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デビルリバース



登場:原作(23〜25話)TVアニメ版(13話)
   レイ外伝、真北斗無双、北斗が如く等
肩書:懲役200年の囚人
流派:羅漢仁王拳
CV:蟹江栄司(TVアニメ版)
   今村直樹(PS版)
   稲田徹(真北斗無双)
   茅野愛衣(DD北斗の拳2)


 ビレニイプリズンに収監されている大巨人。過去700人を殺し、13回もの死刑執行を生き延び、最終的に懲役200年という判決を受け、光の差さぬ地下の特別房に閉じ込められている。古代インド拳法である羅漢仁王拳の使い手。

 ケンシロウに対抗するための最終兵器としてジャッカルより封印を解かれ、数年ぶりの光を浴びて歓喜。の写真を持つジャッカルを生き別れた兄だと思い込まされ、更にはケンシロウが己を監獄に閉じ込めた張本人だと信じ込まされた。その後、獄舎の屋上にある野球場跡に場所を移してケンシロウと激突。羅漢仁王拳を披露し、風殺金鋼拳などの技で攻め立てるも、転龍呼吸法によって潜在能力を引き出したケンシロウには通用せず、北斗七死星点により全ての肋骨を折られて敗北。最後はジャッカルのダイナマイトによって"兄"と共に爆破された。


 『レイ外伝 蒼黒の餓狼』では、とある研究施設で生み出された生物兵器の中に、彼に似た姿の者が描かれていた。

 『デビルリバース外道伝 リバース サイド デビル』では、山岳部の小さな町に突如現れ、100名以上の死傷者を出した後、軍が捕獲。研究施設『ビレニィプリズン』の中で仮死状態のまま眠らされ続けた。
 作中では、山岳地に20m程の穴があったこと、1千年以上前に南米の一部で使用された言語を話すことから、遥か昔から存在する神話の生物ではないかとされている。紀元前に存在した文明が、医学と黒魔術によって生み出した、約200年の周期で蘇る巨人「デビルリバース」がその正体ではないかと考古学者(スプラッシュ)は語っていた。









 ここまでの北斗の拳は、鬼スゴ拳法が登場するとはいえ、一応まだギリギリ現実的なラインは保ってたと思うんですよね。しかしこのデビルリバースの登場により防波堤は決壊。北斗の拳は一瞬にしてファンタジーの域に突入しました。


 なにしろデカい。デカすぎる。ただこれをアリにしたことで、作品の持つ可能性は確実に広がったと言える。常識にとらわれず、大巨人を登場させるというその思い切った判断が、作品をより高みへと押し上げた事は間違いない。




 しかしこのデビルリバース。実際どれくらいデカいのか。作中の描写をもとに計算してみよう。

 鍵となるのはケンシロウやジャッカルとのサイズ比だ。その場合、なるべく両者が密着している状態が望ましいので、デビルリバースがケン達を掴んでいるシーンを参考にした。


以下の比較画像をご覧頂きたい。






 これは、メディコス・エンタテイメントから発売されているフィギュア『超像可動・ケンシロウ』を使って、デビルリバースがジャッカルを掴んだシーンを再現したものである。








こちらも同様に、デビルがケンシロウの蹴りを受け止めたシーンを。








そして最後に、デビルがケンシロウを両手で挟んだシーンを再現した。


 この三種の比較画像、いずれもサイズ的にはかなり再現度が高いと自負できる。若干デビルより私の手の方が小さいように見えるが、これは私が成人男性としてはかなり小柄で、手のひらの大きさも平均より2cmも小さいことを考慮すれば、誤差と言える。もし平均サイズの男性が被写体であれば、より漫画のサイズに近かった筈だ。クソチビで真に申し訳ない。


 以上のことを踏まえて考えると、「デビルとケンシロウのサイズ比」と「成人男性と超像可動ケンシロウのサイズ比」がほぼ一緒ということになる。


 超像可動ケンシロウの寸法は17.5cm。ケンシロウの身長は185cmなので、およそ10.57分の1。これに日本人成人男性の平均身長である171.5cmを掛けると、約1812cm。

 つまりデビルリバースの身長は、およそ18メートルと考えられる。





 18メートルは、ファーストガンダムと同じ大きさ。横浜にある実物大ガンダムを見て、あの位だと想像してもらえればいいだろう。

 他の目安としては、東大寺の大仏、ビルの5階、野球のマウンドからホームベースの距離等。ウルトラマン(40m)とか初代ゴジラ(50m)よりは大分小さいといった感じか。





 ちなみにTVアニメの設定画では、全長がケンシロウの約4倍程度になっている。デビルが中腰になっていることを考慮しても、約10メートルといったところ。ただ実際のアニメの描写ではむしろ原作よりもデカくなっているので、あまり参考にはならない。


 参考にならないという意味では、そもそも北斗の拳は闘気などの超自然的要素によって視覚バグが頻発する漫画なので、計算すること自体が野暮とも言える。18メートルというのも、あくまで参考程度に留めて欲しい。





 18メートルの人間……確かにとてつもないサイズだ。しかしデカいとは言っても、北斗の拳の世界では「絶対にありえない」という程ではない。


 

