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ルイ/天帝



登場:原作(156〜160話) TVアニメ版(120〜124話)
   北斗の拳5(SFC)、セガサターン版、真北斗無双、他
肩書:天帝 リンの双子の姉
CV:鷹森淑乃(TVアニメ版・セガサターン版)
   佐藤朱(真北斗無双)

 リンの双子の姉。北斗、南斗、元斗を従える「天帝」と呼ばれる存在。

 かつてリンと双児として生まれたが、「双星が育てば天は二つに割れる」との言い伝え故にどちらかが殺されることに。ジャコウの選択によって、妹のリンのほうが消される事となったため、次代の天帝として選ばれた。その後、ファルコの手によってリンは密かに生かされ、後にその妹の悲話を知らされた。

 ファルコの母が死ぬと同時に、保身を得ようとするジャコウの手に落ち、地下水脈を掘るための作業場に幽閉されることに。永く光のない場所に居たことで視力を失い、さらにはジャコウが天帝の名を騙って圧政を繰り広げたため、自身の天帝としての名を地に落とされた。

 北斗の軍中央帝都に進軍してきたのに合わせ、妹リンが近づいてきている事を感じ、その頭に直接声を呼びかけるという方法でリンを誘導。その後、偶然地下に落ちてきたリンと運命の再会を果たし、その喜びに涙した。その後、アインの命をかけて地下水を噴出させてくれたおかげで脱出に成功。アインの死、ジャコウの最後を見届けた後、自らのために血と涙を流し続けたファルコに感謝の涙を流した。


 『北斗の拳5 -天魔流星伝 哀★絶章-』では、天帝の血を引く者として魔皇帝に命を狙われる立場に。かつてリンのもとを訪ねようとした際にギルガーに襲われ、眼の光を喪失したが、シュウのおかげで光を取り戻すことができた。
 後にリンと共に魔皇帝に連れ去られ、主人公をおびき寄せるための人質に。主人公亡き後、その意志を継がんとする主人公の息子に打倒魔皇帝を託し、リンと共にその勝利を祈り続けた。

 『北斗の拳(セガサターン版)』では、暗黒の北斗に狙われていたが、それを危惧した死兆一族(新南斗五車星)によって匿われ、彼らに捕らわれたと装いながらリンの到着を待ち続けていた。だがその後、襲来したゼンオウに捕えられ、リンと共にゼンオウの城へと連れてゆかれることに。服従を拒んだため、処刑されそうになるが、その天帝の光でゼンオウから野望を捨てさせ、後にケンシロウの手によって救出された。

 『パチスロ北斗の拳 新伝説創造』では、幼き頃、アスラなる少年と共に、養育係であるバトロ将軍のもとで育てられたという設定が加えられた。核戦争の後に一時的に離れ離れになるも、その後再びアスラと再会。アスラから密かに想いを寄せられるようになった。
 その後はファルコによって守護されていたが、ジャコウの嘘によってファルコが村を離れれたため、その隙を突かれてジャコウに捕まり、幽閉されることに。それを阻止しようとしたアスラは、ビジャマの手によって記憶を喪失し、感情なき殺人マシーンへと作り変えられてしまった。

 『北斗の拳イチゴ味 ファルコ外道伝 GOLDEN GUY』では、母親が登場。天帝の里に軍隊が迫る事案が起こった時、まだルイはまだ母の胎内にいたというシーンが描かれている。尚、ファルコの台詞からすると、母親は先代の天帝では無いらしい。







 教養の無い者なりに天帝という存在を考察しました。


〜天帝の歴史と衰退〜
 
 中国の三大宗教、儒教、仏教、道教のうち、有名なのは道教における天帝らしいのだが、参考にしなければならないのはやはり仏教における天帝のほうだろう。北斗神拳は仏教徒が生み出した拳とされているからだ。仏教での天帝は、帝釈天と同一のものとされている。有名な話で例を出すと、七夕で有名な織姫の親が天帝だ。織姫と彦星をくっつけたのも、怒って天の川で引き離したのも、年に一度だけ会うことを許したのも天帝である。西遊記でお馴染みの孫悟空を天界に呼び、仙桃の果樹園の管理を任せ、手に負えずにお釈迦様に助けを求めたのも天帝。だがこれらは所詮、物語の中に登場する神の事である。北斗の拳に登場するルイは霊長類ヒト化なので、これらの偶像神としての天帝はひとまず無視する。
 
 北斗の拳で一番早くに天帝の存在が確認されているのは2000年前である。原文のまま掲載してみる。
 
今を去る、およそ二千年前。
天帝の盾として北斗宗家はすでに世に君臨していた。
だが惜しむらくは究極の暗殺拳、北斗神拳はまだ生まれていなかった。
そして世は天帝を喪失し、狂乱の戦国の時代に突入していた!!

