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[第62話]
俺は聖帝サウザー!
愛も情も許さない!!


 夜。アジトに集まったケン達に、シュウはサウザーの事について語りだした。南斗六星の崩壊を生んだユダ。そのユダを裏で動かしたのが、サウザーであった。サウザーの持つ星は、極星南十字星、又の名を将星。肉親も友も情けも無い、生まれついての帝王の星。将星の衛星に過ぎない他の五星では、サウザーを倒すことは出来ない。シュウ達に出来ることは、反旗を翻し、レジスタンスとして戦うことだけだったのだ。そんな話の中、一人の少年がシュウに出戻り報告をしにやってきた。彼の名はシバ。シュウの一人息子であった。シバは、バットよりも若いその年で少年兵として戦っている、勇敢な戦士の一人であった。

 広間へとやってきたシュウ達に、かくまわれている子供の一人、リョウが食糧を運んできた。しかし、シュウはそれを断った。心を読むことができるシュウは、リョウ達が何も食べていないことを見抜いていたのだ。シュウの優しき心遣いに感謝し、早速その食料にありつく子供達。レジスタンス達の食糧問題は、日増しに深刻化していた。しかしその時、思わぬ吉報がシュウたちのもとへ飛び込んできた。リョウの父が属するレジスタンスの第三部隊が、大量の食糧を持って帰ってきたのである。彼等の襲った聖帝の小隊が、偶然にも食糧運搬車だったのだ。早速その食糧を手にとり、口へと運ぼうとする人々。だがその食糧を一口食べたシュウは、突如全員に食糧を捨てるよう呼びかけた。食べ物の中には毒が入っていた。全ては聖帝部隊の罠だったのである。しぶしぶ手にとった食料を捨ててゆく子供達であったが、ただ一人、リョウだけは既にその食糧を喉に通らせてしまっていた。吐き出せとの父親の呼びかけも虚しく、みるみるうちに顔色を変え、吐血するリョウ。痙攣するその手が力を失い、誰もがリョウの死を確信したその時、ケンの指先が再び奇跡を起こした。脇の下にある秘孔を突かれ、リョウは再び意識を取り戻したのだ。ただ強いだけではなく、人を救える力を持つケン。彼こそが聖帝を倒しうる人物であることを、この時シバも悟ったのだった。

 サウザーに拐われ、殺された子供達。その子らの墓を前にしたシュウの目には、大粒の涙が流れていた。サウザーが暴虐を続ける限り、光を失ったシュウの目にも涙は流れ続ける。そのシュウの、そして子を奪われた全ての者達の涙を背負い、ケンは遂に聖帝のもとへと赴くことを決めた。

 聖帝が行進する道路の脇で土下座させられる村人達。行進の先頭を行く聖帝正規兵は、勝手な動きをした者を火炎放射器で焼き殺すという非道なやり方で人々を平伏させてゆく。しかし気がついたときには、その放射口は自分の顔へと向けられていた。何時の間にか火炎放射器を奪い、男へ向けて構えていたその男は、ケンシロウであった。おまえが一番邪魔なんだよ。そう言って男を火達磨にし、遂に聖帝サウザーの前へと立つケン。だがそのケンシロウの登場に対し、サウザーは眉一つ動かすことは無かった。それは、まるでケンが己の行進を止めに来ることを予知していたかのようであった。

 サウザーの合図で飛び出して来たのは、ベジとキジという名の二人であった。挨拶代わりの投剣はなんとか皮一枚で交わしたケンであったが、彼らは並の戦士ではなかった。二人は、南斗聖拳の一派、南斗双斬拳の使い手だったのである。ケンシロウを中心に対極に位置取った二人は、双斬拳の極意である正確無比な投剣を開始。ベジが投げてはキジが受け、そして再びキジへと返す。エンドレスに続けられる攻撃に挟まれ、ケンは動くことすら出来ない。そして次第にその投剣は、ケンの体にかするようになっていった。彼らは少しずつケンとの距離を詰め、投剣の速度を上げると共に、間合いの中へと入ってきていたのである。トドメとばかりに両手の剣を振り下ろすキジとベジ。しかしケンの拳が一瞬早いと見るや、二人は華麗な跳躍で再び先程の位置へ。だが、再び投剣を開始しようとした二人に対し、ケンは突如二人に投剣を止めるよう忠告してきた。聞く耳もたぬまま二人は投剣を開始するが、ケンの言葉の意味は直ぐに明らかになった。あれほど正確なパスを行っていた二人が、相方の投げる投剣をキャッチことが出来なくなっていたのだ。秘孔児鳩胸。ケンは先程の一瞬で、遠近感を失わせるその秘孔を二人に突いていたのだ。自らの技におぼれさせ、二人を自滅させたケン。その闘い方に、ケンの凄まじい成長を見るサウザーであったが、彼の顔から余裕の笑みが消えることは無かった。

