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北斗の拳 トキ外伝 銀の聖者
ストーリー キャラクター 流派・奥義



北斗の拳 トキ外伝


[原案]
武論尊・原哲夫
[作画]
ながてゆか



北斗の拳 トキ外伝 銀の聖者

は、コミックバンチ誌上にて連載された、トキを主人公とした北斗の拳の外伝漫画作品。「しろがねのせいじゃ」と読む。北斗の寺院を発ったトキが奇跡の村へと辿り付く所から、アミバとの出会い、ZEEDとの闘い、そしてカサンドラへの幽閉を経て、ラオウとの闘いに敗れるまでを描いたストーリーとなっている。


 前半の奇跡の村を舞台とした物語はオリジナルストーリーとして展開していくが、最後のラオウとの戦いでは原作を忠実に再現しながら、本編では明かされなかったトキの本心の部分に焦点が当てられている。トキとジュウザのタッグや、ジャギとアミバという二大悪が手を組んだりなどといったオリジナル要素もふんだんに含まれており、ジュウザのションベン、アミバの三日後に死ぬ秘孔、馬上のラオウの頬に傷をつけるなど、原作からの引用されたと思われる部分も、ファンだけが理解できる嬉しいポイントである。


 他の北斗の拳外伝シリーズと比べると最も原作の絵のタッチに近い画風であり、ほぼ一貫してシリアスな展開である故、原作の雰囲気を壊さない外伝として多くの読者に受け入れられているように感じる。同時期に始まったレイ外伝が不必要なくらいに乳を放り出す漫画であるが故、それに呆れた読者がトキ外伝のほうの支持に回ったという事もあるのかもしれない。この両作品は本当に対照的で、女の園アスガルズルを舞台に展開するレイ外伝に対し、不必要な女性キャラが全く登場しないというのが、このトキ外伝の特徴でもある。本作の主要オリジナルキャラは、トキに仕える男ラモと、奇跡の村の少年ルカなわけだが、作品を華やかにするためにこのどちらかの役割を女性キャラにするというのが一般的な考え方というか、漫画作品の定石であり、「真救世主伝説 北斗の拳 トキ伝」でも、このラモの位置に当たる人物を女医のサラにすることで、それを成した。しかし、ながて先生はそんな読者への媚びとも取れるような選択を一切排除し、下手をすれば原作以上に男臭いこの漫画を作り上げている。なによりそれを女性が描いたというのだから凄い。女性が描いたら描いたでイケメンなキャラが登場したりするものだが、ラモはダンディではあってもそういう枠には入らず、北斗を代表するイケメンなジュウザすらもどこかオッサン臭い雰囲気が漂っており、腐女子的な臭いも皆無と言っていい。北斗の拳という名作漫画の外伝を描くとなった以上、原作の空気を壊すようなことはしないという作者の気概が伝わってくる。


 しかし作品の空気は頑なに守りつつも、トキというキャラクターの描き方は、原作と大きく変えられている。原作のトキはまさしくこの作品のタイトルにもある「聖者」であった。感情の起伏が少ないその立ち振る舞いには、死を前にして既に達観したかのような雰囲気が漂っており、生きながらにして神の域に達したと言ってもいい人物であった。「天の覇王」や「真救世主伝説シリーズ」でも、その原作のままのイメージでトキが描かれている。ケンシロウをもってしても憧れの存在と言わしめるトキは、完璧な存在であり続けねばならなかったのだ。しかしこの「トキ外伝」は、その型を打ち破った作品だと言っていい。今まで殆ど見られなかったトキの焦燥、苦悩、絶望、狂気といった、「人間臭さ」が、あちこちで描かれているのだ。これは結構凄いことである。外伝作品とは本来、原作では脇役だったキャラクターを主人公にし、本編とは別のエピソードでそのキャラの活躍を描くものだ。しかしトキ外伝におけるトキは、人間臭さが加わっている分、見方によってはむしろ「原作よりもカッコ悪いトキ」が描かれているとも言える。原作をなぞっている部分の多いトキ外伝は無難な作品として見られがちだが、それは大きな誤解であり、完璧であったトキのイメージを打ち崩したこのトキ外伝こそが、数ある外伝の中でもっとも勝負した作品なのである。



作品キャッチコピー


その"柔の拳"は死を待つ人々の希望……
北斗四兄弟の次兄トキ
自ら病に冒されながらも
医術として北斗神拳を確立させるべく大いなる道を歩む
奇跡の村でのアミバとの因縁
夜盗「ZEED軍」との戦い
北斗最強の時代、
奥義伝承者に最も近いと目された男の
知られざる歴史が今繙かれる―――


掲載誌

週刊コミックバンチ

連載開始:301号(07年9月7日号)
連載終了:363号(08年12月12日号



タイトルリスト
第1話 虚無の心
第2話 黒い影
第3話 北斗の宿命
第4話 天才の末路
第5話 守るべきもの
第6話 自らのために
第7話 彷徨える旅人
第8話 強敵との再会
第9話 追憶の欠片
第10話 生き方の相違
第11話 悪党達の微笑
第12話 混乱と決意
第13話 住民達の知恵
第14話 将来への切り札
第15話 二人の拳士!!
第16話 邪悪なる邂逅
第17話 光の射す方へ
第18話 崩壊の序曲
第19話 虚言者の動向
第20話 心の瞳
第21話 陰謀
第22話 大切な場所のために
第23話 宿命の出会い!!
第24話 覇行の行方
第25話 怒りの聖拳!!
第26話 死人の拳
第27話 時代の終焉
第28話 崩れゆく希望
第29話 残された真実
第30話 過去編・宿命への誘い
第31話 過去編・死を望む星
第32話 過去編・北斗に求めるもの…
第33話 過去編・次期伝承者の憂鬱
第34話 過去編・死兆星の誘惑
第35話 過去編・孤独を恐れる者
第36話 過去編・死への選択
第37話 過去編・それぞれの道…
第38話 荒野に出会いし漢
第39話 "奇跡"を繙く鍵
第40話 虚言者の最期
第41話 その心中は拳王かラオウか!!
第42話 幻の北斗神拳伝承者
第43話 愛に殉ずる者…
第44話 変わりゆく心
第45話 北斗天帰掌
第46話 旅立ち、そして別れ…
第47話 約束の地
第48話 闘いの序幕
第49話 最後の救い
第50話 滾る修羅の血!!
第51話 対等であるという事…
第52話 変わらぬ存在
最終話 死の傍らにある生