TOP


[第66話]
走れケンシロウ!
また一人友が死んで行く!!


 聖帝正規兵達の死体が散乱する道を、バギーに乗って横切る二人、リンとバット。直視できぬその光景から早々に立ち去ろうとす二人であったが、その惨劇の跡は、二人にも只ならぬ事態の予感をさせる。その真実をこの目で見るため、二人もまた聖帝十字稜へと急ぐ・・・

 北斗の男達に続き、残るレジスタンス部隊もまた動き出そうとしていた。光信号や手旗信号を使い、静かに集結したレジスタンス達は、ヒロ指揮のもと、総力をあげてシュウを救わんと決起する。だが、慎重だったはずの彼等の行動も、サウザーの読みを外すことはできなかった。既に彼等の行く手には、ザク率いる武装した聖帝のバイク部隊が待ちうけていたのである。不意を突かれ、劣勢に追い込まれるレジスタンス達。ヘッドに幾つもの長刃をつけた特殊バイクの前に、次々と切り裂かれてゆく。だがその状況は、二人の男の登場によって一変した。トキ、そしてラオウ。この戦地のど真ん中に、突如二人の北斗が現れたのである。ケンシロウの最後を見届けるため・・・。トキに、自らが動いた理由を問われたラオウはそう答えた。サウザーの謎を解いていないケンシロウに勝機は無いと確信していたのだ。しかし、そのラオウの確信を崩す鍵は、トキが握っていた。サウザーの体の謎の正体。トキは、ケンに勝利をもたらせるその秘密を知っていたのである。愚かにも立ち向かってきた聖帝部隊を造作もなく蹴散らした二人は、それぞれ違う目的の中、聖帝十字陵へと歩を進めるのだった。

 あと一段。長かった聖帝十字陵の階段も終わりに近付き、同時にシュウの体力ももはや限界に近付きつつあった。しかし、この闇を吹き飛ばす大きな光もまた、直ぐ側にまで迫ってきていた。目の見えぬシュウだからこそ感じられた、ある一つの光の接近。その到来を告げたのは、一人の聖帝正規兵であった。砂埃をあげ、不自然に地を滑ってきたその男は、既に死んでいた。復活の北斗神拳。シュウの、そしてサウザーの読みどおり、再びケンシロウが彼等の前に姿を現したのであった。

 ケンの行く手を阻まんと、一斉に襲いかかる聖帝正規軍。しかし、逆にその彼等の行く手を阻んだのは、天から降ってきた巨大な石柱であった。世紀末覇者拳王。そしてトキ。ケンとサウザーの宿命の対決を見届けに、そしてその対決を邪魔する者を排除しに、二人もまたこの地へとたどり着いたのだ。だが、この最強の北斗三兄弟を前にしても、サウザーから余裕が消えることは無かった。自らの体に秘められた謎がある限り、北斗神拳に対するサウザーの自信は揺らぐことはなかったのだ。

 シュウを助けんがため、聖帝十字陵へ駆け上ろうとするケンシロウ。十字稜の完成を汚させまいと人質を使ってそれを止めるサウザーであったが、もう一人、その歩を止めようとする男がいた。それはシュウその人だった。シュウは人質達100人の命のほかに、聖碑を積むことで罪を償おうとしていた。南斗六星拳の崩壊。その六星の乱を止められなかったことに対してまで、シュウは自責を感じていたのである。だが、そんなシュウの思いすら愚かと一笑するサウザーは、更にその愚か者にふさわしい死を用意していた。頂上へと到達したシュウに、正規兵達は、その頂上に繋ぎとめておくための鎖輪をはめた。積むだけでなく、南斗の血が漆喰となってこそ、十字稜はより堅固なものとなる。聖碑を抱えたまま死ね。それがサウザーの用意した、仁星の最後だったのだ。いずれ聖帝十字稜は、北斗神拳伝承者の手によって崩れ去る。南斗は天帝の星として輝かず!ケンシロウの勝利を予言するその言葉が、シュウの最後の抵抗であった。聖帝正規兵の放った無数の矢がシュウの体を捕えた瞬間、一つの歴史が終わろうとしていた。

