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砂蜘蛛修羅



登場:原作(163〜164話)TVアニメ版(123〜124話)
肩書:名も無き修羅
流派:修羅忍道
CV:松田重治(TVアニメ版)
   貞広高志(真北斗無双)
   内野孝聡(リバイブ)

 名を許されていない修羅の一人。修羅の国に上陸してきたファルコを侵入者として襲撃。相手の義足が外れるとアクシデントも味方し、致命傷を負わせた。

 その後、続いて現れたケンシロウと対峙し、ファルコの仇をとらんとするケンと対決。しかしその最中、再び義足をつけ立ち上がってきたファルコが再戦を望んできたため、刹活孔により蘇ったファルコと再び戦うことに。得意の棍を切断されてしまったため、秘法拳・修羅忍道破魔砂蜘蛛を使い、地中へ。そのまま間合いへと入らんとするが、地表を凍結させられたことで居場所を知られ、更に砂地を熱砂へと変えられた事でたまらず外へ。そのまま上空から毒蜘蛛手刀滅把妖牙を繰り出し、ファルコの手のひらを貫くが、その瞬間に黄光刹斬で胴体を真っ二つにされて敗北。この先には自分より強い、名を許された修羅達が待っていると告げながら死亡した。

 数年前には、修羅の国に攻め込んできた赤鯱100人の部下を、15歳にも満たぬ年齢ながら、たった一人で撃退。その際に赤鯱の右目と右手を奪った。


 TVアニメ版では、ファルコとの闘いの模様が回想で描かれ、忍棍妖破陣で優位に戦いを進め、義足が取れた後は一方的にしこたま棍で殴り続けた。
 また、忍棍妖破陣は原作ではケンに切断されたが、アニメではファルコとの再戦で切られた。





修羅の国の強大さをインパクトつけるために登場させられた彼だが、正直誰の目から見てもやりすぎ感は否めないだろう。実際彼をピークに、その後の修羅のデフレ具合は凄まじかった。ファルコに勝てたのは運の要素も大きいが、刹活孔後も十分に善戦していることを考えても、相当な強さであると言わざるを得ない。私的な見解でいうなら、カイゼルやシャチよりも実力が上だと判断されてもおかしくない。それくらい彼は強い。千手魔破に忍棍妖破陣、修羅忍道破魔砂蜘蛛、毒蜘蛛手刀滅把妖牙と、短期間で4つの奥義を繰り出した点も魅力的だ。

 だが彼が言うには、「名を許された修羅達」は彼より遥かに強いのだという。果たしてこれは本当なのだろうか。

 かつてこの砂蜘蛛修羅は、15歳にも満たない年齢で、赤鯱を含む100人の兵を一人で叩き潰した。しかしアニメでは、陸に乗り込んできた赤鯱が、カイオウ配下の修羅達の部隊長とタイマン勝負をし、勝利している。さすがに部隊長ともなれば名前の一つくらいもっているはず。このことから、名前の有無や立場による強さ付けは決して正確なものではないことが判る。

 よくよく考えると、強かったのは砂蜘蛛だけではない。入国して直ぐに出会った修羅達は、気配を消してファルコの間合いに入ってきたり、アニメでは元斗皇拳の使い手であるタイガ達をボロクズにしたりしていた。彼らも国内のそのへんの修羅達よりも遥かに強いように思える。なぜこの一帯の修羅達だけ異常な強さを誇っているのだろうか。

 私が思うに、海岸警備の部隊は、かなり強い修羅達によって構成されていたのではないかと思う。死の海を渡ってくるという時点で侵入者は皆一様に腕に自信を持つ実力者である可能性は高く、並の修羅達では敗北しかねない。故に、海岸警備は特に強化すべき部隊でなくてはならないのだ。


 その強化に至った原因は、おそらく拳王軍の存在だろう。赤鯱の目の喪失などから時代の流れを考えると

@拳王様修羅の国上陸し、カイオウに宣戦布告
A拳王様二度目の渡航自重。シャチ、拳王様に頭なでてもらう(赤鯱目あり)
B赤鯱修羅の国上陸。砂蜘蛛に圧倒される(赤鯱目失う)
Cレイナ修羅の国へ帰る(赤鯱目なし)

