ストーリー | キャラクター | 流派・奥義 |
とある街で自由を謳歌するジュウザの前に、突如謎の軍団が現れた。その軍の先頭にいたのは、ジュウザと同じ南斗五車星に属する二人、風のヒューイと炎のシュレンであった。彼等に与えられた使命……それは、ジュウザを将の下に連れ戻す事であった。拳王軍との決戦を目前に控えた彼等にとって、天才と呼ばれるジュウザの力は必要不可欠だったのである。だが彼等の説得も、そして二人が協力して放った奥義も、ジュウザの前では通用しなかった。顔すら知らぬ将にも、世の行く末を決める戦いも、ジュウザには何一つ興味はなかった。 ジュウザの中に刻まれている最初の記憶―――。それは、娼館の中に立ち込める女達の匂いであった。生まれながらにして両親がいなかったジュウザは、母の妹と名乗る娼婦によって育てられていた。だがある日、彼の人生に大きな転機が訪れた。ジュウザの腹にある五車星の痣……。それは、南斗の将を守る宿命を背負った『南斗五車星』の証だったのである。噂を聞きつけた使者により、海のリハクのもとへと連れていかれたジュウザは、同じ境遇のヒューイ、シュレン、フドウと共に、厳しい修行の日々を過ごす事となったのだった。 持ち前の天賦の才により、ジュウザの実力は目を見張る速度で伸びていった。だがそれとは裏腹に、彼の中のやる気は日毎に失われつつあった。顔も知らぬ"将"のために何故こんな事をしなくてはならないのか―――。納得のいかぬ理由で、"宿命"という名の鎖に縛り付けようとする南斗のやり方に嫌気が差したジュウザは、遂に修練場から脱走してしまう。しかし、山中で一人生き延びていくには、ジュウザはあまりにも幼かった。毒を食して倒れたジュウザは、南斗の者達によって助けられ、再び修練場へと戻されてしまったのだった。 毒は抜けたものの、ジュウザの身体は日に日に衰弱していった。南斗の施しは受けない。そう言ってジュウザは、彼等の出す食事に口を付けようとしなかったのだ。だがそんな時、ジュウザの前に一人の少女が現れた。ジュウザが食べないなら私も食べない。そう言って少女は、ジュウザと共に断食を始めたのである。そして5日後……少女の覚悟に負けたジュウザは、彼女を助けるため、遂に食べ物を口にしたのだった。その少女―――ユリアの慈愛に触れたジュウザは、心に誓った。俺は一生この女を守り抜いてみせると。同時にジュウザは、その力を他の誰のために使わないことを決めた。例えそれが、自らの宿命である『将』を守るためだとしても―――。 ヒューイらの呼び止めに応じることなく、再び荒野へと足を踏み入れるジュウザ。だがその時、彼等の前に瀕死の老人が現れた。その身体に残された、抉り取られたかのような傷跡―――、その拳、泰山天狼拳の使い手を、一同は知っていた。男の名はリュウガ。ユリアの実の兄にして、ジュウザの母違いの兄であった。 己とユリアが異母兄妹であることを知らされたあの日―――。ヤケを起こし、暴れたジュウザは、牢獄の中へと閉じ込められていた。だがそんなジュウザを救い出してくれたのは、リュウガであった。雲は留まれば雨となって散る。雲は雲のままに高みを目指し、駆け上がれ―――。そう言ってリュウガは、全ての追っ手を引き受け、ジュウザを外の世界へと逃がしたのだった。ジュウザにとっては大恩のある優しき兄……。だがそれは、もはや過去のものであった。今やリュウガは、拳王軍の配下となり、残虐非道の将としてその名を轟かせていたのだった。 本当に兄は変わってしまったのか―――。ジュウザのその疑問は、すぐに明らかになった。一同の前に姿を現した天狼星・リュウガの眼は、明らかに昔とは違う、冷酷な光を携えていた。拳王に逆らう者には死あるのみ。そう言って、ジュウザ達に容赦ない攻撃を仕掛けるリュウガ。凍気を纏ったその鋭い技の前に、ヒューイ、シュレン、そして動揺するジュウザも、為す術なく吹き飛ばされてしまう。全てはこの乱世を終わらせるため……。自らが変わった理由を、リュウガはそう語った。暴力が支配するこの世は、絶対的な強者による支配でなければ治まらない。リュウガの目が見た、時代の巨木になり得る男……それは、ラオウ以外にありえなかったのである。だがジュウザは、その兄の結論に異を唱えた。たとえ世が治まっても、恐怖に怯える人間しかいないその世界は、ジュウザにとって"気に入らない"世界である事に変わりは無かった。 凄まじい闘気を放ちながら、互いの本気の拳をぶつけ合う二人。ジュウザが変幻自在の我流拳で翻弄すれば、リュウガは天狼拳の凄まじい破壊力でそれに立ち向かう。だがその時、不測の事態が起こった。激しい戦いで崩れた建物の瓦礫が、子供の頭上に落ちてきたのである。だがその瓦礫は、ジュウザが飛び込むよりも早く、リュウガの奥義によって粉々に打ち砕かれた。それは、未だリュウガが優しさを失っていないという証……。罪無き人間を殺しながらも、天狼はその心の中で血の涙を流し続けていたのだった。再び相見えたときは必ず命を貰う。そう言い残し、去っていく兄の姿を、ジュウザはただ見送る事しかできなかった。 |
|