大佐(カーネル)
登場:原作(15,16話)TVアニメ版(6〜8話)
肩書:GOLANの首領 元レッドベレーの大佐
流派:南斗無音拳
CV:矢田耕司(TVアニメ版)
小山剛志(DD北斗の拳)
中尾良平(真北斗無双) |
南斗無音拳の使い手。
超能力(気配察知能力)によって敵の気配を読んだり、自らの気配を完全に消して不意を突く戦法を得意とする。元レッドベレー達による狂信者の集団「
GOLAN」を組織し、選ばれた者達だけの国「
神の国(ゴッドランド)」の建国を目指している。
かつて
レッドベレーの大佐として国家に忠誠を誓っていたが、自分たちに命令を下していた
上官達の腐りきった姿に失望。核戦争後、生き残った自分達こそが「神に選ばれた存在」であると信じ、「GOLAN」を組織。同じ思想を持つ者達で世界を統一するという野望を打ち立てた。
ゴッドランドへと乗り込んできた
ケンシロウと対決し、気配察知による回避やブーメラン、爪撃といった攻撃で攻勢。しかし両者ともに気配を消しての攻防で、腕を捕まれてしまい、そのまま連続拳を叩き込まれた。その後、
リンを囮にして槍を突き刺すなどして抵抗するも、
秘孔瞳明の効果によって視界を喪失。最期は
北斗壊骨拳を喰らい、全身の骨を体外に放出して死亡した。
TVアニメ版では、GOLANの名称が「ゴッドアーミー」へと変更され、組織も
KING軍傘下という立場に。神(
シン)に忠誠を誓う者達という設定になったため、国家に失望するなどの設定は無くなった。
また、原作ではケンシロウとの対決時に初めて登場するが、アニメではケン達が
オアシスに現れた頃から度々登場。シンの命を受け、ケンに刺客を送り込んだ。
『劇場版 北斗の拳』でもシンの部下として登場したが、
ユリア捜索よりも
拳王軍への対処のほうを優先させたという理由でシンに殺された。
シンを倒したことにより物語は一旦リスタート。その新章の先陣を切ったのが、このカーネル率いる狂信者集団
「GOLAN」であった。元レッドベレーという、過酷な訓練に裏打ちされた実力者である彼等は、その肩書通りの強さを存分に見せつけ……ることは叶わず、
現代において最強クラスの人種である「軍人」でも北斗神拳の前では赤子同然である事を証明するという、噛ませ犬としての役割を全うしたのだった。
ちなみに彼の最期が、北斗壊骨拳を喰らって
全身の骨が背中側から飛び出すという作中屈指のエグさであることはあまり語られることはない。
とはいえ、カーネルは
中々の実力者である。特に
「超能力」とまで呼ばれる気配察知能力は素晴らしい。ケンシロウの連続蹴りをヒョイヒョイ躱し、かつ反撃に転じれる拳士などそうそういるものではない。
ただ、一度捕まってからは一方的にボコられているので、肉体の強さはそれ程でもないのだろう。だが、逆にそれが彼の能力の高さを証明している。
並の身体能力しかないのにあれだけ見事に躱せたのは、それだけ彼の気配読みが高い次元にあった事の証だ。
そういえばカーネルは右目に眼帯を付けている。核戦争以前は無事なので、割と最近負った怪我と考えられ、それにより彼は拳士として大きなハンディキャップを背負ったことだろう。だがそれが逆に、彼の気配読みを鋭敏化させた可能性もある。
視野の狭まりが不利に働かぬよう、視覚よりも気配による察知に重きを置き、感覚を練磨させたのかもしれない。まあその割には、瞳明で視力を失って大慌てしてたけどね。探れ探れ!気配を!