 シュウの魂の叫び。自らを再び此処へ呼び戻してくれたその声に応えるため、ただ夢中に階段を駆け上がってゆくケン。しかし、サウザーが放った槍は、無情にもケンの背を追い抜き、シュウの体へと突き刺さった。あまりにも無慈悲なその一撃に声を失う一同。だが、皮肉にもその一撃が、シュウの望みを一つだけ叶える結果となった。槍に貫かれた衝撃が、奇跡的にシュウの視力を回復させたのである。自らの瞳に映る、ケンシロウの成長した姿。どこか息子シバの面影漂うその姿に、シュウは感激の涙を流した。己の目を潰してまで守った男が、ここまで強い光を持つ人間になってくれたことが何よりも嬉しかったのだ。ゆけ!ケンシロウ。そして時代を開け!!私はいつでもお前を見ているぞ。レイと同じく、最後にこの世の平安をケンの拳に託し、シュウは静かにその宿命の幕を下ろした。ゆっくりと崩れ落ちたシュウの体を覆い隠すかのように、聖碑はその十字稜の頂きに積み落とされたのであった。

 ラオウをもってしても見事と言わしめた、シュウの凄絶すぎる死。そのあまりにも深い哀しみに涙の咆哮をあげるケンであったが、直ぐにその哀しみは怒りへと変わった。魂を支配するその怒りは力へと変わり、そしてケンの中に生き続けるシュウが、更にケンを強くする。シュウの死に応えるため、そして時代を変えるため、ケンはサウザーの完全殲滅を誓うのであった。

放映日:86年3月6日


[漫画版との違い]
・リンとバットが十字稜へ向かうシーン追加
・聖帝バイク部隊がレジスタンスの残存部隊を襲い、その後ラオウ、トキに壊滅させられるイベント追加

・トキとラオウが出会うのが、ラオウの城でなく、聖帝部隊とレジスタンスの合戦場所に変更
・原作のトキの十字稜出現は、ラオウと同じ建物の上だったが、アニメでは普通に歩いてきた


・タイトル「走れケンシロウ!」
いやマジで走れ。歩いてんじゃねえ!
・まぎらわしいな
この回のEDのクレジットに「ザク:広瀬正志」というのがあるんです。で、サウザー編って丁度ザク様が初登場する所でしょ?ケンシロウがサウザーのもとへ向かいました、っていう役目で。でも原作ではまだザク様の名は出てきてない。だから普通の人ではあれがザク様だっていうのはまず気がつかないはず。なのにアニメスタッフはちゃーんとあのナイスミドルがザク様であると判断して、こんなところで名前を出してきてくれた。すげーぜ!って思ったんですよ。でもね、よく考えてみるとこの回(66話)にはザク様出てきてないんですよね。65話と62話なんですよ、登場してるの。あれ〜おかしいな〜と思って、いろいろ調べてみた結果、なんのこたぁない。拳王様とトキに全滅させられた聖帝舞台の隊長の名前がザクだったっておはなし。紛らわしいんじゃボケェー!!ていうか何気に北斗にザクって名前多すぎ。流石量産型。
・強すぎ
でそのザク(偽)が率いる聖帝部隊なんですが、これかなり強いと思う。バイクの横腹に装着された長尺の刃、あれはかなり恐ろしい。バイクが横通り抜けただけで普通の人は即死やからね。そしてそれが100や200でないときた。だが!それを全滅させたのはトキでも拳王様でもない、黒王号だった。ただターフを駆け抜けるかのように直進しただけで全滅したのだ。しかも無傷で。いくら黒王が強いとはいっても、あの刃(バイク一台に突き4枚)を全てかわしていたわけではなかろう。人間を即死させる一撃をその脚にいくらうけても黒王は無傷だったということになる。これは怒り状態のケンシロウの肉体に匹敵すると言えよう。まさに赤カブトすら超える、漫画界最強の動物である。ていうか地球の生き物ですか?アンタ。


第65話へ≪ ≫第67話へ