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ジャッカル



登場:原作(17〜25話)TVアニメ版(11〜13話)
   劇場版、PS版、真北斗無双、他
肩書:野盗団のリーダー
流派:南斗爆殺拳
CV:加藤正之(TVアニメ版)
   大竹宏(劇場版)
   江川央生(PS版)
   高塚正也(真北斗無双)
   浜田太一(DD北斗の拳)
   前田剛(DD北斗の拳2)
   堂坂晃三(リバイブ)


 野盗集団のボス。獲物を追い殺す執拗さを持つ一方、強い男との戦いを避けることで確実に獲物を手に入れるという狡猾さも併せ持つ。自分が生き残るために部下を平気で切り捨てたり、嘘によって相手を懐柔したりもする卑劣漢。ダイナマイトを用いた戦法を得意とし、ジャケットの下に常に大量に仕込んでいる。かつて超凶悪犯のみを投獄した地底特別獄舎「ピレニィプリズン」に囚われていた脱獄囚。

 ジョニーのバーでのケンシロウタキの会話を盗み聞きし、密かに後を追跡。トヨの村の井戸から水が出たのを確認した後、ケンシロウが去ったのを見計らい、村へと襲来。トヨに銃撃されるも、身体中に巻きつけたダイナマイトを見せて発砲できないようにし、村を制圧した。その後、撃たれた恨みを込め、トヨの目の前で子供達を絞首刑にしようとしたが、ケンシロウが戻って来たため、その場は引くことに。子供達にダイナマイトをセットし、走り回らせることで、己たちが逃げるための時間を稼いだ。

 その後、フォックスを犠牲にしてケンの追撃をかわし、ビレニイプリズンへ帰還。だが既にケンに先回りされており、部下達にまで裏切られたため、監獄に眠る「悪魔の化身(デビルリバース)」を解き放つことを決意。己が生き別れの兄だと信じ込ませ、デビルの懐柔に成功した。しかしそのデビルもケンシロウに敗北し、最後は自らのダイナマイトにて、「弟」と共に爆死させられた。


 TVアニメ版では、「ウォリアーズ」というチーム名がつけられ、KING傘下の組織という設定に。ビレニィプリズンでケンシロウに殺されそうになった際には、ジョーカーに救われ、デビルリバースを使ってケンシロウを抹殺するよう命令された。その際にジョーカーから、デビルの母の写真を受け取っている。また、ダイナマイトを投げる技に「南斗爆殺拳」の名称が与えられたが、ケンシロウからは「火薬に頼ってなにが拳法だ」と罵られた。


 『北斗の拳3-新世紀創造 凄拳列伝-』では、トキを捕らえてカサンドラに収監する役目を与えられている。

 『劇場版 北斗の拳』では、ジャギの部下として登場。仮面の下の素顔を見て吐き気を催したことで、ジャギに殺された。





 シンという同格の拳法を使うライバルを倒し、ケンシロウの物語は次のステージへ。だがすぐにまた強敵を登場させるのは芸がない。かといってGOLANみたいに無双されるばかりでも趣きがない。そんな中で生み出されたのが、狡猾なる男ジャッカル。大して強くもないくせに、たっぷりケンシロウに煮え湯を飲ませるという正真正銘のクソ野郎であった。




 ジャッカルのとった戦法は、とにかくケンシロウと戦わないというものであった。他にもズル賢い敵はいたが、ジャコウにしろコウケツにしろ、結局は力でねじ伏せる方法を選んでいる。それに対してジャッカルは、追い詰められる最後の瞬間まで、ひたすら戦闘を避け続けた。ある意味、作中で最も正確にケンシロウの実力を見抜いていた男と言えるだろう。


 実際、彼はケンシロウに完勝寸前であった。深夜にトヨの村を制圧したあの作戦は、トヨが銃を持っているというイレギュラーさえなければ、確実に成功していただろう。データバンクによると、ケンシロウは「2km先の内緒話を聞き分ける」ほどの聴力を持つという。そんな超人に一切気配を悟られぬままオアシスから尾行し、村の近くで1日半も息をひそめ続けられた忍耐力と繊細さは凄い。何よりそれをチーム全体で行えていることが凄い。


 また、ケンシロウが村に戻ってきた後の対応も、実に落ち着いたものであった。2人の子供にダイナマイトをセットし、彼らを走り回らせることで逃げるための時間を稼ぐというド畜生な発想。それを躊躇いなく実行できる残忍さ。もはや怒りを通り越して呆れてしまうレベルである。


