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北斗の拳 ジュウザ外伝 彷徨の雲
ストーリー キャラクター 流派・奥義




ストーリー紹介(5)
ユリア編


 ケンシロウへの気持ちが薄れたジュウザは、再び自由気ままな生活へと戻っていた。だがそんなジュウザを動かさんと現れたのは、リハクからの使いの者達であった。南斗最後の将が選んだのは、拳王ではなくケンシロウ―――。ヒューイ、シュレンの二人が散った今、拳王の進軍を止められるのはジュウザ様をおいて他にない。そう言って助力を求めるリハクの部下達であったが、ジュウザは全く聞く耳を持たなかった。顔も知らぬ将のため、そして憎きケンシロウのため、ジュウザが動かねばならない道理は何もなかった。


 目覚めた時、ジュウザはとある城の中で鉄鎖に繋がれていた。説得は無理だと判断したリハクの部下達は、ジュウザの酒に睡眠薬を盛り、無理やり南斗の城へと連れてきたのである。そんなジュウザの前に、全身を甲冑に包んだ南斗の将が姿を現した。その声を聴いた瞬間、ジュウザは瞬時にその兜の中身を察知した。南斗最後の将の正体は、死んだと思われていた己の最愛の女・ユリアであった。私のためにおまえの命が欲しい。"将"として、"五車星"である雲のジュウザに、非情の言葉を告げるユリア。だがジュウザは、今はじめて己が五車星の一人である事に感謝していた。己とユリアを再び引き合わせてくれた、五車としての宿命に。その再会に涙し、胸元に抱きついたユリアは、かつての幼馴染のユリアの顔へと戻っていた。


 出陣の直前、ジュウザに声をかけてきたのは、リハクであった。ユリアを恋敵であるケンシロウと会わせる事……。それがジュウザにとってどれほど非情な指令か、リハクは理解していた。だが、今のジュウザには憎しみの気持ちなどなかった。
 旅の中でジュウザは、様々な者達と出会い、その生き様を目にしてきた。彼等は皆、それぞれの目的に向かって懸命に生きる者達であった。だが当のジュウザには、生きる目的など何一つ無かった。ユリアが死んだあの日からずっと―――。しかしユリアが生きていたと知った今、遂にジュウザはその虚無から解放されたのだった。南斗五車星の一人として、その命をユリアのために捧げる事。それがジュウザが手にした"自らの生きる意味"であった。


 かたや拳王軍の将として、かたや五車星の一人として。かつての幼馴染であったラオウとジュウザが、数年の時を経て、敵同士として相対する。陰りを見せぬジュウザの強さを目にしたラオウは、かつて己が感じた予感が正しかったことを確信した。己が天を掴むための最大の障壁となるは、このジュウザであるという事を。だがジュウザにとって、野望の成否は問題ではなかった。旅の中でジュウザが目にした、拳王に支配される者達……。恐怖に縛られた彼等の目には、絶望しか映っていなかった。誰もお前の作った世界を喜んでいる奴はいない―――。何人にも祝福されない、独りよがりの野望に捉われたラオウに、ジュウザは哀れみすら感じていたのだった。


 黒王号を奪うことで、ラオウの足を止めるという作戦はひとまず成功に終わった。だがその戦いの中で、ジュウザは両者の間にある埋めがたい力量差を感じていた。やはりこの命、捨てねばならない―――。次にラオウと相見えた時が、己の死ぬ時であることを、ジュウザは悟っていた。


 二日後、再びラオウと相見えたジュウザは、突如自らの鎧を砕き割った。生か死か。自ら後退の道を絶った背水の拳で、勝負をかけるジュウザ。だがその捨て身の拳をもってしても、ラオウに致命傷を与える事はできなかった。寸前に突かれた秘孔 鏡明により、既にジュウザの両腕は崩れさっていたのである。勝利を確信し、止めの一撃を叩き込まんと歩み寄るラオウ。ここまでか―――。そう思ったとき、ジュウザの中に、かつてのユリアの言葉が響いた。

「雲を見ていると、『どこまでも行けるんだな』って、自由な気持ちになれる!」

 自由なのは雲だけではない。それを見ている全てのものを自由な気持ちにさせる。それが雲の役割―――。己が愛する女に、真の"自由"を与えるまで、まだジュウザは死ぬわけには行かなかった。
 