 『蒼天の拳』には、それこそデビルに比肩するサイズの章烈山が登場しているし、続編である『蒼天の拳 リジェネシス』にもシャムライ・コムライという双子の大巨人が登場している。北斗の拳にも5〜10m級の人間なら数人確認できる。つまりあの世界において巨人は「割といる」存在なのだ。実際、ケンシロウがデビルリバースの姿を見た時も、全く驚いた様子は無かった。それは、あのサイズの人間がいることが、ケンシロウの想像の範囲内だったという意味だろう。


 何故あの世界にはそんな巨人が誕生するのか。それは、成長を制限するDNAがぶっ壊れているからだろう。たまにTV番組などで、ありえないサイズまで太り、動けなくなった人間の特集をやっていたりする。ああいうのはほぼ全て外国の人なのだが、それは外国人(主に欧米人)のDNAが、日本人のそれに比べ、脂肪増加を抑制する信号が送られにくいのが原因なのだという。北斗の世界の巨人達も、これと原理は同じ。こっちの世界とは、DNAの進化の方向が変わってしまった世界なのだ。


 ちなみに「放射線を浴びて巨大化する」という映画の定番ネタがあるが、現実ではこういった事例は確認されていない。ただ放射線はDNAを損傷させるので、上記のように成長を制限するDNAが破壊されれば際限なくデカくなる可能性はある……のかどうかは、素人なのでよく判らない。ただ少なくともデビルは核戦争以前からデカかったので、その例にはあたらないだろう。


 尚、北斗の拳イチゴ味の外伝である『デビルリバース外道伝 リバース サイド デビル』では、遥か昔から存在している可能性にも言及されていた。曰く、医学と黒魔術によって生み出された神話上の巨人で、約200年の周期で蘇るのだとか。本当だとしたらとんでもない事だが、そんな人類滅亡級の存在であるにも関わらず、彼より遥かに強い人間が何人もいるという事実の方がある意味恐ろしくはある。




●デビルは強いのか?


 「デビルリバースは強いのか」。そのカギを握るのは、勿論あの巨体である。数トンはありそうな腕を、突風を起こせるほどのスピードでブンブン振り回せる時点で、その脅威は超災害級。これで弱いはずがない。Q.E.D 証明終了……といきたいところだが、そういうわけにもいかない。


 そもそも、デビルリバースがそんな風に「動けている」という事自体がおかしい。デビルの身長を先程算出した18メートルと仮定し、仮にケンシロウと同じ185cm100kgの人が、その大きさまで巨大化したとすると、高さは1800cm÷185cm=約9.7倍になる。体積を求めるには更に縦と横の分を掛けるので、体重は9.7×9.7×9.7の約912倍。つまり100kg×912=約91トンですね。デビルはケンシロウよりも四肢が大分太そうなので、100トン以上はありそうだが。


 一方で、筋力というのは筋肉の断面積の大きさで決まる。こちらは体積ではなく面積なので、縦9.7倍×横9.7倍の約94倍となる。


 つまり筋力は94倍なのに、体重は912倍の状態になるのだ。普通に考えれば動ける筈がない。実際、人間が今のフォルムのまま巨大化しても、4mを超えた辺りでほぼ活動不能になると言われている。ましてや身長18メートルの人間が二足歩行で戦うなど、物理的にあり得ないのだ。





 しかし作中においてデビルは、そんな物理なぞ知るかとばかりに、わんぱくに動き回っている。当然だ。漫画なのだから。ならばこちらとしても、そういう生物だと受け入れるしか無い。その場合、デビルリバースは100トンもの自重を問題としない超特別製の筋肉を持つバケモノということになる。デカいとかでなく、この筋肉を有しているというだけでムチャクチャ強いと言えるだろう。





 ただ、超筋肉の持ち主はなにもデビルだけではない。ケンシロウは、デビルの予想体重である100トンを大きく超える500トンはありそうな岩を楽々と担いでいた。ライガ・フウガが支えた岩塊だってそれくらいはあるあだろう。作中上位の拳士でなくとも、それくらいの常識外の筋肉を持っているのだ。デビルリバースの無茶な設定を受け入れようが、そもそもそれ以上の無茶を押し通している漫画なので意味が無いのである。


 デビルには「重さ」という武器もあるが、逆に言えば通常サイズの拳士はその「重さ」に筋力を割かれること無く使えるわけで、その分動きも格段に速くなる。この時点で、デビルの「自重を克服した超パワー大巨人」というクソ強設定には、何のアドバンテージも無くなったと言えるだろう。「デカいから強いと」いう常識は、北斗の拳の世界では通用しないということだ。




 ではデカさを考慮せずにどうやって強さを測ればいいのか。それはもう実際の戦闘の描写から判断するしかない。基本にして至高。実にシンプル。小難しい計算とか要らんかったんや!


