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ジュウケイ



登場:第140〜142 259話
肩書:戦争孤児 後の北斗琉拳伝承者

 戦争孤児。戦争に巻き込まれて死んだ妹を弔うため、流飛燕の教会を訪問。祈りを済ませた後、妹を寂しがらせまいと自らも死のうとした。しかし羅龍盤の導きによって拳志郎に制止され、その胸の中で号泣。拳志郎より羅龍盤を託され、以降エリカと共に飛燕の下で養われることとなった。

 北斗の拳登場した北斗琉拳ジュウケイと同一人物。後に彼の手により、ラオウトキケンシロウの三人が日本へと送り込まれた。



 若リュウケン(羅門)が登場したときは、北斗ファンとして嬉しくはあったものの、特に驚きはなかった。北斗の家系に生まれ、そのまま北斗神拳を学ぶ。いずれ伝承者となる者としては至極普通の人生を送る、想定内の設定であったからだ。

 それに対してジュウケイは、かなり意外だった。まず戦争孤児ってところが意外。北斗宗家の一族と全然関係なかったんかいっていうね。北斗であんだけ宗家が〜宗家が〜と口にする宗家右翼野郎だったので、てっきり生まれたときから北斗宗家に仕える立場だったと思っていたよ。それに彼、北斗神拳を憎んで魔界に入ってたでしょ。あれもカイオウみたいに、幼い頃から宗家ソウケ言われてたから反抗心で憎悪に変わったのかと思ってたんですけど、そういうわけでもないようだ。

 ジュウケイが北斗と結びついた切欠・・・即ち彼が北斗琉拳(北斗劉家拳)を学ぶことになったのには、どういう経緯があったのだろうか。あの時代に北斗劉家拳を修得していたのは、伝承者の劉宗武だけだろうから、普通に考えるならジュウケイが宗武に弟子入りしたということになる。宗武が文麗の死後に新たな妻を娶るとは考えにくく、宗武としても優秀な後継者は是非欲しかった所だろう。そこで相談を受けた拳志郎が、羅龍盤に導かれた少年であるジュウケイを推したとしても不思議ではない。

 しかしそんな成り行きで劉家拳を学ぶ事になった者が、宗家だの始祖の拳だのに感情を揺さぶられて魔界に入るだろうか。考えられる理由は、あるにはある。それは、彼がとてつもなく"ヒマ"だったということだ。孤児であり、妹も死に、住む家も何も無かったジュウケイ少年。そんな彼が、一気に拳法修行にのめり込んでいったであろう事は想像に難くない。だが、目的も無いまま拳法へのモチベーションばかり上げれば、行き着くところは一つ。死合う相手を求めて彷徨う拳法ジャンキーである。北斗劉家拳という強力無比な拳法を極めてしまえば、もはや戦うべき相手は一つしかない。そう、北斗神拳だ。北斗に縁無き生まれであっても、拳を極めれば最終的には北斗神拳を標的にせざるを得ないのである。

 しかし、ただ「強い相手」というだけで北斗神拳を追い求めたのなら、それは宗武や狂雲と一緒。ジュウケイが魔界に入る理由にはならない。だが彼には、それ以外にも北斗神拳に対して特別な感情を抱いていた可能性がある。それは妹の死だ。彼女は日本軍の爆撃によって命を失った。彼にとって日本は憎むべき存在なのだ。そして今、その日本で北斗神拳が伝承され続けている。日本国への憎悪が、やがて標的である北斗神拳へも侵食し、強さへの欲求と妹の復讐という意識のハイブリッドが彼を魔界へと引き込んだのではないだろうか。


 妹が死んだとき、ジュウケイの涙をその胸で受け止めてくれたのは、拳志郎あった。そしてその数十年後、そんな大恩ある人物が伝承する拳法に対し、彼は大きな憎しみを抱くことになった。切欠が妹の死という私の妄想は置いておくとして、その感情の変化を加速させたのが、北斗琉拳の魔の部分であることは間違いないだろう。だが拳法の責任にするのはお門違いだ。何故なら宗武の使う北斗劉家拳は、不動明王の結界まで発動するほど神域に達しており、そこには魔の要素など何も無かった。それほどの拳をたった一代で魔拳へと貶めたのは、やはりジュウケイ自身の罪過だと言わざるを得ない。お前、ほんとに何した。炯々爛々たる瞳の君は何処へ行った。