦しみを、サウザーの心に与えたのである。その苦しみから逃げるためにサウザーが選んだ方法。それは、自らが帝王となりて愛を捨てることであった。

 愛を捨てたサウザーに目覚めたもの。それが、帝王としての星であった。帝王として愛を否定するために闘うサウザー。その哀しき男にケンがやらねばならないこと、それは自らが愛のために戦い、愛を失ったサウザーの人生に終止符を打つことであった。

 サウザーの先制攻撃を仰け反って交したケンは、そのままサウザーの胸に背転脚を浴びせた。その技は、紛れもなくシュウの南斗白鷺拳であった。サウザーを葬るはあくまで乱世の拳、北斗神拳。しかしケンは、シュウの死に酬いるため、せめてサウザーの体に一傷シュウの拳を与えたかったのだ。だがサウザーにとっては、そのケンの行動も、情けを引きずった愚かなものにしか映らなかった。ザウザーの捨てた愛や情け。それが、この聖帝十字陵であった。部下に命じて開けさせた、十字稜の中腹に隠された聖室。そこに眠っていたのは、死んだオウガイのミイラであった。この聖帝十字陵は、オウガイのための墓であり、そしてサウザーの愛や情けを永久に封ずるための墓でもあったのだ。貴様の拳で血を流すことは出来ても、帝王の血を絶やすことは出来ぬ!師オウガイへの手向けに北斗神拳伝承者の死を捧げんが為、帝王の拳が再びケンシロウを襲う・・・

 相変わらず拳での戦いは、ケンシロウに分があった。サウザーのガードの隙をくぐり、その体へと激しい蹴りの連打を叩き込むケン。しかし、サウザーの肉体に変化は起こらなかった。帝王の体の謎に対し、未だケンは攻略の糸口すらつかめずにいたのだ。両手突きの応酬も制し、今度は胸に指を突き入れるケンであったが、やはりサウザーの秘孔は握れなかった。逆に筋肉の硬直で指を抜けなくされたケンは、苦し紛れにサウザーの体を宙へと持ち上げる。その時であった。自らの指に響いてきたサウザーの鼓動が、ケンの頭の中に何かを閃かさせたのである。だがしかし、間合いの中にいるケンをサウザーが放っておくはずも無かった。強く握られた拳で、ケンの顔面を何度も殴打するサウザー。やはり駄目なのか。その身を鮮血に染め、ゆっくりと階段を転げ落ちたケンの姿は、北斗神拳伝承者の二度目の敗北を意味していた。

 奢れるサウザーの眉を動かしたのは、トキの言葉だった。私はお前の体の謎を知っている。それを証明せんがため、十字稜へと歩を進めるトキ。だが階段へかかろうとしたその足を止めたのは、死の淵から立ち上がってきたケンシロウであった。手はかりぬ。そのケンシロウの言葉の意味、それは直ぐに結果となって現れた。突如サウザーの額が、血を吹いたのである。外部からの破壊ではない。それは正しく、内部からの破壊を極意とする北斗神拳ならではの傷であった。貴様の体の謎、見切った!拳士としてのケンシロウの才は、遂に無敵の帝王の体をも打ち破ろうとしていた。

放映日:86年3月13日


[漫画版との違い]
・原作では聖帝正規兵がケンを射ろうとしたのはオウガイの回想の後だが、アニメではレムに刺される前
・レムがサウザーに突き刺したのが、釘からナイフに変更
・サウザーのオウガイの呼び方が、お師さんから先生に変更


・聖室をひらけーい
こんなん作ってるから構造上の欠陥で崩れんだよ
・サウザーって
いくらお師さんが好きだからといって、十数年前に死んだミイラをいつまでももってたというのは・・・サウザーってかなり異常な性癖では?完成が遅れるとかいろいろリスクもあるのに、とにかく子供での聖帝十字陵建設にこだわったってのもなんか変。いや変態。オウガイと共に現世から離れた生き方してたから、ちょっと人と感覚違うところあるのかもしれない。


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