TOP


[第11話]
悪党ども! 
地獄のブルースを聞け!!


 灼熱の太陽の下、一人の子供が歩いていた。太陽の光で目をやられていた少年は、道の先が崩れ落ちてなくなっていることに気付かなかった。身を崩し、高架下へと転落しそうになる子供。だがそれを救ったのは、たまたま通りがかったケンシロウであった。少年に水を与え、名も名のらずにその場を去るケン。子供の目にはケンシロウが神に映っていた。

 とある町の酒場で、バット達と共にくつろぐケンシロウ。その姿を見つけ、近寄ってきたのは、大柄な二人の男であった。彼らはKINGの発行した手配書を見て、七つの傷の男・ケンシロウを殺しに来たのだ。しかし、二人が襲いかかろうとしたその時、それを制止する声が酒場に響いた。声の主は、奥の部屋でバスタブにつかっていた男、ジャッカルであった。自分よりも強い奴とは戦うな。それがジャッカルの唱える信念であった。そして、その教えを守らなかった部下二人を、ジャッカルはその腕力で捻り殺したのであった。

 騒ぎが収まった頃、一人の子供が酒場へと入ってきた。彼は、先ほどケンに命を救われたあの少年であった。そしてその少年をみて、バットはおどろきの声を上げた。バットとその少年、タキは、同じ村で育った者同士だったのだ。秘孔 浄界で視力を回復させてもらったタキは、早速自らが村を出た理由を話し始めた。

 タキの村にある井戸は全く水が出なかった。村の大人達は、その井戸に見切りをつけ、皆村を出ていってしまったのだという。そして、残された子供達のたった一人で世話していたのは、バットの育ての親でもあるトヨであった。必ず井戸から水は出る。トヨはそう信じて、いまでも井戸を掘り続けていたのだ。しかし、男手無くして彫り続けるには限界があった。それでタキは、協力者を探すために村を出たのである。その話を聞いたケンは、快く協力することを承諾。しかし、その話の顛末は、奥にいたジャッカルの耳にも届いていた。我々のオアシスが見つかった!自らの軍、ウォリアーズ率いて、ジャッカルはケン達の後を追う・・・

 タキの村に着いたケンの顔を、いきなり銃弾がかすめた。ケンシロウを盗賊かと疑ったトヨが、威嚇発砲をしたのである。だが誤解であった事を知ると、トヨは早速ケンシロウ達を水でもてなしてきた。村の再建のため、必ず井戸を掘り当てることを誓うトヨ。身寄りのない子供達の幸せこそが、トヨの全てであった。だが、その子供達のために一滴も水を飲まないトヨの姿に、タキは心を詰まらせていた。

 その夜、村からバットとタキの姿が消えた。二人は、村から水を奪った奴等の元へと赴き、盗られた水を取り返そうと考えたのだ。看守の目を盗み、見事作戦を成功させた二人は、バギーで一路村へ。だがその行く手には、運悪く野盗が待ち構えていた。水を持って逃げる2人に、野党の刃が迫る。だが、間一髪のところで二人を救ったのは、ケンシロウであった。二人の行き先を聞いたケンが、駆けつけたのである。自分達の行動を反省するバット達であったが、ケンは、子供達にこれどの危険を晒させてしまう村の深刻さにを懸念するのだった。

 翌朝、ケンは村の井戸の中にいた。たった一杯の水のために子供が危険な目に遭う時代。その不条理な世の中への怒りを、岩盤へとぶつけるケン。そしてその怒りの拳の前に、厚い岩盤は脆くもぶち割られた。遂に井戸に水が戻ったのだ。トヨや子供達の歓喜の声に包まれ、村の再建は近付いたかに思われたが・・・

 井戸の復活は、しっかりとウォリアーズ達に目撃されていた。しかし、ジャッカルは動かなかった。象と闘うのではなく、象の肉を食えばいい・・・ケンシロウが去った後で、ゆっくりと村を襲えば良いと考えていたのだ。しかし、メンバーの3人は、ケンにかけられた報奨金目当てに村へと特攻してしまった。ケンに挑戦状をたたきつけ、襲いかかる3人。だがそれは、ウォリアーズ達にケンシロウの恐ろしさを学習させただけであった。北斗虚無指弾にて記憶を奪ったケンは、彼らを捨てに砂漠へ。しかし、ケンは村へと戻らなかった。自分が村にいれば、今のような奴等が何度も訪れる。そう考えたケンは、一刻も早く村を離れることを選択したのだ。ケンが遠ざかるのを直感で感じ取ったリンは、バットと共に村を発つが・・・

