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北斗の拳 ユリア外伝 慈母の星
ストーリー キャラクター 流派・奥義



北斗の拳 ユリア外伝


[原案]
武論尊・原哲夫
[作画]
笠井晶水



北斗の拳 ユリア外伝 慈母の星

は、ビックコミックスペリオール誌上にて連載された、ユリアを主人公とした北斗の拳の外伝漫画作品。「真救世主伝説 ユリア伝」で加えられた、『ユリアの予知能力』という設定を基に、核戦争前の若かりし頃のユリアの物語が描かれている。

 2006年7号〜9号に掲載された「新しい未来編」(勝手に命名)は、ユリアが自らの持つ予知能力の無力さを嘆く話。世話係のサヤに訪れる死の運命を知りながら、その未来を変えられないユリアと、想いの力によってその運命を変えようとするケンシロウが、後に二人で旅立つ事を決意する切欠となったエピソードが描かれている。
 「北斗の拳にはバトルシーンが不可欠!」という従来の考え方を打ち破った革新的なストーリーであり、掲載された当時は私も動揺したものだが、改めて単行本で呼んでみるとなかなかこれはこれで面白く、ストーリー紹介のために文章化していると結構泣けてきた。ただ、死ぬ直前のサヤを突き動かすほどのユリアの魅力というものはイマイチ伝わらなかった。原作でも描ききれなかった部分なので難しいだろうが、そこを描くのが「ユリア外伝」の役目なのではないかなあと思う。ぶっちゃけ、ユリア何もしてないからなあ・・・・。あと、ラオウやトキは出てこないのに、ジャギを登場させるという意外性はナイスだ。


 2007年7号〜13号に掲載された「二つの魂編」は、ユリアとシンの出会い、そしてシンとジュウザの間に生まれた確執を描いたストーリー。他の外伝でもほとんどチョイ役でしか登場しないこの二人の若かりし頃の姿を拝めるというだけで、その希少価値は高い。そして前エピソードでも然程目立っていなかったユリアが、今回は更に空気と化しているという点を見ても、やはり「何もしない」というのがアイデンティティーであるユリアを主人公にするという難しいんだろうなあと痛感させられる。
 シン好きとしてはジュウザとほぼ互角に戦ってくれたという点で満足だし、愛が判らない性格も原作をしっかり踏襲しており、違和感のない出来。南斗聖司教というユリアより偉いのかどうなのかよく判らない立場の人から「天才」の称号も戴き、世間的なシンの評価もあがったのではないだろうか。
 逆にジュウザは少しシンから逃げすぎで、それはそれで自由を奪われており、「雲のように自由」って感じではなかったように思う。「シンと闘えば無傷ではすまないから闘いたくない」的な台詞があれば、逃げる口実にもなり、またシンの強さも更にアピールされて良かったのにと思う。
 原作では全く共通点のなかったこの二人のバトルが、この作品の見所である事は間違いない。もともとタッチ自体がバトルに向かない画風な上、なんかATフィールド的なもんが出てしまっているものの、それでもそれなりに激闘は描けていると思う。闘ってるだけなのに客船ぶっこわれちゃってますし。しかしこんな超人達が、いくら分厚いとはいっても船の扉を破れないというのはいただけない。折角シンを天才呼ばわりした功績が台無しだ。激闘の末に瀕死に陥って弱っていた、とかいう理由をつけたほうが良かったと思う。まあ最後のチンピラが殺されなかったのを見ても、笠井センセがあんまり血生臭いのが好きじゃないみたいだから、これ以上負傷させるのも嫌だったのかも。


 個人的には原作との矛盾なども一切無く、キャラクターのイメージを損なうような点も無い故、結構高評価している。ただ他の北斗の外伝漫画と比べても、原作の画風から最も遠い作品である故、好き嫌いは別れる所だろう。しかし拳で語り合う漢達ではなく、慈愛を説くユリアという女性が主人公という、原作とは全く色違いの作品なので、この画風の違いが逆にハマっているようにも見える。またユリアは、メインキャラではあるが、ぶっちゃけ人気があるとは言えないキャラクターであるので、この辺も意外と受け入れられ易いポイントだったのではないかと。正直、みんなあまり興味ないのですよ、ユリアに。だから笠井センセもあまりプレッシャー感じずに描けた所もあるんじゃないかしら。そういう意味ではラオウ外伝の長田センセとか、レイ外伝の猫井センセは大変だと思うよ・・・


「真救世主伝説 北斗の拳 ユリア伝」の初回限定版DVDには、この漫画に音声をつけたモーションコミックスが収録されている。

製作 宮崎みつる
【声の出演】
ケンシロウ:河野泰治
ユリア:くぼたあや
サヤ 篁莎耶
サヤの父 小森彰
寺院の女性 小山みのり
ナレーション 古賀一史



単行本キャッチコピー

北斗最愛の女性にして、南斗最後の将である、ユリア―――
この作品は、彼女が哀しき宿命を背負うまでの、
ケンシロウ、シン、そしてジュウザとの
その知らざれる歴史をまったく新しい観点と、
瑞々しいタッチで描いた、
「北斗」ファン必見の一冊!!

掲載誌
ビッグコミック
スペリオール
06年 第7号〜第9号
07年 第7号〜第9号、第11号〜第13号


タイトルリスト
第一章 運命の星の下に…
第二章 愛する人のために…
第三章 想いという奇跡の名のもとに…
第四章 南斗孤鷲拳・シンとの出会い
第五章 雲のジュウザ 参上!
第六章 避けられぬ宿命
第七章 船上の激突!!
第八章 二つの魂
最終章 大いなる愛