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[第61話]
戦場の恋!
時代は愛をも引き裂くのか!!


 シュウ達レジスタンスのアジトは洞窟の中に作られていた。その中で、かくまわれながら生活する女や子供達。彼等の存在が、シュウが闘う理由の全てであった。そのアジト内でバットが気がついたのは、電気による光。シュウ達は、未来ある文化を育てるためにも、サウザーから子供達を取り返そうと闘っていたのである。しかし、戦況は厳しかった。食糧もほぼ底をつきかけ、ケン達をもてなす食事もロクに出せないほどであった。あまりの食べ物の少なさに落ち込むバット。そんなバットに、景気よく干し肉を差し出した男が居た。名はジェイ。彼もまた、婚約者アミの弟をサウザーに捕らわれ、聖帝軍と戦うレジスタンスの一人であった。パトロールの分は残してある。それに帰りには、アミの居るスワニーの村に寄ってご馳走してもらうから大丈夫。そう言ってジェイの仲間達も次々と食糧を差し出し、パトロールへと出かけてしまった。こんな時代で無ければ、いずれも名を残すであろう技術者達ばかりである彼らまでをも戦場へと駆り立ててしまう哀しき時代。そして、そんな時代を築き上げんとしているサウザーに、シュウの怒りが募るばかりであった。

 その頃、また一人のならず者ガ、聖帝正規軍への入隊を果たすため、拐った子供を聖帝部隊の元へと運んできていた。聖帝部隊のリーダーであるガルザスは、幼い子供二人だけでは二等兵だとの判定を下すが、その男は切り札をもっていた。彼は、レジスタンスが隠れ里として使っている村の場所を知っていたのだ。警護が堅くて自分ひとりではどうにも出来ないが、聖帝部隊の力を持ってすれば侵攻は容易。そして中には子供がワンサカ。突如舞い込んだ情報に心躍らせるガルザスは、早速その村へ向けての出撃を指示する。だが次の瞬間、雨のような矢の攻撃が彼らを襲った。ジェイ達レジスタンスのパトロール部隊が、子供達を救いに来たのである。なんとかジープで逃走した数人も、レジスタンス達のボウガン攻撃にて次々と撃沈。残ったガルザスのジープも、ジェイのバイクから発射された小型ミサイルによって大破してしまった。完全に追い詰められ、ジェイ達五人に土下座するガルザスと、先ほどの入隊希望の男。ジェイ達はさっさと殺してしまおうとするが、突如ガルザスは涙を流し、命乞いをしてきた。「俺も妹をサウザーに捕らわれ、仕方なくこんなことをしているんだ。お前達ならわかるだろう?」。半信半疑ながらも、そのガルザスの言葉に戸惑うジェイたち。しかし、それが彼らに一瞬の隙を作らせてしまった。一気に懐へと飛び込んだガルザスは、コッソリ抜いていたナイフでジェイを一突き。一瞬の出来事にあっけにとられていた他の四人も、ガルザスの速攻に為す統べなく殺られてしまった。俺は生まれたときから一人っ子よ!地に伏したジェイ達に向かい、ガルザスの高笑いが飛ぶ。だが瀕死のジェイが聞いたのは、彼等の企てる更なる悪夢であった。ガルザス達が狙う、レジスタンスの隠れ里。それは、ジェイの婚約者アミが住む、スワニーの村であった。

 レジスタンスの運転するジープに乗り、辺り一帯の領土の説明を受けるケン。その行く手で見かけた黒煙の下には、ガルザスにやられたジェイの姿があった。スワニーの村を守ってくれ。そのジェイの遺言と共に、ケンはあるものを受け取った。それは、竹で作られたフィラメントであった。アミの弟を聖帝から取り返したら、ジェイはアミと結婚するつもりであった。しかしその夢が絶たれた今、ジェイは聖帝打破の夢をケンに託したのである。ジェイの形見となったフィラメントを握り締め、ケンはスワニーへと向かう・・・

 高い山に囲まれた地、スワニーの村。アミは、村の風車小屋の中で、フィラメントの無い電球を磨きながら、ジェイが来るのを待っていた。ジェイと共に風車で電気をともす時を夢見て、風車の整備に来ていたのである。だが、村の少女と共に散歩に出かけた彼女には、悪の手が迫っていた。村の湖の中から、二人の前へと姿を現したのは、ガルザス達であった。アミ達を捕えたガルザス部隊は、早速村の侵攻を開始。若者が全てレジスタンスに加わってしまったスワニーの警備体制はもろく、あっという間に村は聖帝軍の手に落ちてしまった。村人達を殺し、女子供を捕え、食糧を奪い、やりたい放題の聖帝部隊。だが、彼らの束の間の悦楽に終わりを告げたのは、怒れるケンシロウの拳であった。ケンの修羅の如き強さに恐れをなし、次々とガルザスもとへと逃亡する兵士達。一人逃げ送れた、あの昼間入隊を果たしたばかりの男を捕まえたケンは、男にガルザスのもとへと案内させるが・・・

