ストーリー | キャラクター | 流派・奥義 |
南斗聖闘殿―――。南斗の拳士達にとっての聖地であるその地が、ロフウが選んだ決着の場所であった。既にそこには、二人の闘いを見届けんと、数多くの拳士達が集まってきていた。聖帝、KING、ユダ、南斗最後の将、そして拳王―――。その横には、今や拳王に忠誠を誓った、あのカレンの姿もあった。愛と情けを背負い、皆のために拳を振るうレイ。怒りを拳の真髄とし、己のために拳を振るうロフウ。対極の二つの南斗水鳥拳が、いま決着の時を迎えようとしていた。 拳を教えた男と、拳を教わった男。互いに相手の拳を熟知しているはずの闘いであったが、その主導権をとったのはロフウであった。怒り、憎しみ、執念・・・レイには教えていないその闘いの精神が、ロフウの拳を高まらせていたのである。だが、ロフウの放った一言は、一瞬にしてレイを同じステージへと登らせた。七つの傷の男を使い、村を襲わせたのはワシだ―――。父と母の仇。そしてアイリを不幸に陥れた全ての元凶。それがロフウである事を知った時、レイの拳からは華麗さが失われた。それは、ロフウと同じ、怒りを糧とした剛の南斗水鳥拳の姿であった。 ぶつかり合う二つの剛の水鳥拳。周囲すべてのものを破壊するその凄まじい闘いは、見る者におぞましさすら感じさる程であった。だが、その怒りをもってしても、レイはロフウを超えることは出来なかった。動けなくなったレイに向け、ロフウの止めの一撃が振り下ろされる。だがその時、ロフウの脚に傷みが走った。レイの危機を救わんと、ユウがロフウの脚に短剣を突き刺したのである。怒れるロフウがユウをその手にかけんとしたその時―――、駆け抜けた影がロフウの背を切り裂き、ユウを救った。それは、かつてリンレイがレイに告げた、義星の力・・・・。己のためではなく、誰かのために生きるときに力を発揮するという、レイの南斗水鳥拳であった。 取りもどした本来の水鳥拳で、ロフウと互角に渡り合うレイ。しかしロフウは、その源であるリンレイの拳も打ち破っていた。かつてリンレイと立ち合った際、その華麗な拳の前に、ロフウの拳は悉くかわされた。しかしリンレイが情けを出し、そしてロフウが拳に怒りを宿らせた時、ロフウの拳はリンレイの身体を貫いていた。その時、ロフウは悟った。リンレイを敗北せしめたのは愛・・・。技を曇らせる愛などというものは、拳には不要なものであると。しかし、ユウはその考えを否定した。ロフウとリンレイ、二人の拳を高めたのは、互いの愛。そしてロフウがリンレイに勝てなかったのも、彼女を愛していたからだ―――。その言葉を、ロフウは信じるわけにはいかなかった。だが、ロフウは気付いていなかった。ロフウが追い求めた強さ・・・それはまさにリンレイの拳であったことを。そして今、数々の人々と出会い、義星の宿命に目覚めたことで、レイの南斗水鳥拳は師である二人の拳を超えようとしていた。 闘いの結果を予見した観戦者たちが、次々にその場を後にする中、二人の死闘は佳境を迎えていた。跳躍したレイに向かい、ロフウが放った最後の奥義・・・それは相討ちを狙う究極奥義、断己相殺拳であった。宙で逃げ場を失ったレイに、ロフウの渾身の拳が迫る。しかしその時、奇跡が起こった。宙空に手をつき、レイの体が再び空高く舞い上がったのである。その美しき水鳥と化した姿に心奪われたロフウは、次の瞬間、レイの二本の手に切り裂かれていた。南斗水鳥拳究極奥義、飛翔白麗。それはかつてリンレイすら使いこなせなかったという、伝説の奥義であった。 決着後、エバの死について問われたロフウは、あの日の夜のことについて語り始めた。 リンレイを殺した後、覇道へと乗り出したロフウは、アスガルズルの支配を目論んだ。エバはその野望に気付きながらも、ロフウを街へと迎え入れた。何故なら彼女は、いつかロフウが「最も強き南斗の男」に倒される未来を予見していたのである。そしてあの日、ロフウがエバの寝室で見たのは、眠れるレイの姿であった。ひよっこのレイが己を倒せるはずは無い。ましてやレイと己が闘う理由が無い。そう語るロフウに対し、エバは己を殺すよう命じた。エバは、レイにこの世を照らす光を見ていた。その者に道を示すため、エバは自らの命を捨てる事を選んだのである。そしてもうひとつ、彼女にそう決意させたのは、ユウの存在があったからであった。ユウが自らの意志を継ぎ、アスガルズルの未来を創っていってくれるであろうことを、エバは信じていたのだった。 アイリをさらわせたというロフウの言葉は、レイを怒らせるための方便であった。すべてはレイに真の力を引き出させるため・・・その意味を、ロフウ自信、今初めて悟っていた。己やリンレイ、そしてエバが託した、南斗水鳥拳の義の星の力。その拳の伝承者を、大きく羽ばたかせるため、ロフウはレイとの闘いを望んでいたのであった。もはや悔いは無い。師である己達を超え、遥かなる高みに登った男と闘えた事に満足しながら、ロフウはその生涯に幕を閉じたのであった。 アスガルズルでは、レイとユウの帰りを待つ者達で溢れかえっていた。しかし、二人の旅は終わりの時を迎えようとしていた。女として幸せを求めるんだ―――。そう言い残し、レイは再び荒野へと戻っていった。妹アイリを探し出すため・・・そして、義星の宿命と共に生きるために・・・。 |
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