
壁を次々と蹴り壊しながら、最短距離でユリアのもとへと突き進むラオウ。辿り着いた最深部の部屋の扉を破壊したとき、その先には噴煙に隠れた一人の人影があった。ゆっくりとその者へと向けて歩み寄るラオウ。しかし、そこは既に海のリハクのテリトリーの中であった。部屋へと踏み入れたラオウの足が、何かを踏みつけた瞬間、その頭上に巨大な岩の塊が落下してきたのである。子供騙しだといわんばかりに片手を突き上げただけで己の立つ位置分だけ削りとったラオウであったが、この程度の罠が通用しないことくらい、リハクにも読めていた。天才軍師、海のリハク。その部屋は、その戦略の天才が仕掛けた罠によって殺気に凍りついた、この城最後の砦であった。
ケンシロウと落ち合う予定となっている部屋へと向けて、階段を駆け下りるユリア。その耳には、近付いてきているケンの足音が届いていた。そのユリアよりも少し早く部屋へ辿り着いたのは、ケンシロウのほうであった。この部屋でユリア様と落ちあう予定となっている。自らをここまで案内した兵からそう聞かされるケンシロウであったが、ケンにとってそれは本意ではなかった。ラオウある限り、ユリアに生は無い。自らの覇道のために、ラオウは必ずユリアを己の前に跪かせようとする。ケンは、今ここでユリアと逃げても、何の解決にもならないことを知っていたのだ。腕に巻いたバンテージを少しだけ千切って床に置き、ケンはラオウの待つ最上階へと走り出した。その置き土産は、己が選んだ道をユリアに伝えるための無言のメッセージであった。
罠を全て破られた今、ただの策士であるリハクにもはや戦う術はない。そう考え、さっさとカタを付けようとするラオウであったが、それは大きな間違いであった。南斗波砕拳。緩やかな動きより生み出される大波がごとき破壊力で相手に突撃する必殺拳。この拳こそが、リハクの真の奥の手だったのだ。その意外な破壊力に一瞬戸惑ったラオウであったが、その顔には直ぐに勝利の笑みが戻った。そして次にリハクがとびかかった瞬間、その拳が相手で捉えたのはラオウのほうであった。巨大な大波も、ラオウという名の大岩の前には小波に過ぎなかったのであった。リハクの首を締め上げ、リハクの真の狙いを聞きだそうとするラオウ。当然リハクは何も喋ろうとはしなかったが、既に彼の練った策は失敗に終わっていた。ユリアと共に城から逃げているはずのケンシロウが、このラオウの待つ戦場へと現れたのだ。今の力ではまだケンシロウはラオウには勝てない。そう読んだからこそ、リハクはケンとユリアを逃がそうとしたのである。しかし、今から繰り広げられる光景は、そのリハクの読を大きく覆すものであった。
突然の発作により、ラオウの前に敗れ去ったリュウケン。師をその手にかけたラオウの拳は、既にその体に致命傷| [漫画版との違い] ・リハクが五車波砕拳でたたかうシーン追加 ・ケンが構えを取ると背後の強敵達もそれと合わせて動いたりするシーン追加 |
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