 で、そのバトル内容だが、序盤はともかく、転龍呼吸法が発動して以降は、デビルは殆どケンシロウにダメージを与えられていなかった。転龍呼吸法は北斗神拳の奥義であるが、呼吸で身体機能を高めるのは武術の基本であるし、他の流派でも近いレベルの事は可能だろう。つまり誰が相手でも、デビルがパワーで圧倒できる展開には中々ならないと思われる。


 むしろデビルに期待できるのは耐久面の方だろう。ケンシロウの場合は七星点心で一撃KOだったが、もし秘孔という概念が無ければ、ああ上手くはいかなかったはず。あのサイズの敵の倒しうる攻撃などそうそうあるものではない。つまり対デビル戦は長引くことが予想される。


 だがそれは、デビルにとっては望ましくない展開だ。大きな体を持つ生物は、その分消費エネルギーも大きくなる。動物の消費エネルギーは、体重の4分の3乗と言われており、デビルの体重を上記で算出した約100トンとすると、デビルの消費エネルギーはケンシロウの177倍にもなる。これではあっという間に活動限界を迎えてしまうだろう。


 ただ消費エネルギーという面で考えるなら、デビルはケンシロウとの戦いにおいて最初からガス欠であった可能性が高い。あの暗い部屋に何年も閉じ込められていた上、ろくに食べ物も与えられていなかったはずだ。とても本調子だったとは思えない。にも関わらずあれだけ動けていたことが脅威なのだ。


 よく考えたらデビルってムチャクチャ血色悪かったしね。全身紫色だよ。あれ多分死にかけだったんですよ。

 もし彼が健康体で、肌の色艶も絶好調であったなら、あの程度の強さでは納まらなかっただろう。もしかしたら作中最強クラスの拳士だったかもしれないね。……みたいなテキトーな感じで考察を終わります。収拾がつかないので。





●本当に悪人なのか?





 デビルリバースは、700人を殺した罪で、200年もの懲役を科せられている。確かにとんでもない犯罪歴ではあるが、果たして彼は本当に極悪人なのだろうか。


 「悪魔の化身」という異名から連想される人物像は、非道、粗暴、残忍……言うなれば、鬼時代のフドウのようなイメージであろう。しかし、デビルにはそういった気配がない。


 まず、彼がおとなしくビレニィプリズンに収監されていることが変だ。劇中でも天井をブチ破って外に出ているのだから、本気になればいつでも脱獄できたはずだ。なのにそうしなかったのは、デビルにその意思が無かったということ。つまり彼は、自らに下された判決を受け入れ、おとなしく服役生活を送っていたということになる。


 また、彼は13回も死刑執行されているわけだが、言い換えればそれはデビルが13回も「処刑されてあげた」とも言える。彼を電気椅子や絞首刑にかけたいなら、デビル自身の同意や協力は不可欠。つまり刑がちゃんと執行されたという事は、その際に彼が暴れたりしなかったということだろう。


 以上の事からデビルは「悪魔の化身」とは程遠い、穏やかな性格であったと考えられる。とは言っても、作中では結構大暴れしていたわけだが、それは仕方が無いだろう。光無き部屋に何年も閉じ込められれば、誰だって精神を病むに決まっている。むしろ水滴の拷問にも病まなかったハーン兄弟の方が異常なのだ。


 彼が拳法を修得している点も興味深い。あれほどの巨人であれば、拳法など無くとも十分強いはずなのに、何故か彼は羅漢仁王拳を身に付けている。もしかするとあれは、強さを求めての事ではなく、精神修養や人格形成を目的としての選択だったのではないか。お世辞にも頭が良いとは言えぬ彼が、あの巨躯をもちながら「人間として」生きていくためには、拳法の修行を通じて「心」を学び、穏やかな人間へと成長する必要があったのだ。


 だがそうは言っても、彼は700人もの命を奪った大量殺人鬼。その事実を無視して、穏やかだのなんだの言った所で説得力はない。しかし、考えてみて欲しい。あの身体だぞ?100トンはあるんだぞ?そんなの、もはや動くだけで災害のようなものではないか。歩いただけで踏み殺す。寝返りうっただけで押し潰す。見ただけで老人がショック死したこともあったかもしれない。そんな日常を十何年も送れば、例え殺意がなくとも700人くらい犠牲になったって不思議ではないではないか。


 ジャッカルによると、彼の母は、デビルの事をずっと擁護し続けていたという。いくら実母と言えど、本当にデビルが極悪人ならば、庇い続けることなど出来なかったのではないだろうか。そしてデビルもまたそんな母の事を想い、そして生き別れの兄(?)をも全力で守ろうとしていた。家族への愛を胸に生きるこの男は、やはり「悪魔の化身」などでは無いのだ。





 それを理解していたのか、PS4専用ゲーム『北斗が如く』のストーリーでは、ケンシロウがデビルにとどめを刺さなかった。つまりそれは、デビルが真の悪ではない事をケンが見抜いたという証。原作のように、洗脳により暴走した状態でなければ、ケンがデビルを殺さない未来も十分にあったということだろう。

 その後のストーリーでは、半壊した町を復興させるために働くデビルの姿も描かれている。やはり彼は本当は心優しい人間なのだ。信じ続けてよかった。彼のような冤罪被害者が一人でも多く救われる事を祈っている。