という順序になる。この@の拳王軍上陸の際、修羅の国は壊滅的な被害を受けたのではないかと思う。それを受けて、修羅の国は海岸警備の強化を決定。そこで選ばれたのが、砂蜘蛛を含むエリート少年達だったのだ。


 しかしそんなエリートのくせに、何故砂蜘蛛君は、「名前を持つ修羅は自分よりも強い」などと口走ったのだろうか。おそらくそれは、彼が名前のある修羅と手合わせをしたことはおろか、ろくに戦いも目にしていないからだと思われる。
 修羅の国には12歳になると同時に修羅を目指すという掟がある。そして15歳までに100回の死闘を行い、生き残った者だけが生を許されるのだという。砂蜘蛛もこの100人抜きを行い、生き延びたのだろう。しかし、ここで言われている100人というのは同年代の子供達、つまり12〜15歳の修練生達であったと思われる。要するに、中学生の部という事だ。ここで生き残ってはじめて一人前の修羅と呼ばれるようになり、次の高等部か、もしくはもうオトナの部へと進むわけだ。砂蜘蛛も本来ならそのコースを進むはずだったが、中等部での強さが余りにも飛びぬけていたため、15歳未満という年齢でエリートである海岸警備へと配属された。しかしそれ故に、本来ならその後に行われるオトナの修羅達とのバトルを経験することが出来なかった。そのため、自分はエリートではあるが、名を許された修羅達という者達がどれくらいのものなのか、全く知らないまま海岸警備で青春時代をすごしてしまったのである。故に彼は、既に自分が郡将クラスの力を持っているにも関わらず、名前を持つ修羅達というものに過度の尊敬の念を抱いて生きてきたのである。

 それでも国内の修羅達と関わりを持っていれば、いずれ自分の強さに気付きそうなものだが、どうもこの海岸警備部隊は、他の国内の修羅達と一枚壁をはさみ、孤立しているような感がある。最初に侵入者と相対する見張り番であるはずなのに、国内と綿密な連携がとれていないようなのだ。
 その理由として挙げられるのが、カイゼルがアルフに対して言った「下級の修羅が一人、七つの傷を持つ男によって倒された。」との台詞だ。ここで言われている「下級の修羅」は、砂蜘蛛君のことだと思われがちだが、実はそうではではない。まず砂蜘蛛を倒したのはケンシロウではないし、更にケンシロウは砂蜘蛛の前で七つの傷を見せていない。全く別の修羅の話なのである。そして同時にそれは、砂蜘蛛君が敗れたという一報が、カイゼルのもとへ届いていないことを意味する。超エリートである砂蜘蛛を倒すような輩が侵入してきたと知っていたなら、カイゼルはもっとそれ相応の措置をとっていたはず。アルフを差し向ければそれで大丈夫だと踏んだその対応の甘さこそが、カイゼルと砂蜘蛛ら沿岸警備隊とが連絡をとりあえていないことの証明であり、イコール砂蜘蛛が自分よりもヘボい国内の修羅達への尊敬の念を抱き続けていた理由なのである。

 おそらくこの海岸警備部隊も、最初は対拳王軍のために設置された部隊として、敵の侵入などがあれば即刻連絡を取れるような体制をとっていたのだと思われる。しかし拳王が死んでしまったため、カイオウはその脅威を喪失。以降は一々侵入者があるたびに連絡を受けるのもうざったいと考え、今後は侵入者があっても連絡は不要、敵を見つけたら各自の判断で殲滅せよと命令を下した。これによ海岸警備隊は国内の組織とは関係をもたない別働隊と化し、砂蜘蛛は己の実力を他者と比べる機会を永遠に失ったのである。彼等は、拳王の死によりその任務の大半を失った、力を持て余したエリート集団、修羅制度の遺物が生み出した亡霊なのである。