 そして、極めつけが、デビルリバースの存在だ。ジャッカルが本当にケンシロウから逃げ切りたいなら、特定のアジトであるビレニィプリズンに戻らないという選択肢もあったはず。それでも彼が帰巣を選んだのは、やはりそこにデビルが居たからであろう。同時に、ジャッカルには彼を飼いならせる自信があったということだ。




 実際、デビルに対する準備は万全であった。母親の写真を用意していた事ももちろんだが、その母がデビルにどう接していたかという情報や、デビルの犯罪歴、下された判決、執行された刑まで、彼は事細かに記憶していた。もはやデビルオタクと言ってもいいだろう。己がデビルの「兄」となるその日に備えて、彼は綿密な下準備を行っていたのだ。効率的に生きる人間ほど、傍から見ると楽をしているように見えて、実は裏では頑張っているものなのである。




 だがそれほど狡猾で用意周到な男だったにも関わらず、最終的に彼は成敗されてしまった。その敗因は、トヨを殺したことに対するケンシロウの怒りがいかに苛烈だったか、それを読み違えたことだ。出会ったばかりの老婆を殺されただけで、ケンシロウがここまで執拗に追ってくるなど、ジャッカルには想像できなかったのである。


 ケンシロウの怒りの大きさは、トヨが子供たちに捧げた「愛」に比例する。愛を知らぬジャッカルには、それを量る術が無かった。彼もまた、カイオウらと同じく「愛」を知らなかったが故に敗れし者なのである。





●目指すは世紀末最弱?


 ジャッカルの凄さは、チーム方針にある。おそらく彼は、あえて弱くてヘタレなメンバーを集めている。世紀末最弱の集団が、彼の理想とするチームの姿なのだ。


 ジャッカルのモットーは「自分より強い相手とは戦わない」こと。だが本音では、互角程度の相手……いや、一方的な蹂躙でない限り、戦闘そのものを避けて生きていきたいのだろう。何故なら、この世界にはバケモノの如く強い男がウヨウヨいるから。実際彼は、ケンシロウの戦いを目にしたわけでもないのに、徹底的に戦う事を避けていた。生半可に強い仲間を集めたところで、そういう化け物にエンカウントした時点で全て終わりであることを理解しているのである。そういったリスクを回避するため、ジャッカルは「戦闘」を避け「蹂躙」のみを行う、最低最悪の集団を形成しているのだ。


 だからといって「強さ」を捨てる必要はあるのか。有事に備えて強いチームを作った方が良いのではないか。そう考えて、中途半端に日和らないところがジャッカルの凄い所だ。

 ジャッカルが強さを求めない理由。それは、強さは「自信」を生むからだ。血気盛んな者達で溢れる世紀末において、腕に自信がある者は、確実に「イキる」そしてそれは「戦闘」へと発展する。ジャッカルにとって「強さ」などというものは、余計ないざこざを招くだけの邪魔な要素なのである。


 実際ジャッカルは、作中でイキった部下たちを瞬時に切り捨てている。トヨの村に先走った先遣隊や、ケンに因縁をつけたボクサー、いずれに対しても「バカ」と罵り、止めようともしなかった。




 中でも露骨だったのが、ケンシロウを勧誘した二人組である。彼等はケンにあしらわれた事で激怒し、襲い掛かろうとした。それを見たジャッカルは、一旦二人を制止したものの、結局は自らの手で処刑している。見た目かなり強そうな二人だったので、生かしておけば戦力として役立ちそうなのに、ジャッカルは迷うことなく二人を切り捨てた。それは、彼らが「イキった」から。生かしておけばやがて己に不利益をもたらすと判断したからだ。

 こういった者達を排除し、弱くてヘタレで己の指示に100%従う者達だけのチームを作り上げる。それがジャッカルの選んだ、自身の生存確率を上げるための最善の方針なのだ。




 そんな弱小チームの象徴と言えるのがフォックスだ。彼の使う跳刃地背拳は、不意打ちに特化した拳法。鍔迫り合うような戦闘においては、殆ど戦力にならないだろう。チームの最高戦力がそんな奴なのに、敵と正面からぶつかろうなどと思うはずがないのだ。

 彼が食料調達のために村を襲ったシーンも見て欲しい。まずフォックスが跳刃地背拳で男達を葬り、その後に手下たちが女子供だけになった村を襲っていた。あんなへっぴり腰の村人数人くらい力押しで行けそうなのに、そんなリスクすら犯したくなかったわけだ。とんでもないヘタレどもである。

 フォックスの死体が届けられた時などは、メンバー全員一目散に逃げ出していた。それはつまり、彼等にとってはフォックス如きが大エースであり、頼みの綱であったという事。石嶺が4番を打っていた阪神暗黒時代を思い出すほどの弱小チームっぷりと言えよう。



