ストーリー | キャラクター | 流派・奥義 |
(1)サヤ編 | (2)二つの魂編 |
暴力が世を支配する暗黒の時代・・・ユリアへの愛に殉じ、散っていった二人の男がいた。だが文明が滅びる以前、若かりし頃の二人は、まだ己達の宿命を知りえてはいなかった―――。 バイクを駆り、山道を行く一人の男。そんな彼の前に現れたのは、道を塞ぐ巨大な倒木と、馬に跨る一人の美しい女―――ユリアであった。引き返す事を勧めるユリアに対し、男は言った。俺はこの先にある南斗の里で、伝承者としての印可を受けねばならないのだと。彼の名はシン。若くしてその才を轟かせた、南斗孤鷲拳の拳士であった。 一撃で倒木を粉砕し、再びバイクを走らせるシン。だが彼が曲がり角に差し掛かったとき、一匹のキツネが飛び出してきた。怒りに任せ、キツネを殺そうとするシンであったが、その時、彼の頭の中にユリアの言葉がよぎった。この先の曲がり角で出会う者に慈愛を―――。別れ際、確かにユリアはそう告げていた。未来を予知したその女の存在は、この時、シンの心に強く刻まれたのだった。 印可を受けるために与えられる試練、南斗十人組手。その相手として、シンは里で最も強い十人を指名してきた。だがそれは驕りではなかった。天賦の才に裏打ちされたシンの強さは、その十人をまるで寄せ付けなかったのだった。しかし、ユリアはその勝利を祝福はしなかった。敗者への思いやりの無いシンの拳に、ユリアは哀しい強さを感じていた。 翌朝、シンは大きな宝石を持って、ユリアのもとへと現れた。だがそれは、里の守り神である女神像の涙として奉られていたものであった。彼は祈る者達の前で、その女神像を粉砕し、この宝石を手に入れたのである。その歪んだ愛の表現に、ユリアは答えた。貴方の心は壊れている。そんな男に、私の心は決して開きはしないと。 シンがユリアを殴りつけようとしたその時、一人の男が現れた。男の名はジュウザ。彼もまた類稀なる拳の天才であり、そして幼馴染であるユリアを愛する男であった。愛の無い強さなど何の意味も無い。そうシンを評し、更にナルシスト呼ばわりしてきたジュウザに、シンは激怒して襲い掛かる。ユリアの付き人・サキの機転で、なんとか戦いは避けられたものの、シンの中には深いジュウザへの怒りが刻まれたのであった。 シンの追跡から逃れ、BARで酒を飲むジュウザ。強引なナンパをするチンピラを追い払ったジュウザは、いつもどおり助けた女を口説こうとする。だがその時、既に店の外には、執念に燃えるシンの足音が迫っていた。拳法の極意は逃げる事だ―――。残されたジュウザからの伝言が、シンの怒りを更に加速させる。だがその時、ジュウザに追い払われたあのチンピラが、シンに話しかけてきた。明日何処にジュウザが現れるか・・・男はその場所を、彼の会話の中から耳にしていた。 翌日、ユリア達は船を借りきり、サキの誕生日パーティーを開いていた。だがその宴は、一瞬にして凍りついた。突如乗り込んできたシンとチンピラが、船上で暴れ始めたのである。だが、ジュウザはいつものように逃げようとはしなかった。サキを涙させたシンの暴虐な振る舞いを、ジュウザは許せなかったのである。ぶつかり合う二人の超人。船体すら破壊するほどの戦いに、乗客達はたまらず避難する。だが、ユリアは船を下りようとはしなかった。彼女の予知の能力が告げていた。シンとジュウザ―――。二人には、天から託された大きな使命があること。そしてこのまま戦い続ければ、二人には死が訪れる事を。 ユリアが戦いの間に割って入ったその時、三人のいる機関室の扉が閉められた。ジュウザだけでなく、シンにまでコケにされたチンピラの男は、全員まとめて殺してしまおうと考えたのである。爆破され、浸水し始める客船。厚い鉄板で覆われたその扉は、シンやジュウザの拳を持ってしても破る事は容易ではなかった。しかし、ユリアは知っていた。争いの果てに待っているのは、暗く冷たい死・・・。だが二つの魂が繋ぎ合わさった時、その運命は必ず変わるであろうことを。未来の為、希望の為、運命に抗い続ける事。それが生まれながらにしてユリアが背負った宿命なのであった。この女をこんなところで死なせるわけには行かない。思い重ねた二つの拳は、厚い扉を打ち破り、己達の新たな運命を切り開いたのであった。 あなたたちには、天から託された大いなる使命がある―――。そのユリアの言葉を胸に、二人は別の道を歩み始めた。そして訪れた暗黒の時代。二人はそれぞれの天命と、ユリアへの愛に殉じ、その命を鮮やかに燃やし、果てたのであった。 |
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