 ケンが村を出たことを確認したジャッカルは、遂に村への侵攻を開始した。あっという間に井戸を占拠し、その喉を潤わせるウォリアーズ達。だが、折角出た水を、トヨはそう簡単に渡すわけにはいかなかった。首領さえ倒せば何とかなるかもしれない。そう思い、銃でジャッカル立ち向かうトヨ。しかし既にジャッカルは銃への対策も考えていた。ジャッカルは、己に銃を発砲できぬよう、全身にダイナマイトを巻きつけていたのだ。結局なにもできぬまま銃を奪われ、トヨの反抗は終了。変わって始められたのは、あまりにも残酷なトヨへの報復であった。ジャッカルは、トヨの目の前で子供達を処刑すると宣言してきたのだ。その一番手として選ばれたのはタキだった。逆さ吊りにされ、井戸の中へと放り込まれそうになるタキ。しかし、その背後から現れたのはケンシロウだった。トヨの銃声を聞きつけたケンは、急いで村へと戻ってきていたのだ。タキを吊るしていた男を瞬殺したケンは、次なるターゲットをジャッカルに定めるが・・・

 自分より強い奴とは戦わない。その自らの信念に従うかのように、既にジャッカルは逃亡の準備を始めていた。ジャッカルの右腕フォックスが用意していたもの、それは二人の子供であった。彼らの背にダイナマイトを入れて走り回らせることによって、自らが逃亡するための時間を作り出したのだ。悠々と逃亡するウォリアーズに悔しさを覚えつつ、子供の背を追いかけるケン。しかし、一人は助け出したものの、もう一人はとても間に合いそうに無かった。だがその時、子供の背後に近付く一人の影があった。それは、既に深手を負っている筈のトヨであった。なんとか子供を捕らえたトヨは、ダイナマイトを空高く放り投げることに成功。しかし、子供をかばって爆風を受けたトヨの傷は、致命傷に至ってしまった。力尽きたトヨの体の上で泣き崩れるバット。その哀しき光景に、ケンはウォリアーズ達への復讐を誓うのだった。
放映日:84年12月20日


[漫画版との違い]
・ジャッカルの部下がケンシロウに近付いたのは、原作では仲間に引き入れようとしたからだが、アニメではシンから配布された手配書を見てその首をとろうとしたため。
・原作ではタキが来たバーはジョニーのバーだが、アニメでは違う。
・ケン達が村に来たとき、原作ではトヨはバットに石をぶつけたが、アニメではケンに発砲。
・水を盗みに行くのにバットも同行。そのせいか見事水を盗むことに成功
・原作では2人に虚無指弾で1人を裏拳で倒したが、アニメでは全員虚無指弾
・原作では虚無指弾の男達はバットに捨てに行かせたが、アニメではケンが行く。そのまま村を去ろうとする。
・ジャッカルの軍が「ウォリアーズ」と命名
・タキとバットが水を盗んで帰るシーン。そして道中2人が盗賊に襲われるシーン追加
・トヨ、原作では暗器のサーベルで刺されるが、アニメでは奪われた銃の柄で殴られる
・元プロボクサーの男、そして北斗断骨筋も非登場。
・井戸の上でくくられたのはアニメではタキに。原作では首くくりだったが、アニメでは逆さ吊りに。
・「おかあさ―――――ん!!」が「おばさ――――――ん!!」に変更



・残念1
水の見張り番の男の出番が少なかったことが残念。原作ではタキを殺した挙げ句、ケンに岩山両斬波でやられるまで出番があるんですが、アニメではタキとバットに「待て〜」と言ってお終い。脇役のくせにやけに派手な民族衣装を着てるんで、個人的に好きだったんだけど…
・残念2
元プロボクサーの男、そして北斗断骨筋がカットされたことが残念。本家本物のあべしが聞けないなんて・・・
・残念3
トヨが死んだときに「おかあさ〜ん!」と言ってあげなかったこと。これは致命傷。


第10話へ≪ ≫第12話へ