
その頃、また一人のならず者ガ、聖帝正規軍への入隊を果たすため、拐った子供を聖帝部隊の元へと運んできていた。聖帝部隊のリーダーであるガルザスは、幼い子供二人だけでは二等兵だとの判定を下すが、その男は切り札をもっていた。彼は、レジスタンスが隠れ里として使っている村の場所を知っていたのだ。警護が堅くて自分ひとりではどうにも出来ないが、聖帝部隊の力を持ってすれば侵攻は容易。そして中には子供がワンサカ。突如舞い込んだ情報に心躍らせるガルザスは、早速その村へ向けての出撃を指示する。だが次の瞬間、雨のような矢の攻撃が彼らを襲った。ジェイ達レジスタンスのパトロール部隊が、子供達を救いに来たのである。なんとかジープで逃走した数人も、レジスタンス達のボウガン攻撃にて次々と撃沈。残ったガルザスのジープも、ジェイのバイクから発射された小型ミサイルによって大破してしまった。完全に追い詰められ、ジェイ達五人に土下座するガルザスと、先ほどの入隊希望の男。ジェイ達はさっさと殺してしまおうとするが、突如ガルザスは涙を流し、命乞いをしてきた。「俺も妹をサウザーに捕らわれ、仕方なくこんなことをしているんだ。お前達ならわかるだろう?」。半信半疑ながらも、そのガルザスの言葉に戸惑うジェイたち。しかし、それが彼らに一瞬の隙を作らせてしまった。一気に懐へと飛び込んだガルザスは、コッソリ抜いていたナイフでジェイを一突き。一瞬の出来事にあっけにとられていた他の四人も、ガルザスの速攻に為す統べなく殺られてしまった。俺は生まれたときから一人っ子よ!地に伏したジェイ達に向かい、ガルザスの高笑いが飛ぶ。だが瀕死のジェイが聞いたのは、彼等の企てる更なる悪夢であった。ガルザス達が狙う、レジスタンスの隠れ里。それは、ジェイの婚約者アミが住む、スワニーの村であった。
高い山に囲まれた地、スワニーの村。アミは、村の風車小屋の中で、フィラメントの無い電球を磨きながら、ジェイが来るのを待っていた。ジェイと共に風車で電気をともす時を夢見て、風車の整備に来ていたのである。だが、村の少女と共に散歩に出かけた彼女には、悪の手が迫っていた。村の湖の中から、二人の前へと姿を現したのは、ガルザス達であった。アミ達を捕えたガルザス部隊は、早速村の侵攻を開始。若者が全てレジスタンスに加わってしまったスワニーの警備体制はもろく、あっという間に村は聖帝軍の手に落ちてしまった。村人達を殺し、女子供を捕え、食糧を奪い、やりたい放題の聖帝部隊。だが、彼らの束の間の悦楽に終わりを告げたのは、怒れるケンシロウの拳であった。ケンの修羅の如き強さに恐れをなし、次々とガルザスもとへと逃亡する兵士達。一人逃げ送れた、あの昼間入隊を果たしたばかりの男を捕まえたケンは、男にガルザスのもとへと案内させるが・・・
子供の泣き声を辿ってケンが出たのは、村のはずれの湖であった。その中央に浮かぶいかだの上には、アミと少女を人質にとったガルザスの姿が。その光景を見て、喜び勇んで仲間達のところへ駆け寄ろうとする案内役の男。しかし、彼に待っていたのは水中から突き上げられた槍であった。湖に近付いたケンを水中の兵に殺させるという罠に、男は自爆してしまったのだ。罠が無駄に終わりイラつくガルザス。しかしケンには関係のないことであった。すべてを承知で水面に近づいたケンは、水中兵の放った槍を難なく掴み、撃退。そしていかだへと近付かんと湖の中へと潜っていくケン。だが、ここからがガルザスの作戦の本番であった。水中では北斗神拳は使えないだろうと考えたガルザスは、水中に多数の兵を待機させておいたのだ。作戦通り、水中でケンを迎え撃つ聖帝正規兵。それを、強烈なパンチが生み出す渦で撃退してゆくケン。そして数刻後、静まり返った水面から最初に顔をあげたのは、正規兵達であった。だが、次にガルザスが見たものは、激しく水しぶきをあげながら死んでゆく部下達の姿であった。
その言葉を信じてか否か、ガルザスに背を向けるケン。すかさずナイフで襲い掛かろうとするガルザスだったが、既にその肉体は崩壊が始まっていた。横っ腹を破裂させ、倒れこむガルザス。自らの嘘がばれたことが不思議でならないガルザスに、ケンは言った。御前の顔に嘘と書いてある。その真意を確かめるために湖を覗き込んだガルザスは、醜く変形する己の顔を見ながら爆死したのだった。| [漫画版との違い] ・ケン達がアジト内へ案内される事以外全てアニメオリジナル |
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