
バット達は、死の海の彼方を眺めていた。戦いの非情な掟が支配する魔界、修羅の国。その地獄からリンを救い出すことは、ケンやファルコの力をもってしても容易ではないだろうとリハクは語る。生まれてから今まで、そしてこれから先もリンの前に広がっているのは苦難の道。妹リンにばかり訪れるその不遇の運命をルイは憂う。だが、バットは信じていた。リンはいつもそんな境遇を潜り抜けてきたこと。そしてその影には、いつもケンの力があったことを・・・
刹活孔により蘇ったファルコと修羅の死闘が幕をあげた。先程の戦いでもファルコを苦しめた棍術、忍棍妖破陣にて戦いを優位に進める修羅であったが、宙で交錯した一瞬の間に棍は細切れに。ファルコが久々に血を滾らせる実力者であることを認めた修羅は、秘法拳を使うことを決めた。怪しげな呪文を唱えだした修羅は、その場に蜘蛛のように屈んだかと思うと、独楽のように回りだし、砂煙と共に姿を消し去ってしまった。修羅忍道破魔砂蜘蛛。千手魔破と同じように、今度は自らが砂中に潜る事によって姿を隠し、不意打ちを仕掛けようと考えたのである。しかし身を潜めても、間合いに入らねば倒せないのが道理。その動きを知るためにファルコが使ったのは、元斗皇拳奥義滅凍黄凄陣という奥義であった。両手から放つ闘気が地に触れると、砂地はみるみるうちに凍結。周りの地面を凍らせることにより、敵の接近を感知できるよう罠をはったのである。しばしの静寂の後、ファルコの右前方の氷にヒビが走る。その次の瞬間、ファルコは攻めへと転じた。ひび割れた場所に手を突き入れたファルコは、今度は高熱を発する闘気を放出。熱砂へと変わったその砂地は、もはや身を隠せる場所ではなくなっていた。たまらず飛び出した修羅は、そのまま毒蜘蛛手刀
滅把妖牙を繰り出し、ファルコへと落下。迎え撃つ元斗猛天掌を修羅の手刀に貫かれてしまうファルコであったが、既にそこは必殺の間合いに入っていた。元斗皇拳秘奥義
黄光切斬。金色の光を放ちながら修羅を襲ったその手刀は、彼の胸から上下を真っ二つに切り裂いていた。これより先には俺よりはるかに強い、名を許された修羅たちが待っている。そう言い残し、その身を二つに分断する砂蜘蛛修羅。だが、勝ったファルコの体にも、もはや死期は目前にまで迫っていた・・・
122戦して105人を2分以内に倒した男。かたや155人を全て3分以内に倒した男。闘技場で闘う2人は、いずれも名を許されて恥じない強さを持つ修羅であった。だが、戦いは一方的なものとなった。宙からの攻撃を迎撃されたかに見えた修羅は、いつの間にか相手の影の中へと潜み、背後をとることに成功。そのまま相手の足首を掴んで放り投げ、二人は空中で激しく交錯。勝ったのは、122戦中105人を2分以内に倒した男のほうであった。彼はわざと強い相手を選び闘ってきた。2分以内に倒さなかったのは、倒す価値もないと判断したからだったのである。敗北した修羅は、自らに止めを刺すよう指示。勝利した修羅は、一撃で男の体を貫き、その手についた血を自らの胸に線引いた。愛羅承魂。それは、倒した相手の血を自らの血の中に取り込み、その男の血と傷で己が更に強くなったことを意味する修羅の国の儀式であった。この国では、死は相手の血の一部となって蘇ることを意味していた。
沈み行く夕日を見ながら、ケンとファルコは別れの時を迎えようとしていた。自らの死によって伝承者を失った元斗皇拳の歴史が潰えること、そしてリンを救い出せなかった無念の気持ちが、ファルコを涙させる。だがそのとき、一羽の鳥が水平線の向こうから現れた。それは、元斗の伝書鳩であった。備え付けてあったその手紙を、ファルコの眼前へと差し出すケン。霞み行くその目が捉えた手紙の内容に、ファルコは驚愕した。なんとミュウの中に、己の子供が宿っているというのである。その子がきっと立派な伝承者となり、元斗皇拳の歴史を守っていくだろう。死にいくファルコの願いは、最後に叶えられたのだった。手紙の返事として、元斗の紋章が刻まれた胴着のボタンを鳩の筒へと入れたファルコは、鳩が再び水平線へと消えていくのをじっと見つめていた。そしてその姿が見えなくなった頃、ファルコはゆっくりと瞳を閉じ、拳士としての生涯を終えたのであった。その愛する者の死を感じたのか、遥か対岸で待つミュウの目にも、涙が伝っていた。| [漫画版との違い] ・リハク、バット、ルイ、ミュウが、海岸でケン達を心配するシーン追加 ・望遠鏡で見ていた赤鯱が、砂蜘蛛修羅見るシーン削除 ・千手魔破は、原作ではケンに忍棍妖破陣を破られた後だが、アニメでは最初。 ・忍棍妖破陣は、原作ではケンに破られるが、アニメでは使用せず。代わりにファルコに対して使用。 ・それに伴い、棍を切断するのがケンシロウからファルコに変更。 ・ファルコvs砂蜘蛛の初戦で、ファルコの足がとれてやられるまでのシーン追加 ・黄光刹斬の名を言うのが、技使用後から、技使用中に変更。 ・原作ではファルコの死を感じて目覚めるが、アニメでは接近するボロの気配を感じてに変更。 ・アルフvs155戦の修羅の戦いにいくつか場面が追加 ・伝書鳩の手紙を、原作では最初にファルコが読むが、アニメではケンが読んでから渡すに変更。 ・原作のファルコは目を開けたまま死ぬが、アニメでは閉じる。 ・対岸にいるミュウが涙を流すシーン追加。 |
|
| 第123話へ≪ | ≫第125話へ |