
雪の降り積もるある日、北斗神拳の修練場から破門された一人の少年がいた。彼の名はキム。彼もまた北斗神拳の伝承者を目指すべく修行を積んでいたが、悲しいかな、彼には伝承者になりうるだけの才能は備わっていなかった。二度とこの門をくぐることは許さぬ。リュウケンにそう言われ、雪の中へと放り出されるキム。今一度の機会を求めて扉を叩き続けるキムであったが、堅く閉ざされたその門は二度と開きはしなかった。
他人に情けをかけ、哀しみを背負って生きたケンシロウ。軟弱者と罵ったそのケンシロウに、自分が今こうして恐怖しているという現実を、ラオウは受け入れることが出来なかった。俺に後退は無い。あるのは前進のみ!究極奥技、無想転生すら微にくだかんと、自らの不敗の拳、天将奔烈を繰り出すラオウ。放たれたすさまじい闘気が、ケンシロウを襲う。しかし、後退がないのはケンシロウも同じであった。上着を全て吹き飛ばされ、体中から鮮血がほとばしっても、ケンシロウは正面から天将奔烈を受けきったのだ。互いに持ちうる力を全て出し切っての総力戦。その二人の闘気の激突は、遥か下の階にいるユリアの身を震わせるほどであった。
リハクが突き倒すようにケンを床へ伏せさせた瞬間、激しい爆音と共に周囲の壁が吹き飛んだ。更に、二人の激しい戦いによって崩れかけていたその床もまた轟音と共に崩れ去り、ラオウの体を飲み込んだ。リハクの最後の仕掛けとは、壁全体に仕掛けられた爆薬で部屋をまるごと吹き飛ばすものだったのだ。巨大な瓦礫と共に遥か下階へと崩落するラオウ。床へと叩きつけられ、そして幾多もの瓦礫に押しつぶされたとあっては、流石のラオウといえども大ダメージは免れなかった。しかし、あるものを眼にした瞬間、その痛みは何処かへと消し飛んでしまった。ラオウが落とされたその部屋は、偶然にもユリアがケンを待っていたあの部屋だったのである。運は我にあり!天はやはりこのラオウを望んでいるのだ!近衛兵達を吹き飛ばし、遂にユリアをその手に抱いたラオウ。崩れ落ちる南斗の城を背に、ラオウは黒王の背に乗って荒野へと消えていったのであった。
ラオウの攻撃で重傷を負ったユリアの近衛兵達は、最後の希望に頼るかのようにケンとリハクの名を呼び続けいた。この爆発では助からないか、そう思われたとき、粉塵の向こうからリハクを抱えたケンシロウの姿が現れた。しかし、ケンシロウのその眼は、爆発によって負傷し、見えなくなってしまっていた。自分が読み誤ったばかりに・・・。そう言って自らのミスを詫びるリハク。だがケンはそんなリハクの心配をよそに、再びラオウを追うと宣言した。眼が見えずとも戦いつ続けた男、シュウ。彼がケンシロウの中で生きている限り、眼が見えぬということはケンにとってハンデとはなりえなかったのである。手負いの獅子と化し、今や全てを打ち砕く某凶星となろうとしているラオウ。その暴走を止めるため、そして再びユリアをその手に取り戻すため、ケンシロウのまた新たな旅が幕を開けたのだった。| [漫画版との違い] ・天将奔烈後の二人の攻防 ・ユリアが二人のオーラを感じて震えるシーン |
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