 
 ここではおよそ2000年前とあるが、北斗神拳が創始されたのは1800年前。天帝喪失して直ぐに北斗神拳の創始に取り掛かったと考えられるので、ここで言われている「およそ2000年前」というのは、約1800年前という意味だと考えていいだろう。これを踏まえて現実の歴史と比べてみると
 
・実際の歴史
 1800年前、漢帝国の衰退により、世は三国志の時代へと突入する。
 
・北斗の歴史
 1800年前、天帝の喪失により、世は狂乱の戦国の時代に突入する。
 
 ここまで合致しているのを否定するのもなんだし、ここは漢帝国の皇帝というのが天帝であると考えていいだろう。フィクションである北斗の世界には漢帝国なんて存在しなかったのでは?という意見もあるだろうが、ちゃんと蒼天の拳での拳志郎の口から「漢王朝末期の―」という台詞が出ている。北斗の世界でも、漢帝国は存在したのだ。
 漢の皇帝は、劉邦から始まる劉家の血脈によって受け継がれている。ということは、天帝の血筋=劉家の血筋、となるわけだが、ここで少し問題が起こる。三国時代に突入した際、北斗宗家はその劉家の血を引く劉備、いわゆる蜀に仕えていないのである(劉備が劉家の血を引いているのは自称しているだけという説もあるみたいだが、ここでは一応引いているとする)。
 天帝が喪失した後、北斗宗家は北斗神拳を作り上げた。そして北斗神拳は世に平和をもたらす英雄の守護拳となったという(月氏の亡霊の狼談)。この英雄というのは、喪失した天帝の後継者にあたる、新たな天帝の事だろう。だがこれを仮に劉備とすると、矛盾だらけなのだ。まず劉備はこの世に平和をもたらした英雄などではない。まあ北斗の世界では劉備の蜀が天下を取ったとも考えられない事はないのだが、その場合、劉備は北斗神拳の力を借りて世を治めたという事になる。が、実際に劉備を守護していたのは北斗神拳から分派した北斗劉家拳であった。劉家拳は、北斗神拳より劣る拳。北斗神拳さえあれば、北斗劉家拳など創始する意味が無いのである。と言うことは、劉備の周りには北斗神拳、北斗宗家は無く、それはつまり劉備は天帝ではないと言う事になる。では、この三国志の時代における天帝とは何者なのだろうか。
 劉家に北斗神拳が無いのと同じ理由で、孫家、曹家もまた北斗神拳を有していない。ということは、北斗宗家はこの頃、魏呉蜀とはまた別の小勢力となっていたのだ。そして彼らの守護する天帝は、この戦国の世を治め、英雄となったのである。無論、そんな救世主は、現実の史実には登場しない。ということは、この新天帝も史実には存在しない、架空の人物である可能性は高い。だが、少なくとも漢が滅びるまでの天帝が劉家であったことを考えると、この新天帝もまた劉家の血を引く人間でなくてはおかしい。これらを纏めると、三国時代における天帝とは「劉備とは別の、劉家の血を引く架空の人物」という事となる。うーむ、現実と北斗、二つの世界の歴史の相違を極力少なくし、かつそれなりに現実味のありそうな説だと思うのだがどうだろうか。
 では何故北斗宗家は劉備を天帝としなかったのかという点だが、史実では、劉備の先祖である劉貞が劉家を追われたことにより、劉家の家系図に劉備の名は無いらしい。いくら血を引いていても、一族を追われた者の祖先を天帝とすることは出来なかったんじゃないだろうか。また、こう考えたほうが都合のいい事がある。それは北斗宗家と北斗劉家拳の関係だ。北斗の掟には、「北斗神拳に伝承者無き時は、これを北斗劉家拳より出す」というものがある。また伝承者がいても、北斗神拳伝承者は北斗劉家拳伝承者と戦う「天授の儀」を行い、それに勝利して劉家拳伝承者と認められ、はじめて伝承者となれるのだ。孫家と曹家からブーイングが起きそうなこの掟も、劉備の立場を考えれば納得の事。劉備は北斗宗家の支援を得られなかったが、天帝の血を引いていることも事実。故に、劉備を守護する北斗劉家拳が、他の二拳よりも優遇される事となったと考えることが出来る。
 かくして戦乱の世は、天帝と北斗神拳の力によって終結を迎えたわけだが、天帝がその後、再び皇帝となったのかといわれると、これはおそらくNOだろう。もし天帝が再び皇帝となったなら、その守護拳である北斗神拳もまたその力を天帝守護のため、存分に振るわなくてはならない。蒼天の拳の冒頭には、北斗神拳について「ただあまりに凄絶なその秘拳は、太平の世には死神の拳法として忌避され、今は伝説として語られるのみであった。」とある。つまり北斗神拳は、平和の到来と共にその役目を終え、人々の目から姿を消したのだ。ということは、天帝もまた歴史の表舞台から姿を消したのだと考えられる。戦国時代の終わりと共に、天帝は皇帝と別の道を歩むこととなったわけだ。蒼天の拳には清朝最後の皇帝である愛新覚羅溥儀が登場するが、彼のまわりに元斗の戦士が居ない事を考えても、この時代における皇帝が天帝とは違う事は明らかである。
