
北斗神拳が通じない。その理解不能の現実を払拭するかのように、再びサウザーの体に連撃を浴びせるケンシロウ。だがいくら突けどもサウザーが砕け散ることはなかった。拳の速さ。寸分狂わぬ秘孔への突き。拳の勝負では明らかにケンシロウの勝ちだった。だが勝利を勝ち得たのは、サウザーの持つ帝王の体であった。極星十字拳に為す術無く切り刻まれ、地に伏すケン。敗者となった北斗神拳伝承者を踏みつけるサウザーの高笑いは、この世に光を取り戻す希望が消え去ったことを告げているかのようであった。
夜になってもシュウにはケンを助け出す策が思いつかなかった。そんな時、自ら十字稜へ潜入し、ケンを助けださんと名乗り出た者がいた。シュウの息子、シバである。シバはかつて十字稜にもぐりこんだ経歴があった。そして、自ら見たケンの強さ、優しさ。そしてリンをあそこまで信じさせるケンの持つ何か。もはやシバの中で、ケンは自らの命を賭してでも救い出さねばならない存在となっていたのである。シュウは、南斗白鷺拳の伝承者であるにもかかわらず、シバに拳を継がせようとはしなかった。それは、シバにまで仁の星の宿命を背負わせたくなかったからであった。だが、仁の星の血は、シバの体の中にも脈々と受け継がれていたのだった。
そして、今のケンにはもはやその牢から脱出する力すら残されていなかった。薄れ行く意識の中でケンが巡らせるのは、あのサウザーの肉体の謎だけであった。
目論見通り追っ手達が取り囲んだのを確認した後、シバは静かに火のついたダイナマイトを取り出した。怯える正規軍の顔とは対照的に、シバの顔は笑みが浮かんでいた。そして次の瞬間、シバの体は轟音と共に荒野の風に消えたのであった。| [漫画版との違い] ・原作では人中極が通じなかった後は3度点穴を突いただけだが、アニメではアタタタを2度も繰り出す ・ケン敗北の報がシュウ達へと伝えられ、リン達がショックをうけたり、シバがケン救出を決意するシーン追加。 ・原作の地下牢は床が水だが、アニメでは普通の床 ・ケンを連れたシバが、旧時代の下水道を通って聖帝十字陵から逃亡するシーン追加。 ・自らを運ぶシバに、ケンが「俺は奴に負けた」とか情けない発言をするシーン追加 |
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