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[第64話]
血戦シュウVSサウザー!
仁星の涙に愛がおぼれる!!


 砂漠で力尽き、気を失うケンシロウ。そこへ現れたのは、馬に跨った二人の男であった。彼等の甲に刻まれたマーク。それはあの拳王軍の印であった。ケンシロウと敵対しているはずの彼らがとった行動とは・・・

 目覚めたケンが目にしたのは、自らを見守るリンとバットの顔であった。いつの間にかケンは、シュウのアジトへと運ばれていたのだ。だが、アジトの側までケンを運んだ者、そしてその体に見事な手当てを施した者の素性は、誰にも解らなかった。

 その頃、先程の拳王軍の二人は、ケンシロウ救出の旨をラオウに報告していた。やはり瀕死をケンを救ったのは、この拳王軍の者達であった。しかもその命令は、ラオウ自身が出したものだったのだ。ラオウがケンシロウを生かす理由、それは自らの敵であるサウザーの謎を解いてもらう事であった。

 リンとバットに支えられるようにして、ケンはシュウの元へとやってきた。自らの所為でシバを失ってしまったことに対し、詫びの言葉すら見つけられないケン。しかし、シュウにとってシバの死は、仁星に生きる自分達がその宿命に殉じた証に他ならなかった。哀しみをこらえ、ただ息子の死を誇るそのシュウの姿に、深い自責を覚えるケン。そのシバの死に報いる方法、それは再びサウザーに挑み、倒すより道は無かった。

 レジスタンス部隊のとある支部。そこへ現れたのは、棺を抱えた4人の男であった。基地のシュウ様から食料が届いた。そう言って見張りを通過した男たちは、堂々とアジトの中へと侵入。久々の食糧に歓喜するレジスタンス達。しかし、その笑い声は直ぐに悲鳴へと変わった。食糧が入っているはずの棺から、武装した聖帝正規兵が現れたのである。無論、その棺を運んできた4人も聖帝配下の者達であった。完全に不意を突かれたレジスタンス達は、聖帝部隊のバルカン式ボウガンの前に為す術無く全滅。彼等聖帝先遣隊の作戦は、大成功に終わったのだった。

 先遣隊の作戦成功を告げる黒煙。それが、サウザーのレジスタンス壊滅作戦開始を知らせる狼煙となった。落とした支部の奴等を締め上げて本部の基地の場所をつきとめ、そのまま本隊ごと攻め入る作戦を計画していたのである。だがその作戦をより強固にするため、サウザーは近くの村から女子供100人を人質に取っておくよう命じた。更にその100人以外を皆殺しにすることで、自らの情け無用の支配を人々に知らしめようと考えたのである。降伏すら許さぬそのサウザーの非情ぶりは、聖帝正規兵達にまでも戦慄を走らせるのであった。

 ケンの介護に当たっていたシュウの元へ、遂に聖帝の部隊に嗅ぎ付けられたとの報が入ってきた。迫り来る危機を前に、ケンを起こそうとするリン。しかし、ケンは起きなかった。この体で戦うことは無理だと判断したシュウは、事前に強力な眠り薬をケンに飲ませていたのだ。そのシュウがケンに用意していた道、それは逃亡という選択であった。アジトの下に眠る地下水道を使い、リンとバットにケンを連れて逃げてもらおうと考えていたのである。一目成長したお前の姿を見たかった。例え死すとも我等親子は南斗の星となってお前を見ているぞ。ケンの最後の別れを告げ、死地へ赴こうとするシュウ。そんなシュウに、必ず生きて帰ってくることを約束させるリンだったが、シュウの腹の中は決まっていた。ケンの拳にかけられた、シュウ、シバ、そして不幸な時代を生きる子供達の悲願。そのためになら、シュウの仁の星はいつでも命を捨てる覚悟でいたのだった。

 アジトの入り口で最後の抵抗を続けるレジスタンス達。だが、あらかじめ用意された100人の人質が、彼らに残された最後の反抗をも封じようとしていた。その人質がハッタリでない事を知らしめるため、何人かを殺してみせるよう命じる聖帝部隊の指揮官。命じられた男が目をつけたのは、双子の兄妹であった。そのどちらかを差し出せ。二人の母親に、選べるはずも無い無慈悲な注文を出す聖帝正規兵。選べないなら両方殺してしまおう。そう言って子供達を握りつぶそうとする男であったが、次の瞬間、男の体はど真ん中から真っ二つに切り裂かれた。レジスタンスの長、シュウが、遂にその姿を現したのである。たとえ貴様を倒せなくとも阿修羅となって戦おう。レジスタンスの期待を一心に背負い、死を覚悟したシュウの最後の戦いが始まった。