 時は経ち、806年。空海の弟子によって北斗神拳が日本に伝えられた。はっきりとした記述は無いが、これを機に北斗神拳は日本で継承されていくことになったのだと思われる。伝承者が突然日本人に変わるタイミングとしては、ここが一番自然だ。しかし、おそらく天帝はその頃もまだ中国にいたはず。つまり北斗は、守護すべき天帝のいる国を離れたということになる。これはもう任務放棄と言わざるを得ない。実際、北斗や蒼天の中でも、基本的に北斗が天帝を守護していたのは過去の話であり、1900年代にはほぼ天帝の存在を無視している。北斗は何故、天帝守護から離れたのだろうか。明確にその答えは判らないが、おそらく私は、北斗神拳が強すぎた故ではないかと思う。北斗神拳はこの世に平安をもたらすために創始された拳。戦乱の世の終結に伴いその拳は役目を終えた。そしてあまりにも強すぎるその拳は、仏教徒達の手を離れ、いち拳法として一人歩きを始めたのではないだろうか。
 創成期の頃の南斗、元斗の動きが全くわからないため、いままで名前を出せずにいたのだが、この北斗の天帝離れを機にある程度その動きが予想できる。まず南斗もほぼ同時期に天帝守護から離れたはず。表裏一体であり、ライバル視する北斗に歩を揃えた可能性は高い。また、南斗は陰の北斗に対し、陽の拳である。天帝が歴史の表舞台から姿を消し、日影の存在となったため、陽の当たる場所を求めて天帝の傍から離れたという考え方も出来る。199X年前後には北斗神拳と切磋琢磨している事を考えると、南斗もまた日本にその舞台を移した可能性は高い。そして残された元斗は、実質上唯一の天帝守護の拳となった。ゆえに元斗は、あれだけ天帝と密接な関係になったのではないかと思われる。
 そして1900年代。北斗南斗が天帝守護から離れ1000年以上経過したこの時代、彼らの天帝観は大きく変化した。宗武の師、劉玄信は拳志郎の事をこう評している。「蒼天とは天帝のことじゃ。あの者はすでに煩悩を捨てておる。すべてを天に投げ出しておる・・・だから強い。あの者の頭上には常に蒼天がおわすのじゃ。それが北斗神拳の伝承者よ。」ここで玄信が語っている天帝というのは、完全に人間の事ではない。北斗にとって天帝とは文字通り"天"や"太陽"といったような偶像神のような存在となったのだろう。
 また、サウザーは「極星はひとつ。天に輝く天帝は南十字星。この聖帝サウザーの将星なのだ―っ!」と言っている。
アニメでは、リュウガの配下であるギュンターが「俺たちはリュウガ様が天帝に就く為にお仕えしてきた。」とも言っている。ここで彼らが言っている天帝というのは、いわゆる覇王の意である。上記の玄信の言う天帝とはまた別の意味だが、どちらにしても天帝の血脈の存在は完全に無視だ。
 彼ら以外の北斗南斗の動きを見ても、やはり一様に天帝は無視されている。リュウケンやトキ、シュウといったマトモな方々ですら、天帝のためにどうこうしようなどという動きは皆無。拳王様に至っては天帝の村へと攻め入った。一番天帝のポジションに近いだろうと思われる役目は、ユリアにとって代わられた。時代から必要とされなくなった天帝は、完全に過去の遺物と化したのだ。いまもどこかで暮らしている天帝の事など知る由も無かったのだろう。実際のところ、天帝の存在はどれくらい認知されていたのだろうか。
 劇中における北斗南斗で天帝の存在を知ってそうな人物は4人。まずはケンシロウだが、これは可也怪しい。知らなかった可能性のほうが高いだろう。次に拳王様だが、元斗には興味津々であったが、天帝は意に介さずな様子だった。知らなかった可能性も捨てきれない。天帝を孕ませたかったカイオウは、基本的に北斗南斗とは活動の場が違うために参考にはならない。注目されるのは物知りじいさんリハク。天帝が動いたと共に元斗の事を恐れ始めた辺り、可也詳しそうだ。しかし、彼の行動は逆に天帝が衰退してしまった事を証明してしまっている。199X年の核により世界は崩壊した。この時リハクは、1800年前に戦乱の世を治めた存在である天帝を頼るべきなのだ。しかし結局リハクが奔走したのは、北斗と南斗を出会わせるという、過去にあまり世を救った事例のない行為だった。今や天帝の力などなんのアテにもならないと思われていたのか。既に天帝一族は途絶えたのだと思われていたのか。ちらにしてもリハクからは全く頼りにはされていなかった事は事実である。
