ストーリー | キャラクター | 流派・奥義 |
リマの登場に沸き起こったのは、用心棒達からの非難の声であった。リマ不在の間、用心棒達の指揮を執ってくれていたザンを、あろうことか不意打ちで殴りつけたそのリマの行動に怒りを覚えたのである。だがそんな彼らに対し、リマの側近であるランはこう言い放った。ザンはこの街の支配を狙う軍閥と内通している裏切り者だ―――と。そしてその軍閥は、もう街のすぐ傍にまで迫って来ていた。彼らの名はUD軍。あの南斗紅鶴拳のユダ率いる、1000人からなる大軍団であった。 ユダ軍の襲撃に備え、一斉に門の防備に走る街人達。だがそんな中、リマはレイへと戦いを申し込んで来た。先ほどのザンとの戦いで見せたレイの強さに、リマは格闘家としての血を抑えきれなくなっていたのである。ユウを手込めにしようとする事でレイの敵意を買うというふざけた性格を持つリマであったが、その強さは本物であった。水鳥拳の斬撃を悉く躱すスピード。ガードの上から骨を砕く拳の破壊力。人間を超越したその身体能力は、彼が使うただの我流拳を、驚異の殺人拳へと変貌させていた。だがリマの脅威はそれだけではなかった。致命傷となるほどに深く切り込まれた傷を、リマは戦いの中で完全に塞いでしまったのである。ヒトが造りし、ヒトを模した怪物―――。ランは、自らの主をそう評した。 あの忌まわしき最終決戦の前・・・。紛争が相次ぐ世界では、各国で新たな兵器の開発が行われていた。そんな中、某国では、人間そのものを兵器と化すという人体実験が行われていた。薬物投与、人体機械化、遺伝子操作・・・。様々な実験の果てに生み出された最高傑作”怪物(フェノメーノ)”。それが人間兵器、リマの正体であった。 自らの身体を貫かせる事で動きを封じ、強烈な一撃を叩き込む。そんな常識ではあり得ないリマの攻撃の前に、劣勢に追い込まれてゆくレイ。だがそのとき、城壁を破って一人の男が姿を現した。仮面で顔を半分隠してはいたが、それは紛れもなく、レイの師ロフウの姿に間違いはなかった。だが、ロフウに因縁があるのはリマも同じであった。かつてリマはロフウに闘いを挑み、惨敗を喫していたのである。リマの背に刻まれたその時の傷跡・・・。それはまさに、あのエバを死に至らしめた南斗水鳥拳の傷口と同じものであった。エバを殺したのは貴方か。そのレイの問いに対し、ロフウは臆面もなく回答した。「左様」と。 一触即発の空気が三人を包み込む。だがそんな彼らの下へ、緊急の報せが入れられた。捕えていたザンが逃亡し、ユダのために城門を開け放ったというのである。ザンからの狼煙を合図に、一気にアスガルズルへと向けて進軍を開始するUD軍。だがその行く手を阻んだのは、この街の"支配者"であるロフウであった。千人対一人。無謀な闘いを挑んできたロフウに、UD軍から嘲笑が沸き起こる。しかしその笑いは、すぐに悲鳴へと変わった。一振りで数十人の身体を分断する、圧倒的なロフウの剛拳―――。数刻後、戦場には千人の死骸の山だけが残されていた。完全に戦意を喪失したユダに対し、ロフウは言った。サウザーに伝えよ。近くこのワシが南斗の頂点に立つ―――と。レイにとって、かつての師であるその男は、今やこの世の覇権を目指す一人の狂人へと変わり果てていた。 |
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