 しかしこの暴力の世界。いかに慎重に立ち回ろうと、戦闘が避けられない時もあるだろう。そんな時、弱小チームである彼らがどうするのかというと、これはもうジャッカルのダイナマイトに頼るより他に無い。




 アニメでは南斗爆殺拳を名乗り、ケンからも視聴者からも嘲笑されていたが、腐ってもダイナマイト。馬鹿にできる威力ではない。あれを一本投げられただけで殆どの敵は戦意喪失するだろうし、なにより体中にダイナマイトを巻き付けている奴など色んな意味でアブなすぎて近付きたくないだろう。単なる武器としてではなく、抑止力としての効果も果たしているわけだ。一見ただの嗜好品である葉巻が、実はすぐ着火できるためのアイテムになっている所も抜け目がない。流石である。



 チームの作戦指揮も全てジャッカルが行い、いざというとき戦うのもまたジャッカル。メンバー全員がジャッカルに依存し、自分たちだけでは何もできないヘタレニート集団。それがこのチームの真の姿なのだ。無能な自分たちを拾ってくれたジャッカルに、彼等はもっと感謝するべきだろう。にも関わらず、追い詰められたら即座に謀反。ジャッカルは裏切ってもいいけど、お前らにその資格は無いと私は言いたい。

 しかし流石は最弱。雁首揃えて建物内に押しかけ、ダイナマイト一本で一網打尽にされるというのは、まさに闘いを知らぬ者達の末路。ジャッカルが望んだ『世紀末最弱の集団』その集大成とも言える最期であった。来世ではせめてもうちょい身体鍛えような。





●メンタリストジャッカル




 ジャッカル一味は、他の組織に比べると、あまり見た目に特徴が無い。現代にも割といそうな、海外のバイカーギャングといった感じだ(モデルがそうだから当然なのだが)。先程述べた通り、彼等は基本ヘタレの集団なので、モヒカンにするような気概も持ち合わせていないのだろう。






 だがトヨの村に突撃した偵察隊の3人だけ……本当にこの3人だけが、ジード軍よろしくなモヒカン野郎共なのである。一体なぜなのか。


 その理由として考えられるのは、この3人が「ジャッカルの仲間」だと特定されないためだと思われる。偵察隊である以上、彼らは敵に接近する機会が多くなる。故に姿を見られたり、殺されたりする危険性も高い。そうなった場合、相手はその容姿から、敵が誰かを推測する。しかしジャッカルの本隊は、彼等とは似ても似つかぬノーモヒカン。故に、容姿からの情報ではジャッカル一味だとは気付かれないのだ。全てはチーム……いや、ジャッカル自身の保身のため、偵察隊の彼等はその髪型にするよう強制されていたのだろう。


 そしてもう一つの理由が、相手を油断させるためだ。この時代にモヒカンにしている輩は、言わば「ならず者のテンプレ」。つまりは脳筋馬鹿である。実際この偵察隊は、ジャッカルの指示を無視して村に突撃する馬鹿であった。今しがたケンが岩盤を割ったのを見ていたにもかかわらず「身のほど知らずめ」なんて言えちゃうのも馬鹿だし、なんなら三節棍という武器自体がもう馬鹿っぽい。

 で、ケンシロウは彼等を撃退したわけだが、その容姿や言動から、ケンは相手が馬鹿だと判断した。同時に、「近くにこいつらの仲間はいないだろう」と考えた。もし水が出た事を知っている者が他にもいたなら、そいつらも同様に村に襲撃してくるはず。何故なら馬鹿だから。それが無かった事で、ケンは彼等がたまたま通りがかった3人組だと推測したのだ。3人の髪型だけで、ジャッカルはケンシロウの思考を操作したのである。なんて恐ろしい男なんだ……




●元ネタ




 彼のモデルは、映画「マッドマックス」に登場するトーカッター。暴走族チームの親玉であり、肩まで伸びた髪の毛や、毛皮のライダースーツを来ているという類似点に加え、その下種で卑怯な性格はまさに生き映しだ。


 主人公の大切な人達(妻や息子、同僚)を傷つけたり殺したりしたことで、復讐者となった主人公から地の果てまでも追われ続けるという点も同じ。あとこれはトーカッターではなく手下の一人だが、時限式で爆発する細工をされ、主人公はその爆発に背を向けながら去っていくところで終幕となる所も一致している。


 ご存じの通り、北斗の拳はこれの次作である「マッドマックス2」から物凄い勢いでパクリまくっており、そのターゲットを1の方にも伸ばしてみた結果、ジャッカルというキャラが誕生したというわけだ。本当におおらかな時代ですよね。笑とけ笑とけ。