 199X年直後の天帝の状態が良くわかるのが、拳王様とファルコが対面したシーンである。拳王軍が訪れたのは、天帝の村の呼ばれる地であった。天帝の「村」ですよ「村」。城とか町とかじゃない、村。漢の時代には中国の王であったはずの天帝一族は、いまや一村を構える程度の存在にまでに落ちぶれていたのだ。天帝はもっと他の立派な所にいたのでは?と思われるかもしれないが、ファルコが足を切ってまで村人を守ろうとしたという事を考えると、ルイもその村にいたと考えるのが自然である。もし他に天帝がいる場所があったとして、この後拳王軍がそこに攻め込んだとしたら、ファルコはどうしていたのだろう。今度は左足もあげるから、もう一回見逃して〜んとでも言うのか。片足を差し出したと言うことは、拳法家としての生命を捨てた最終手段であり、それはファルコが最も守らねばならない人物・ルイが其処にいたという証拠である。リンとルイが生まれたのは宮殿のような場所であったが、あれは核で吹き飛んでしまったのだと思われる。
 天帝の名をサルベージし、再びこの世に知らしめたのがジャコウだった。ジャコウはルイを幽閉し、その立場を騙る事で天帝の名を地に落とした。が、この時の民衆の人々の反応を見ても、やはり天帝の事を良く知らなかったように思える。「このファルコ倒れればジャコウは天帝を殺し、全てを天帝の責として逃げ出すであろう。」とファルコも語るとおり、民は天帝が悪だと信じきっている。かつての天帝の過去の逸話を知っていたなら、もう少しこの圧政に疑問を持ってもいいはず。この辺りにも、現代の天帝の知名度の無さが伺える。
 しかしそれよりも悲惨なのは、元斗皇拳の男達ですら、天帝に対しての忠誠心が薄くなっていた事だ。そもそもルイを本気で守ろうと考えていた人物なんて、ファルコだけである。ショウキやソリアもファルコに惹かれて着いてきただけ。タイガやボルツなんてもっての外。ファルコの兵達もファルコのために動いていただけ。奴隷達に暖かい光を与えていたのもファルコであった。人々はファルコには魅力を感じても、天帝には見向きもしていなかったのである。
 ルイが助け出されてからもそうだ。幾人か生き残った兵達もいたが、結局ルイに膝をついたのはファルコだけだった。他の誰も平伏する様子などない。ああ、この人が天帝なんだ。意外と若いねフーンといった感じである。その後、北斗の軍のアジトに居たときも、海岸線の先を見つめるシーンでも、側近と思わしき人は誰一人いない。修羅の国編が終わった後にも、改めて天帝として世の統治に乗り出した様子も無い。きっと未だ全ての元凶は天帝にあったと勘違いしている民衆達の糾弾から逃れるため、どこかでひっそり暮らしているのだろう。
 以上が私の考える、天帝誕生から現世までの歴史である。結局のところその正体にあたる部分は私の想像によるところが大きいし、この辺りは今後の蒼天の展開で明らかになる可能性も無くはないので、これ以上は深くはつっこめない。が、徐々にその存在感が失われていったという点は否めないだろう。まあ第二次世界大戦や、199X年の核を引き起こした戦争にも、おそらく天帝の力は何も及んでいないのだろうから、そりゃ見限られても仕方ない。天帝が争いを治める救世主だなんてやっぱり伝説に過ぎなかったんだ・・・と、民衆は思ったんじゃないだろうか。だが、もし北斗が天帝守護から離脱していなければ、歴史は変わっていたかもしれない。暗殺拳である北斗神拳は、その時代を変えるほどの仕事をもこなす。北斗神拳の伝承者が天帝の勅命を受け、戦争の要因となっている要人達を暗殺していれば、世界は崩壊しなかったのかもしれない。天帝は、北斗を得て初めて機能するものなのかもしれない。
 結局のところ、天帝は単独でこの世を平定できるような能力者ではないのだろう。無論、過去には英雄だったわけだし、全くの凡夫という事もないのだろうが、残念ながらルイからはその英雄的器は全く感じられない。どちらかというと、その才が備わっているのはリンのほうな気がする。マミヤの村の長老に言わせれば、神がこの世に残した唯一の光がリンだという。そして、強いわけでも無い彼女が北斗の軍の真のリーダーであるということに、誰も異論は挟まなかった。それは彼女が生まれつき、人の上に立つ器を持つ人物だからであろう。奇しくもジャコウは、天帝としての能力に秀でた妹の方を殺すよう命じていたのだ。ジャコウの中の何かがそれを察知し、あえてその妹の方を殺すよう命じていたのだとしたら、それはそれで鋭いが。そういえば、天帝に対するファルコの執念は凄まじいものがあった。天帝を生かすためなら村長も南斗の伝承者達も殺す程の鬼神ぶり。それもこれも、かつて戦乱の世を治めたという天帝の能力を信じていたが故なのかも知れない。いくら世が乱れようとも、ルイ様さえ生きていれば平和は戻ると信じて、天帝の命を何よりも優先させていたんじゃなかろうか。しかし残念ながら、そんな奇跡は起こらなかった。むしろ世に平和が戻ったのは、北斗の軍が、リンが中央帝都に現れた時である。やはりリンが真の天帝だったのか。それとも二人が出会って初めて天帝としての力を発揮するのだろうか。ハッ!もしかして199X年、この世が核の炎に包まれたのは、この双子が生き別れたことによる天帝喪失が原因なのでは!?・・・まさかなぁ。
 
