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ヒルカ



登場:原作(117〜118話)TVアニメ版(94〜95話)
肩書:拳王配下
流派:泰山蛇咬帯
CV:徳丸 完(TVアニメ版)
   稲田徹(PS版)

 拳王の部下の中で最も冷酷非道と言われる男。泰山妖拳蛇咬帯の使い手。

 フドウのもとで育てられていた己の実子、タンジとジロを誘拐し、流砂地へ。二人を底なしの流砂に投げ込むことで、フドウを助けに飛び込ませ、まとめて砂の中に沈めようとした。その間にリンバットをも殺そうとするが、間一髪のところでケンシロウが到着。子供たちも助け出され、フドウも流砂から引き上げられたが、ケンシロウをおびき出すことこそが作戦の真の目的であったことを明かし、泰山妖拳蛇咬帯にてケンシロウを攻撃。強靭な帯を全身に巻きつけて動きを封じた後、全身に刃を生やして抱きつく「死の抱擁」で止めをさそうとするが、簡単に帯を引きちぎられてしまい、抱擁も大岩で防御されて失敗。突き刺さった岩ごと部下へと投げ返され、放たれた矢を眼球に受けた挙句、そのまま岩壁に衝突して死亡した。


 TVアニメ版では、上官のザクの前に現れ、フドウが養っている子供たちを利用する作戦を提案。自らフドウの家へと赴き、子供達全員を浚うというシーンが描かれた(カンはベッドの下に居たため見逃した)。また、原作ではフドウはたまたま流砂地を通りかかるが、アニメでは事前に誘拐の事実を伝えて流砂地に誘き出すという作戦に変更されていた。
 ケンシロウとの闘いでは、部下達も一緒に蛇咬帯を慣行。崖に放り投げられた後は、流砂の中へ落ち、そのまま砂の中へと消えた。 




 拳王軍でもっとも冷酷非情と呼ばれている彼。だが、その噂以上に卑劣漢扱いされているフシもある。彼はそこまでのゲス野郎なのだろうか?アニメ版では、フドウの子供を浚いに行ったのはヒルカ自身だった。そんな雑用、部下に任せておいても問題なく遂行してくれそうなもんだが、わざわざリーダーが自ら単身赴き行っている。そして、そのとき浚った子供の数は20に近いが、結局タンジとジロ以外はいつの間にか村に戻されている。本当に冷酷非道なのなら、さっさと殺してしまうところだろう。

 人質に選んだのが自分の息子であるというのも、なにか不自然だ。別に息子である必要性はどこにもない。おそらくヒルカには、巻き込むのは自分の子供だけでいいという想いがあったのではないだろうか。火事の際、消防官が身内を最後に逃がすというあのシステムだ。息子であるからこそ損な役を引き受けてくれ的心情だったのではなかろうか。

 そして、ヒルカはその息子たちの命を奪う気だったのかどうかも怪しい。フドウがタンジ・ジロを放り投げたとき、ヒルカは「うてうて〜い」と指令を出してはいるが、別に子供たちを撃てとは言っていない。というか、矢が飛んでいったあの位置は、結局はケンシロウのいた位置だ。宙にいた子供たちではない。つまりあの矢は、ケンを狙って放たれた矢のところへ、わざわざ子供たちが飛んできたということなのではないだろうか。あの砂煙は、ヒルカ軍にとってもチャンスだ。自分たちはゴーグルで視界良好なのに対し、ケンは煙の中。そんな唯一とも言っていいケンに矢を命中させうる好期に、わざわざ殺しても意味のない子供を射る意味がない。あれはケンに向かって放たれたのだ。決して息子たちにではない。

 そしてケンシロウとの闘いだが、アニメでこそ部下とともに泰山妖拳蛇咬帯を放っているが、基本的にはヒルカが率先してケンシロウと戦っている。戦い方こそ、ケンの動きを封じて云々という正攻法ではないように感じるが、そのようなことで汚いと罵られるような状況ではないはずだ。それにいくら蛇咬帯で動けないという確信があっても、あのケンシロウと密着するというのは相当危険な行為だ。指先ひとつでダウンな拳を持つ男に抱きつくなど、死地に飛び込むようなもの。勝利を得るためにはリスクを負わねばならないというその精神。とても卑劣漢のそれではない。

 そして、結果だけ見ても彼の功績はとても大きい。ヒルカがケンを足止めた時間は、五車星でいうところのジュウザに値する。事実、ジュウザが命がけで作った貯金は、ヒルカ一人の作戦で消し飛んでしまった。拳王様が先に南斗の都にたどり着けたその要因の8割がヒルカの手柄だと言っていいだろう。冷酷といった噂や死に様の間抜け具合だけで決め付けず、もっと評価されてもいいキャラクターだと思う。

うそです。思ってません。


 ちなみに、彼は己の泰山妖拳蛇咬帯を「拳王配下の最強拳」と謳っている。流石にそれは誇張しすぎだと思うが、PS版北斗の拳にて彼が繰り出すその拳は、ユダステージにおけるワンワンに比肩する、紛れもなくあのゲームにおける最強最悪の強敵であった。