そしてもう一つ、カーネルは
気配を消す能力にも長けていた。
五感全てが超人的なケンシロウを相手に、全く気配を悟られず背後を取るというのは脅威的という他ない。
ただ、ケンはかつて銃を構えた殺意丸出しのジャギの接近に気付けなかったというポカをやらかしてはいるのだが、あれは己の修行場だったので油断があってもおかしくない。一方カーネルの場合は、
敵の本拠地ド真ん中で要警戒状態のケンシロウでも気付けなかったのだから、やはりとんでもない。その好機を自らのおしゃべりでフイにしてしまうという慢心はいただけないが。
しかしカーネルには、
殺傷力が低いという明確な弱点がある。素手で人体をバスバス貫通してたシンと比べると、
鉄爪でひっかく彼のスタイルは、明らかに格が落ちる。並の相手ならともかく、強敵相手では中々致命傷に到らないだろう。カーネル自身も「ゆっくり切り刻んでやろう!」と発言しており、サディスティックなその言葉の裏には、一撃で勝負を決められない攻撃面の弱さが見て取れる。
だがもしかすると、
あの爪は「あえて」なのかもしれない。カーネルは「気配を消して戦う」わけだが、もし通常の南斗聖拳で攻撃しようとした場合、その拳には気が込められる。当然それは「気配」を生むので、その時点でカーネルの戦法は瓦解するわけだ。故に彼は南斗聖拳を用いずとも殺傷力を生み出せる鉄爪を選ぶことで、気配と威力のバランスをとったのではないだろうか。
また、気配には音や空気の流れの他に
「匂い」も含まれる。南斗聖拳で相手を攻撃すると、当然その手には血が付着し、その匂いが気配を生む。故にカーネルは、爪を付けて攻撃し、ある程度血が付いたら交換することで、血の匂いを纏わないようにしているのかもしれない。
一撃で勝負を決められる攻撃力よりも、相手に触れさせない戦い方のほうがより確実な勝利を得られる。それがカーネルの選んだ戦闘スタイルであり、その断固たる決意の現れが、あの鉄爪なのだ。
そしてカーネルにはもう一つ、
ブーメランという武器がある。特殊な軌道を描くクセの強い武器だが、カーネルの能力とは相性抜群。ケンシロウの動きを完全に読み切り、両脚を斬り裂いたシーンは、かなり強キャラ感があった。そしてこの武器もまた、それ自体に殺気が乗らないし、使い切りタイプなので血の付着も気にしなくていい。南斗無音拳にこれほどマッチした武器も無いだろう。
ちなみにこのブーメランは
、肩当ての下に仕込んであるのを抜き取って使っているのをご存じだろうか。私は最近まで気付かなかった。
画像の黄色の部分がセットされているブーメランで、これを一枚ずつ抜き取って投げているようだ。左右に4枚ずつの
計8枚がセットされており、投げ切ったあとはちゃんと描写から消えているので間違いないだろう。
尚、作中の描写では
6枚しか投げていないのだが、状況から察するに、
最初の2枚を投げた後、ケンシロウが跳躍で回避している間にもう2枚投げているのだろう。そのコッソリ投げられた2枚が、ケンの脚を斬り裂いたのだと思われる。以前までは「最初に投げた2枚が戻ってきてケンの足を切った」と思っていたのだが、真実はこっちだったっぽいね。
●もっと「軍人」らしく
GOLANは、大将であるカーネルを含め、
ケンシロウにとって割とイージーな相手だった。相手を舐めて大した工夫もせず、真正面からケンシロウに挑んで力負けした印象だ。
だが、彼等はもっとやれたはずなのだ。何故なら彼等は
元軍人。某国の軍隊に所属していた彼等は、
銃器を手に入れやすい立場にあったはず。核戦争後の混乱に乗じて軍の武器庫を制圧し、GOLAN全員に銃を配備することも可能だったろう。その場合、
GOLANが遥かに強力な組織となっていたことは間違いない。ケンシロウとて楽に勝てる相手ではなかったはずだ。
だが実際には、このGOLAN編において銃器の類は一切登場しなかった。つまり
彼等は銃器に頼らない道を選んだということ。それは何故か。
私が思うに、それは
カーネルによるリスクヘッジだったのではないか。銃を持てば確かに組織は強くなる。
だがもし部下たちにクーデターを起こされた場合、銃を構えた兵士たちに囲まれれば流石のカーネルとて勝てる保障はない。しかし銃さえ無ければ、どんな状況で襲われようともカーネルに負けは無い。
