
地下水路の奥から響く、聖帝正規兵達の叫び声。水路の出口を固める正規兵達は、その声の真相を探るべく一人の男を送り込むが、数秒後、男はトンネルの天井を突き破り、遺体となって帰ってきた。彼らを葬ったバケモノの正体、それはケンシロウであった。サウザーにやられた傷などまるで意に介さずにその歩を進めるケン。ケンの体を突き動かすもの、それはシュウの魂の叫びであった。そして、その宿命に突き動かされるケンを、取り囲む正規兵達はただ足をすくませ、見ていることしか出来なかった。唯一そのケンの前に立ちはだかった大男は、頭突きで岩を割るデモンストレーションを見せるも、自慢の頭を裏拳一発でヘコまされ撃沈。ケンの剛拳は既に復活していた。しかし、仁星に揺さぶり起こされたその体は、更に信じられない奇跡を引き起こした。極星十字拳によってつけられた胸の傷を、ケンは気合だけでふさいでしまったのである。もはや理の限界を超えたその男に立ち向かおうと考えるものなど、ただの一人もいなかった。
岩山に囲まれたラオウの城。石を握りつぶすことで傷の回復度合いを計り、再び動き出すその日を待つラオウであったが、その時は意外に早く訪れた。部下が持ってきたのは、再びケンシロウがサウザーの元へ向かったとの報であった。死に急ぐケンに、その命運が尽きた事を予感するラオウ。そしてそのラオウが取った行動とは・・・
巨大な聖碑をその背に支え、長い階段の一歩を踏み出すシュウ。だが腱を切られたその足では、聖碑を持ち続けることすら困難な状況であった。しかし、それでもシュウは聖碑を落とすことはできなかった。聖碑を地に落とせば人質の命はない。サウザーの無慈悲な指令が、シュウを追い込んでいた。何度もその身をグラつかせながらも、必死で聖碑を支え続けるシュウ。その身を奮い立たせる度に、足の傷口はますます開いていく。だがその時、あまりにも残酷なそのシュウの姿が、一人の男を突き動かした。男の名はリゾ。今でこそ聖帝正規兵の一人だが、かつてはシュウと共に南斗聖拳を学んだ同門の男であった。シュウに駆け寄ったリゾは、せめてシュウの傷に包帯を巻かせてくれとサウザーに懇願。しかし、その見返りにサウザー要求してきたのは、リゾとその家族全員の命であった。無力な己に膝をつき、涙を流すリゾ。だが、シュウはそれで満足だった。リゾ、そして此処に居る全員の心が動いただけでシュウは嬉しかったのだ。今ではない。心一つ一つが大きな束となったとき、その心がこの世に再び光をもたらすであろう。そのシュウの言葉は、人々の心を大きく変えた。彼等の瞳は、シュウの死を哀しむ眼から、その死を糧に強く生きようとする眼に変わっていた。
行く手を塞ぐ聖帝部隊を撃退しながら、シュウの元へ急ぐケン。そして、他の北斗の男たちもまたシュウのもとへ集まろうとしていた。ケンを呼びに走るレジスタンスの残党。彼らが聖帝部隊に囲まれた時、静かに荒野の向こうから姿を現したのはトキであった。奴は病人。一斉に掛かれば勝てる。その誤った戦力判断を後悔する暇もなく、彼らは華麗なトキの北斗有情断迅拳の前に全滅したのだった。時を同じくして、陣形を組んでケンを待ち伏せしていた聖帝部隊の所に現れたのは、拳王・ラオウであった。最強の男を前に慌てるものの、何とか陣形を組みなおし、拳王に立ち向かおうとする聖帝部隊。しかしどう頑張ろうとも、彼等の力ではラオウの傷の回復を計る稽古台すら務まらなかった。死体の山と化した荒野に背を向け、黒王号を走らせるラオウ。数刻遅れでその地へとやってきたのはケンシロウであった。仁星の涙が北斗を呼ぶ。自らと同じ北斗神拳によって築かれた死体の山を見て、ケンもまた北斗の星が集まろうとしていることを知るのだった。| [漫画版との違い] ・トキがマミヤに別れを告げてケンのところへ向かうシーン追加 ・トキは拳王のところへ訪れず、一人でケンシロウのところへ向かう。ラオウも然り。 ・行く手を遮る聖帝正規兵とケンシロウとのバトル追加 ・ケンを待ち伏せる聖帝部隊と、ラオウとのバトル追加 ・レジスタンスが聖帝部隊に囲まれたときに現れたのは、アニメではトキ一人。 |
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