 子供達をかばうアミを、我が物にせんとその手を伸ばすガルザス。だがその時、先程ケンにやられた兵達が駆けつけてきた。恐ろしい拳を使う男が!そう言い残し、兵達は次々とその身を肉片へと変えていった。その死に様から、相手が北斗神拳であることを悟るガルザス。しかしガルザスは村から立ち去ろうとはしなかった。自らが得意とする頭脳戦で、大金星を狙おうと企むガルザスだが・・・

 子供の泣き声を辿ってケンが出たのは、村のはずれの湖であった。その中央に浮かぶいかだの上には、アミと少女を人質にとったガルザスの姿が。その光景を見て、喜び勇んで仲間達のところへ駆け寄ろうとする案内役の男。しかし、彼に待っていたのは水中から突き上げられた槍であった。湖に近付いたケンを水中の兵に殺させるという罠に、男は自爆してしまったのだ。罠が無駄に終わりイラつくガルザス。しかしケンには関係のないことであった。すべてを承知で水面に近づいたケンは、水中兵の放った槍を難なく掴み、撃退。そしていかだへと近付かんと湖の中へと潜っていくケン。だが、ここからがガルザスの作戦の本番であった。水中では北斗神拳は使えないだろうと考えたガルザスは、水中に多数の兵を待機させておいたのだ。作戦通り、水中でケンを迎え撃つ聖帝正規兵。それを、強烈なパンチが生み出す渦で撃退してゆくケン。そして数刻後、静まり返った水面から最初に顔をあげたのは、正規兵達であった。だが、次にガルザスが見たものは、激しく水しぶきをあげながら死んでゆく部下達の姿であった。

 愕然とするガルザスを水中へと引き込み、その間にアミ達のいかだへと登るケン。這い上がってきたガルザスは、アミ達をかばいながらでは闘えまいと、無謀にもケンに勝負を挑んできた。ジェイを殺したのは貴様か。そのケンの質問に、悪びれる様子もなくガルザスが答えた瞬間、ケンの怒りは限界に達した。無数の突きを打ち込まれた後、対岸までぶっ飛ばされるガルザス。止めをささんと近寄ってきたケンに、ガルザスは最後の手段である、必殺の嘘を繰り出した。俺には妹が・・・。その言葉を信じてか否か、ガルザスに背を向けるケン。すかさずナイフで襲い掛かろうとするガルザスだったが、既にその肉体は崩壊が始まっていた。横っ腹を破裂させ、倒れこむガルザス。自らの嘘がばれたことが不思議でならないガルザスに、ケンは言った。御前の顔に嘘と書いてある。その真意を確かめるために湖を覗き込んだガルザスは、醜く変形する己の顔を見ながら爆死したのだった。

 ジェイの死を現実として受け入れることができないアミ。そんなアミにケンが渡したのは、あのフィラメントであった。フィラメントの入れられた電球は、強く、暖かい光を放った。最後まで勇敢に戦ったジェイ。その死に報いるためにも、アミは消してその灯火を消さないことを誓うのであった。懐かしい風車のきしむ音が、結ばれなかった二人の為に哭いていた。

放映日:86年1月30日


[漫画版との違い]
・ケン達がアジト内へ案内される事以外全てアニメオリジナル


・アホ
聖帝との闘いを心待ちにしている視聴者にとっては肩透かしを喰らう回だが、なかなかよくできた感動的な話であると思う。ただやっぱりジェイの死に様があまりにもアホすぎるのが難点。ケンはアミに「ジェイは最後まで勇敢に戦った」と見てないことをテキトウに言ってるけど、あのやられ方を見てたらそうスンナリその台詞をいえたかなぁと思う。あと今回注目すべきはやっぱり電気。シュウが言うように、彼らの努力があってこそ光り輝く明るい未来がつくられるんだね。そして実際、ジェイやアミの頑張りは結果となってあらわれたね。眩く輝く中央帝都として・・・
・水中戦
もうひとつ見逃せないのが北斗界最初で最後の水中戦。ガルザスは水中では北斗神拳は使えまい!って言ってるけど、なんか逆に強くなってるよケンさん。パンチ一発で直線上に居る責は全員やられちゃってるからね。まあ水中でなら普通の拳法は型も糞もなくなるだろうから、実際着眼点はいいんだよね。でもナイフではリーチが短いから槍とかの方が良かったんじゃないかと思うよ。


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