 両手を広げ無防備に立ち尽くすジュウザに、渾身の一撃を叩き込むラオウ。だが次の瞬間、ジュウザはそのラオウの右腕にしがみ付き、体を引き倒した。飛びそうな意識の中、最後の力でラオウの片腕を折らんとするジュウザ。だが、ラオウの力はジュウザの予想を遥かに超えていた。右手一本で軽々と持ち上げられたジュウザに、ラオウの指が突き刺さる。それは、自らの意思とは関係なく口を割るという秘孔、解唖門天聴であった。将の正体は誰か!そのラオウの問いかけに、ゆっくりとジュウザの口が開かれる。

「け 拳王の ク・ソ・バ・カ・ヤ・ロ・ウ」

 例えラオウでも、北斗神拳でさえも、己を縛る事はできない。それが、雲のジュウザが見せた最後の意地であった。死して尚闘おうとしたその男の凄絶な最期に、ラオウは心からの敬服の念を擁くのであった。



 その昔―――、夕暮れの草原を走る幼い男女の姿があった。恋人同士か、兄妹か。ただ少年は、ただひとつ心に決めていた。何があってもこの少女を一生守り抜いてみせると。ずっと一緒にいてね。その少女の言葉に笑顔を返し、少年はアオアズマヤドリの巣がある木へと急ぐのであった。




・ジュウザ、ダルカに小便を飲ませて挑発。ぶっ倒し、女達を全員連れ帰る。
ダルカの手下のヘグ(眼帯の男)も、ちいさ〜く登場してます。
・「ケンシロウは今フドウと共にいるのか・・・そういやオレは奴を追っているんだよな・・・」
ええーっ この外伝で唯一のジュウザの活動動機をぶん投げですか!?せめてケンを追う意欲が薄れたって感じのエピソードを入れたほうが・・・まあ廃刊で急に打ち切られたが故の急展開なんだろうし、仕方ないか。
・ユリアが木から落ちて熱を出したとき、ジュウザは、見舞いに来なかったケンを殴った。しかしケンが行かなかったのは、ユリアが大事にする雛鳥達を守るために、一晩中巣を見張っていたからだった。
この時ケンとジュウザはほぼ同い年の少年に見える。だがキムが破門されたとき既にジュウザは青年と言える歳で、ケンシロウは6〜8才くらいだった(原作)。年齢差が無茶苦茶じゃないか・・・もう少し気を配ってほしい。
・ジュウザ、フドウの部下達が睡眠薬を入れたワインを飲み、将の下へと連れて行かれる。
なんか毒とか薬に弱いなあ。ハンだったらすぐに代わりを持てって言うよ。
・ユリア、再会したジュウザの胸に飛び込む。
原作じゃ冷酷に命令だすだけだから、この追加シーンはアリ。でも、手を伸ばすけどグッっとその衝動を抑えるアニメ版のほうがもっと良い。
・ジュウザ、拳王と対峙。黒王号を奪い逃走するも、雌雄を決するために再び舞い戻る。
原作じゃこの間に流砂いってケンの戦いを目にするんだが、外伝ではカット。この作品のジュウザは「ケンを探し出す」というのが行動理念だったのに原作で唯一両者が絡んだ場面をカットしちゃうとは、これ如何に。
・ジュウザ、かつて修練場から脱走しようとしたとき、引きとめようとするユリアに、「海、山、火、風は人々に恵みをもたらすが雲は浮いているだけで役に立たない」と理由をつけて見逃してもらおうとする。しかしユリアは、雲は見ているだけで皆が自由な気持ちになれる大事なものだと返す。
なんかようわからんけど「成程な!」と思わされた。皆も自由にか。成程な!きっとこれ連載前から暖めてたネタなんだろうな。最終回で使おうとおもってたんだろう。
・ジュウザ、「ク・ソ・バ・カ・ヤ・ロ・ウ」の後に再び立ち上がり、ラオウの連撃を受ける。その後更に立ち上がるが、既に死んでおり、意志のみで死んだ身体を動かしていた。
こ・・・これはTVアニメ版の展開!広がった血溜まりに雲が映るとこなんかそのままじゃないですかー!あらゆる北斗派生作品でアニメ版が無視されまくる中で、とうとうジュウザ外伝がその無念を晴らしてくれました!ありがとう!


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