ストーリー | キャラクター | 流派・奥義 |
目的のカサンドラの場所もわからぬまま、旅を続けるジュウザ。その道中、山道で熊に襲われたジュウザは、あるモノを守ろうとして崖下へと転落してしまう。それは、かつてユリアに渡すはずだった婚約指輪であった。だがジュウザは、結局その指輪を渡す事はできなかった。それは、己とユリアが母違いの兄妹であるという事実を知ってしまったからであった。全てを失ったジュウザは、心を捨て、無頼に走る生き方を選んだ。だがそんなジュウザを再び動かしたのは、ユリアが死んだとの悲報であった。ユリアの心を射止めたにも関わらず、彼女を守りきれなかった男、ケンシロウ。その男に会い、殴り飛ばすことが、ジュウザが旅を続ける理由であった。 傷を負い、雪山で遭難しかかっていたジュウザは、とある村人たちによって命を救われた。介抱した少女の名はニーナ。この村で看護の仕事をしている女であった。人々の顔に笑顔が絶えぬこの村は、一見幸せそうに見えた。しかし、拳王軍に統治され、外と隔離されたこの地に、ジュウザは自由を感じる事はできなかった。 その時、村の中から少女の叫び声が響いた。駆けつけたジュウザが見たのは、二人の子供を引き離そうとする大人たちの姿であった。その少女―――アリサは語った。この村には、拉致されてきた子供達が監禁されている。今連れて行かれようとしているジャンも、そこに閉じ込められていた一人なのだと。勿論その所業は、この地を統治する拳王軍によるものに他ならなかった。 かつてラオウはジュウザに語った。無に戻ったこの世界で、俺は天を握る―――。そして今、拳王と名をかえたその男の野望は、実現しつつあった。だが今目の前にあるのは、泣き叫ぶ子供、残虐な兵士達、それにへつらう大人達―――。これがラオウが目指した世界であるならば、ジュウザは断じてそれを認めるわけにはいかなかった。 逃亡するジャンに手を差し伸べてきたのは、あのニーナであった。だが彼女は、突如ジャンを捕らえ、その首元に刃を押し当てた。彼女―――、否、その"男"の本名はヨナ。拳王軍の総司令官を務める男であった。ジュウザをこの村に誘い込んだのも、全てはヨナの思惑であった。颯爽と現れたジュウザというヒーローを、あっさりと死なせる事で、村人達が抱いた希望を一瞬にして打ち砕く―――。それがヨナが描いたシナリオだったのである。だがジュウザは、その意味の無いヨナの行為に、彼の過去に隠された哀しみを見ていた。 毒の刃を受け、気を失ったジュウザは、村の地下にある闘技場へと連れてこられていた。ヨナは、各地で捕らえた子供達をここで戦わせ、それを闇賭博の見世物としていたのである。そして今、その闘技場に立たされていたのは、ジャンとアリサであった。生き残るために子供達は殺しあい、大人達はそれを笑いながら観戦する。そんな人間の醜さを見ることが、今のヨナの唯一の快楽なのであった。 かつてジュウザは、サウザーより言われた。無駄な希望を与える事は罪だと。己がアリサやジャンを助けたのは、人々に希望を与えるためだったのか―――。それはジュウザ自身にもわからなかった。ただ、人々の希望を弄ぶヨナの思惑通りになるつもりは無かった。 かつてはヨナも、父シュナを慕う純粋な子供であった。だが旅の末に辿り着いた街でヨナを待っていたのは、男娼として食料を稼ぎ、父を食わせていくという生活であった。そんな日々の中、突如連行された二人は、闘技場で殺し合えとの命令を下される。こんな世界に未練はない―――。そう言って死を受け入れるヨナであったが、先に命を絶ったのは父シュナのほうであった。誰もいなくなった今、この絶望の世界でどう生きていけばいいのか。ヨナが選んだのは、拳王軍に入り、権力を手に入れるという生き方であった。絶望ではない"違う景色"を見るために―――。 ジュウザの制止も虚しく、非情の戦いの鐘は鳴らされた。催眠術にかけられ、容赦なくアリサに刃を振るうジャン。だが傷を負った彼女の姿に正気を取り戻したジャンは、自らに刃を突き刺し、この戦いの幕を閉じた。お前がアリサを守ったんだ―――。そのジュウザの言葉を聞いたジャンは、笑顔を浮かべながら、静かに眠りについたのだった。 ジャンの亡骸を抱え、闘技場を後にしようとするジュウザ。勝手をさせまいとヨナは部下を嗾けるが、ジュウザの強さは彼の予想を遥かに超えていた。一撃で数十人の敵を薙ぎ払うジュウザの力を目にし、一目散に逃亡をはかる拳王軍。その混乱の中、ジャンの仇をうたんとヨナに刃を向けるアリサであったが、それを止めたのはジュウザであった。人が傷つけられるという事は、誰かが悲しむという事。それは、かつてユリアがジュウザに言った言葉であった。 ジュウザとアリサは、村が見下ろせる丘の上にジャンを埋葬することを決めた。抗い続けるヨナは、村人達にそれをやめさせるよう命じるが、もはや彼の言う事を聞くものは誰もいなかった。自分は一体何がしたかったのか―――。その答えを見つけられぬまま、ヨナは自らの命を絶とうとする。だが、今度はアリサがそれを制止した。彼女には、まだヨナを許すことは出来なかった。だからこそ、自分がその罪を許せるその日まで、ヨナに生き続けてもらわねばならなかったのだった。 ジュウザの後始末により、地下に捕われていた子供達は全て解放された。己たちを助けてくれたその男に、屈託の無い笑顔を見せる子供達。その瞳は、何者にも縛られない"自由"への希望で溢れていた。 |
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