 岩壁に囲まれた巨大な城。そこで傷の療養にあたっていたラオウに、ある報がもたらされた。ケンシロウがサウザーに戦いを・・・。その部下の報告に、ラオウは怒りとも焦りとも取れる表情を浮かべた。今のケンシロウではサウザーには勝てない。ラオウにそう確信させるある謎が、サウザーには隠されていた・・・

 南斗最強の拳、南斗鳳凰拳。そして自らの体に流れる帝王の血。その二つが、サウザーの揺ぎ無い自信を積み上げていた。そして、その帝王としての自信は、サウザーに構えを取らせようとはしなかった。構えとは防御の型。制圧全身あるのみのサウザーの帝王の拳に、防御という言葉は無かったのだ。その異様さに押され、まず見にまわったケンシロウであったが、サウザーの制圧の拳はもはや止まらなかった。信じられぬ踏み込みの速さでケンの間合いへと入るサウザー。矢つぎはぎに繰り出されるサウザーの極星十字拳を、なんとか胸のかすり傷一つでしのいだものの、もはやサウザーの攻勢は誰の目にも明らかであった。貴様の動きなど止まって見えるわ!自信に満ちたサウザーの笑い声が飛ぶ。だがしかし、ただ一人ケンだけは、自らの勝利を確信していた。ケンの闘いのセンスは、今の一瞬でサウザーの動きを全て見切ってしまっていた。

 自らの主、ラオウと互角に戦い、深手を負わせたケンシロウ。拳王の部下達は、そのケンシロウがサウザーに勝てない理由が見つからなかった。しかし、その理由を見つけられないのはラオウとて同じことであった。ケンシロウは一度相手の拳を見れば、その拳を見切れる能力を持っている。力では間違いなくサウザーには勝っている。だが、ある謎を解かぬ限り、ケンの勝利はありえなかった。その謎こそ、ラオウがサウザーとの戦いを決しなかった理由なのであった。

 ケンの見切り宣言を戯言と受け止め、再び素早い踏み込みからの極星十字拳を仕掛けるサウザー。その踏み込みに対してケンが出した攻略法は、自らも前に出て、タイミングを狂わせることであった。自らの呼吸で飛び込んだケンにとって、もはやサウザーの拳を交わすことは造作もなかった。下方から首を押し上げられ、体勢を崩したサウザーに、ケンの拳が炸裂する。Z、大佐、シン・・・数々の敵を葬ってきたケンの連撃が、今もまた、サウザーの体にある秘孔を突いてゆく。秘孔人中極。秘孔の中で最も破壊力をもつ必殺の秘孔を突かれたサウザーの命は、残り3秒となった。だが、死を宣告されたはずのサウザーの顔には、笑みが浮かんでいた。まるで楽しむかのように、自らの命のカウントダウンを行うサウザー。しかし、3つ数え終わったその時、体から血を吹いたのはケンシロウの方であった。秘孔が通じないサウザーの帝王の体。それが、ラオウをも退けたサウザーの謎であった。

放映日:86年2月26日


[漫画版との違い]
・アジトでケン達がシバと顔を合わせ、一緒に食事を取るシーン追加
・原作では間に合わなかった解毒の秘孔がアニメでは間に合い、リョウが息を取り戻す。
・原作ではシュウは死んだリョウに涙を流すが、アニメでは殺された子供達の墓を前に涙を流す
・サウザーを悪の帝王と罵った村人が、火炎放射器で焼かれるシーン追加
・アニメではベジとキジの南斗双斬拳に、多少苦戦し、傷を受ける
・原作では児鳩胸を突かれた後、すぐに自滅するが、アニメでは多少ハイハイ続けた後、少しずつ体に剣を刺していく


・南十字星
シュウはサウザーの星を南十字星だと言っているが、これがよくわからない。南十字星ってのはサザンクロスと呼ばれ、それはシンが作った町の名だ。サウザーの星の名をシンが使うのはおかしい。それに南十字星とは4つの星で構成された星座、南十字座のことであり、聖闘士☆星矢ではない作品ゆえ、宿星が正座と言うのはおかしい。
おそらく実際は後々オウガイが口にしてる
「南斗十字星」というのが正解だろう。南斗六星のうちのどれかを、そう呼んでいるという事なのだと思われる。一個の星で十字ってのも変な話ではあるが。
ていうか、きっとセンセ方があんまり南十字星と南斗六星の区別がついてなかったんじゃないかなあと思う・・・


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