TOP

五車波砕拳
ごしゃはすいけん



流派: 五車星 海の拳
使用: リハク (対 ラオウ)
登場: アニメ版北斗の拳(100話)


 TVアニメ版北斗の拳に登場した南斗五車星 海のリハクの拳法。変幻自在の柔らかな構えより底知れぬ力を発揮する、荒波が一瞬にして岩を砕くが如き必殺の拳。攻撃に転じる際、相手の目にはリハクの身体が巨大化したように見える。
 飛び蹴りで石像を粉々にする威力を見せたが、ラオウには直ぐに見切られ、返り討ちにされた。



 津波というものは、水深が浅くなったり海底の地形や海岸線の形に影響され、急激に高く大きくなる。五車波砕拳の突然の巨大化は、その津波の特性を体現したものなのだろう。威力を増すとともに、小波から大波への変貌により相手をうろたえさせるという効果を発揮するのだ。拳王様だけでなく我々のド肝をぬいたあの巨大化は、いかにして成されているのか。
 北斗の世界においては闘気が人の身体を大きく見せるのはもはや常識である。原先生の話では、当時の編集長であった堀江信彦氏が怒鳴っている時に、その身体が大きく見えたというのが闘気巨大化のヒントであったという。もちろんリハクの巨大化も闘気の所為であることは間違いない。その闘気を生んでいるのは、構えの時にリハクがウーウー言っている、あの独特の呼吸法だと思われる。
 五車波砕拳の緩やかな動きは、太極拳に似ている。太極拳は張三豊なる人物が少林寺で武術を修めた後、陰陽五行説の思想や吐納法という呼吸法を取り入れて編み出した拳であるという。この吐納法とは、かつて道家で不老長寿の仙法として伝えられていた秘伝の呼吸法らしい。これこそが、リハクにあれほどの闘気をもたらしている奥義なのではないか。吐納法がもたらす「不老長寿の仙法」。この効果が、リハクの身体を一瞬若返らせているのだ。気をもって肉体を若返らせる。そしてその若返った肉体を使い、老いた身体では不可能な大きな闘気を纏う。そしてその多大な闘気で更に若返らせ・・・という、闘気の倍々ゲームとも言うべき手法でリハクは身の丈以上の闘気を纏い、巨大化を実現させているのだ。
 しかしその後がいけない。本気で津波をイメージしたかったのか、巨大化したリハクの攻撃は、小ジャンプからの体当たりであったりという体格に任せた大雑把なものだった。まあまあの破壊力ではあったものの、力勝負でラオウ様に挑むこと自体が間抜けである。まあリハクとてラオウ様には勝てないことは判っていただろうし、時間を稼ぐことが目的だったので、下手に正攻法で攻めて即効秘孔突かれるよりはあのほうが良い気もするが・・・。
 もしかしたらあの巨大化自体、時間稼ぎのために出したものであり、本来はあの緩やかな構えを利用した柔の拳が波砕拳の真髄なのかもしれない。太極拳も相手の攻撃を無に帰す化勁を得意とする拳であるし。