ストーリー | キャラクター | 流派・奥義 |
幼き時の背比べの跡が刻まれる「約束の場所」。そこは、トキとラオウがいつか戻ってくることを誓いあった場所であった。そして日が暮れる頃、その契りは果たされた。同行した部下達を待機させ、ラオウはたった一人でこの場所へと現れたのだった。もはや誰も割って入ることの出来ない修羅と化した二人―――。そのトキの中に眠る修羅の血を、ラオウはかつて目にしていた。愛犬ココが殺されたあの時、矢を射った無法者を殴る幼きトキは、怒りと暴力の愉悦をその身に感じていた。そして今、封印し続けてしたその心を、トキは遂に解放したのであった。 幼き頃も、そして拳王となった今でも、唯一恐れることなく立ち向かってきた男、トキ。しかしラオウの剛拳を恐れないという事は、生を放棄した事―――。死者であるトキの拳は、敗者の拳であるとラオウは思っていた。だが振り下ろされた拳を、トキは柔の拳で流さず、剛拳をもってして受け止めた。トキは死人などではなかった。ラオウを超えるという目標があったからこそ、トキは死を、ラオウを恐れはしなかったのである。ラオウが北斗神拳を用いて覇行を成そうとしていることに責を感じ、トキはその拳で人々を救うことで、代わりに罪を償ってきた。そして今、トキは最後にラオウを倒すことにより、ラオウの魂までをも救わんとしていたのであった。 互いの頭上に死兆星光る互角の闘い。全闘力をかけた勝負の中、ラオウが宙に逃げた一瞬の隙を、トキは見逃さなかった。叩き込まれた天翔百裂拳の威力に、膝を付くラオウ。しかし、止めとなる一撃を叩き込まれた瞬間、ラオウの頭上から死兆星が消えた。トキの拳は、秘孔には届いていなかった。もはやトキには、ラオウを倒すだけの力は残されていなかったのである。勝負に決着をつける連撃が、トキの体に叩き込まれる。そのラオウの目には涙が流れていた。かつてラオウ自身が、捨てるよう命じたはずの涙が・・・ 剛拳を得ると共に、その命を奪う秘孔、刹活孔。ラオウはトキがその秘孔を突いていた事を見抜いていた。兄ラオウに置いていかれたくない・・・孤独を恐れ、常にラオウと対等であらねばならない。そう考えた末、トキはこの刹活孔を突くことを選んだのであった。しかし、孤独と戦っていたのはラオウも同じであった。圧倒的な強さを求め、手に入れたラオウもまた、その頂の上で孤独を抱えていたのであった。 己がラオウの魂を救うことが出来たのか、トキには判らなかった。しかし、最期の一撃が放たれた瞬間、トキは全てを理解した。ラオウが打ち砕いたのはトキではなかった。兄ラオウを目指し、果てた、哀しき男の宿命・・・。兄を超えたい。超えなくてはならない。宿業に捉われたトキは、いつしか心の中で、助けを求めていたのだった。救われたのは―――トキの方であった。拳士ではなく、病と戦う男と化したその男に、もはや涙を堪える必要などなかった。 全てが終わり、トキは奇跡の村へと戻ってきた。ラオウとの死闘を終えた今、トキは初めて気がついていた。自分が数多くの死と向かい合ってこれた理由・・・それは自分が死に恐怖していなかったからではなく、誰よりも生を渇望していたが故である事を。残されたその少ない命を、ルカと、奇跡の村の人たちと共に精一杯生きることを、トキは心に誓うのであった。 |
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