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木人形にされたボクサー



登場:原作(46話)TVアニメ版(34話)
肩書:木人形にされた男
流派:ボクシング
CV:田中亮一

 ハブが木人形として捕らえてきた男。かつてボクシングのヘビー級のチャンプになった経歴の持ち主であり、そのパンチは時速200キロ、1トンの岩をも砕くと自負している。

 非道な人体実験を繰り返すトキ(アミバ)を倒すためにわざと捕まり、取り押さえようとしたゴウムを1撃でKO。続けてアミバへと襲い掛かったが、パンチにカウンターを取られ、秘孔によってピクリとも動けない状態に。そのまま奥の実験室に連れ込まれ、パンチのスピードが倍になる秘孔の実験台にされるも、右肩が破裂する大失敗に終わり死亡した。

 TVアニメ版では黒人になっている。また自らを捕える木人形狩り隊が、ハブの部隊からゴウムの部隊に変更されている。


 『北斗の拳 拳王軍ザコたちの挽歌』では、ゲルツ腕相撲でギュウキに負けた男と一緒に、とある町の用心棒として雇われ、拳王軍を撃退している。




 実力と正義感を兼ね備えたモブって、北斗の拳では珍しいんですよね。あの世界で腕力に自慢がある奴はだいたい悪者になるので。なので善陣営にとってこういう人材は貴重なわけですよ。それがこんな風に無駄死にするのを見ると、個人的に凄く残念な気持ちになる。うまく立ち回ればもっと沢山の人を救えたのにって思っちゃうんですよね。


 実際彼がどれくらい強いのかと言うと、まず「時速200キロのパンチ」だが、ボクサーの上位ランカーのパンチスピードが大体40km/hらしいので、もはや人間の域ではない事がわかる。

 次に「1トンの岩を砕く」という破壊力についても考えてみよう。1tの岩を破壊するにはおよそ10万Jのエネルギーが必要だという。ヘヴィ級ボクサーの平均体重が大体110〜120kgで、彼はそれよりも大きく見えるので約130kgとする。腕の重さは体重の約5%で、パンチになると体幹で約1%上乗せされるとのことなので、130×0.06=7.8kg。パンチスピードの200km/s(秒速約55.5m)なので、これを運動エネルギーの公式に当てはめると約1万2千J。うーむ、全然足りないな……もしアミバの秘孔が成功してパンチスピード倍になっても無理そうだ。





 ちょっと設定を盛った疑惑はあるものの、それでも彼が常人離れした強さであることは事実。そんな彼がアッサリと負けることで、トキ(アミバ)の強さがまず印象付けられた。噛ませ犬としての役割をしっかりと果たしたと言えよう。


だが彼にはもう一つの役割があった。
トキの変貌っぷりを読者に伝える事だ。





まずこの場面を見て欲しい。核戦争前、腹痛に苦しむ子供をトキが秘孔で治すシーンだ。まさに聖人まるだしの姿である。





次にこちら。狂気に満ちた顔のトキ(アミバ)が、木人形と化したボクサーに秘孔実験を行うシーン。







 この二つのシーン、よく見ると、コマ割りやアングルが非常によく似ていることが解る。左の回想シーンのわずか3ページ後に右のシーンを持ってきていることからも、意図的であることは間違いない。ラストのコマで子供が「ちっとも痛くない!」と言っているのに対し、もう一方では「いっ!いてええ」と真逆の結果になっている所がいい対比になっている。

 そして何より注目すべきは、2コマ目の表情の差だ。過去のトキの優しき顔と、現在のトキ(アミバ)の慈愛の欠片も無い顔。たった数年でこうも人相が変わってしまうのかという驚き。同時に、これ本当に同一人物だと思う?と読者に問いかけているかのようでもあり、実に面白い。