 聖帝部隊は、まず音でシュウの耳を奪う作戦に出た。短い鎖の先に刃をまとった筒をつけた武器。シュウを取り囲む何人もの男がそれを振り回すことで、風を切る雑音を生み出し、シュウが便りとしている聴覚を奪うという作戦を仕掛けてきたのだ。しかし、彼らは勘違いをしていた。シュウは、目でも耳でもなく、心で相手の動きを捉えていた。放たれたその武器を難なく跳躍で交わしたシュウは、そのまま南斗烈脚斬陣で男達を一掃。続く巨大な刃の攻撃も同様に交し、その剣を支える3人の男達を葬ったシュウは、一気にカタをつけんとサウザーに飛び掛る。だが、シュウの突きが捕えたのは、サウザーの背後の玉座であった。腕を捕まれ、万事休すのシュウ。やはり駄目なのか。そう思われたとき、サウザーは突如シュウの手を解放し、再び己の顔目掛け突き入れるよう指示してきた。先程捕えた100人の人質。彼らを引き合いに出せばシュウが何も出来なくなることを、サウザーは知っていたのだ。自らの命を省みず、サウザーを倒すよう呼びかける人質達。だが哀しきシュウの仁星は、やはり彼等の命を犠牲にすることなどできなかった。サウザーに突きつけていた右手をシュウが虚しく宙へ突き上げた瞬間、レジスタンス達の戦いは、事実上幕を降ろしたのであった。

 シュウの足の健を切ることで白鷺拳を封じ、勝利を決定付けたサウザーであったが、彼の非情さはシュウの思惑を超えていた。貴様が救ったのは人質100人の命のみ。全員を助けるといった覚えは無い。そう言ってサウザーは、残るレジスタンス部隊をも全滅させる指示を出してきたのだ。自ら敗北と引き換えに人々を救ったシュウのその思いでさえ、サウザーの情を動かすことはできなかったのである。激しい無念を背負ったまま、処刑場へと引きずられていくシュウ。その無念を晴らせる唯一の男・ケンに向け、シュウの魂の叫びがこだまする・・・

 リーダー・シュウの敗北を期に、一気にアジト内へと雪崩込んでいく聖帝部隊。その手は、ケンが流されていった地下水路にまで及んできた。息子達をケンに追いつかせて逃がそうとしていた一人の男を一撃の下に殺した聖帝部隊は、一人も逃がすまいと更に奥へ向かおうとする。だが、その一人が残された子供達を殺そうとした時、異変は起こった。突如男の肩に乗ってきたのは、先程まで一緒にいた男の生首であった。信じられぬ出来事に驚く暇もなく、続けてその男も爆死。異常事態に気がついた正規兵達は次々と奥へ向かおうとするが、彼らもまた一様にその体を肉片へと変えていった。彼らを事も無げに葬っていく一人の男。足元をふらつかせながら水路を逆登ってきたその男は、まだ満身創痍のはずのケンシロウであった。

放映日:86年2月20日


[漫画版との違い]
・ケンシロウを助けたのが拳王から拳王軍兵士2名に。故にケンの倒れていた場所に黒王号の足跡などもなし
・ケンを助けた拳王軍兵士がラオウにその報告をするシーン追加
・聖帝先遣隊の入った棺を運んできた4人までもがレジスタンスを倒していくシーン追加



・かしこい聖帝
サウザーがあらかじめ捉えておいた女子供100人。あれはなかなか凄い作戦だ。あのシュウがサウザーを突けなかったシーン。あんな大チャンスなのにわざと空振り三振したシュウもどうかと思うが、それよりも人質達である。彼女達はどうしてもシュウにサウザーを倒して欲しければ、牙大王んときのアイリとかマミヤみたいに自決すればよかったのだ。しかし、出来なかった。それは、自分達だけでなく、子供も一緒に捕らえられていたからであろう。自分ひとりだけなら自決も出来ようが、自分の子供を目の前にしてはなかなかそうはいかないのだ。「女100人」でなく「女子供100人」にしたところがサウザーの凄さである。
・警備ゆりぃ
レジスタンス「誰だ!」
先遣隊「基地のシュウ様から食料が届いた。暫く此処にとどまり、村を守るようにとの命令だ」

レジスタンス「おお、そうか!御苦労、入ってくれ」
こんなやりとりで素直に通しちまうなよ・・・せめて合言葉でも決めとけよ
・陣形・・・?
ラオウ様に果敢に挑む聖帝部隊!慌てず騒がず「陣形を崩すな!」のお声に拳王様も御感心です。でもね、拳王様のパンチ食らってそのままドミノ倒しになる陣形ってどうなんよ


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