かつて上官たちの振る舞いに憤怒し、殺意を覚えたカーネルは、反乱に対して繊細な考えを持っていた。故にあらゆる可能性を想定し、導き出した最適解が、銃の破棄だったのだ。
「そんな事のために戦力を犠牲にするか?」と思われるかもしれない。だがこれは
組織にとってのリスクヘッジでもあるのだ。元レッドベレーであるGOLANは、かつて一人で500人のゲリラを殺せると言われた者たち。まともに戦えば、民衆はもちろん、そこらの武装集団を相手にしても負けるはずがない。だがもし何かのトラブルで銃が敵の手に渡れば、要らぬリスクを抱えることになる。
GOLANにとっては、銃など存在しないほうがより確実な勝利を得られるのだ。
そう考え到ったのも、彼等の大いなる「自信」があってこそ。血の滲むような訓練、多くのゲリラを葬ってきた戦歴が、彼等に自信を与え「自分たちこそが最強の組織」と確信……いや、
誤認させたのだ。この世には人知を超えたバケモノ達がウヨウヨいることを知らなかったが故に……。
カーネルは南斗の使い手なので六聖拳の存在くらいは知っていたろうが、実際に目にしたことは無かったのだと思われる。彼等の実力を知っていたなら、世界統一がいかに己の不相応な野望か理解していたはずだ。それでももし覇権を夢見たならば、銃器でバチバチに武装し、戦車を乗り回し、地雷を埋めまくり、ランチャーだのパトリオットだのをぶっぱなす、
世紀末武装集団と化したGOLANが爆誕する未来もあったのかもしれない。
●浮いてる奴はハミられる
カーネルを含むこのGOLAN編は、
物語の中で少し浮いた印象を受ける。
その一番の要因は
「世紀末感が薄い」ことであろう。特にあの見た目。他のキャラクターが世紀末に合わせたファッションをしているのに対し、
彼らだけが核戦争以前のままの軍服を着ているのだ。違和感を覚えるのも仕方が無いだろう。
回想の中では、
ハイテク感まるだしの施設も登場していた。こういうのも他では見られない描写だ。以降こういうのが無くなったのは、あんまり世界観から乖離したシーンは出さないようにしようという方針になったからだと思われる。序盤ゆえの、まだ世界観が固まり切ってない感じが面白い。
他に浮いている理由として、
物語の本筋とあまり関係が無いというのもある。GOLAN編は、「リンと再合流する」という展開以外、特に重要な内容でもないんですよね。一応、核戦争の引き金に関係しているので、重要じゃないってこともないのだが、何故かあまり注目されていない。いっそ
『カーネルの裏工作で世界の緊張が高まって戦争が起こった』みたいな裏設定でもあれば面白かったのに。
で、こういうちょっと浮いた章がどうなるかというと、
原作以外の作品での扱いが悪くなる。特に
外伝作品においては全くと言っていいほど触れられていない。唯一「北斗の拳 イチゴ味」では、カーネルがユダといい勝負を繰り広げるという見せ場はもらえているが、ギャグ漫画で活躍してもなぁ……
ゲーム作品においても然程目立った活躍は無く、特にPS「世紀末救世主伝説 北斗の拳」やPS3「北斗無双」といった
原作再現率が高い作品で完全カットされたのは印象が悪かった。続編の「真・北斗無双」では念願の登場を果たすも、プレイアブル化は叶わず。その後に出たスマホアプリ版では、ド初期キャラながらも念願のプレイアブル化を果たしているので、興味のある方はどうぞ。
しかし出番が無いのはまだ良い方。
TVアニメ版での
GOLANがKING軍の傘下という設定変更は流石に可哀想だった。更には
「自分たちは選ばれた人間」だという思想も無くなり、ただシンを神と崇めて忠誠を誓うという有象無象の組織になり下がったのはもはや冒涜である。なんか組織名も地味に
「ゴッドアーミー」になってるし。アニメ改変の中でも、最も憂き目にあったキャラクターではなかろうか。
ある意味それよりも酷いのが、
劇場版アニメだ。ここでは
シンの副官のような立場となっており、ユリアの捜索を命じるシンに対し、「(拳王軍が迫っているので)それどころではありません」と正論を返したらブチ切れられ、
あわあわしている内に胴を貫かれて死ぬという酷い最期を迎えている。「あ……新記録」のモヒカンと大差ないレベルのモブっぷりだ。東映は軍人に恨みでもあるのか。