 
 天帝を語る上で欠かせないのは、天帝を主人公とした名作(迷作)北斗の拳5 天魔流星伝 哀☆絶章(SFC)である。北斗神拳が誕生したよりも更に昔、二千数百年前。世を支配する魔皇帝一族において、圧政を続ける長男に反抗する高僧たちが、その弟を新たな勢力の党首として選んだ。その男こそが、初代天帝であり、後に天帝の血筋に伝えられる事となる幻の秘拳・天帝拳の創設者であった。魔皇帝の使う魔皇拳に対抗するために編み出されその拳は、もともと魔皇拳と同じ拳であったが、愛と憎しみという別の心を糧としたことで袂を分かつ事となった。天帝の持つ愛が友の心を動かし、その友の心で天帝拳は更に強くなる。そして北斗 南斗 元斗の戦士達の力を得て初めてその拳は完成するのだそうだ。北斗伝説の服、南斗伝説の肩当て、元斗伝説のブーツを身に付けた時、天帝は全てを超える最強の戦士となるらしい。
 天帝誕生の逸話からその権威の秘密まで完璧である。これにて天帝の解説終了!東映動画に敬礼!・・・と行きたい所なのだが、残念ながら北斗の拳5全体のストーリーの奇天烈さ、フィクションさを考えると、この天帝拳の存在もまた北斗の拳5内だけの絵空事として考えておくべきだと思う。設定は面白いっちゃ面白いんだけどね・・・。それに天帝拳がそんな強い拳であるならば、別に北斗神拳が誕生しなくても天帝拳さえあれば世は乱れなかったはず。原作においては天帝を守る盾として君臨する北斗、南斗、元斗の三家が、このゲーム内においては天帝拳の源である友情パワーを増幅させるためのものに過ぎないというのも一寸。これでは原作で物語を盛り上げてきたその拳の拳士達があまりにも不憫である。というわけで、天帝拳は一旦封印。知らなかった方は、こういうのもあったと言う事だけ知っておくといいかもしれません。