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北斗の拳 ジャギ外伝 極悪ノ華
ストーリー キャラクター 流派・奥義



北斗の拳 ジャギ外伝


[原案]
武論尊・原哲夫
[作画]
ヒロモト森一


北斗の拳 ジャギ外伝 極悪ノ華

は、コミックバンチ誌上にて連載された、ジャギを主人公とした北斗の拳の外伝作品。孤児としてリュウケンに拾われたジャギが、父の愛を得るために北斗神拳の伝承者候補となり、やがて兄弟間での劣等感から狂気に走ってゆくという悲哀を描いたストーリー。上巻、下巻の全二巻で単行本化されており、下巻にはバンチ特別号に掲載された「リュウケン外伝 THE JUDGEMENT DAY」も収録されている。

 上記の「リュウケン外伝 THE JUDGEMENT DAY」が、あらゆる意味で衝撃的な作品だっただけに、この作者がジャギ外伝を連載すると聞いたときは「大丈夫か?」と本気で心配したのだが、終わってみれば北斗外伝の中でも最も人気を得たと言っても良い作品として名を残した。高いテンションを維持しながら狂気と絶望と描ききることのできるヒロモト森一氏は、まさにこの「ジャギ」というキャラクターを描くに最も相応しい作風を備えた人物であった。氏にこの作品の制作を依頼した編集部の決定はまさに英断だったと言えるだろう。決して画が上手いわけではないし、どう見ても身体のバランスがおかしかったりするのだが、逆にそれがジャギというキャラクターにはまっている。秘孔により頭部が半分死んでいる男の狂気と憎しみで満ちたその脳内は、きっとこの作品のように現実か幻かもわからぬ歪んだ世界になっていることだろう。

 またこの作品は、北斗外伝の中でも最も革新的な作品でもある。なにせあの邪道の権化のような男であるジャギが、かつては父リュウケンを敬愛し、その愛故に北斗神拳伝承者を目指していたというのだ。このようなストーリーを誰が想像できただろう。「幼い頃は素直だった」とまでは予想できても、「リュウケンへの愛故に」なんて考えもしなかった。
 本来こういったスピンオフ作品のコンセプトは、「本編で明かされなかった裏の物語を描く」というものである。ラオウ様が修羅の国から来た2名と共に覇道を開始したり、達観した感のあるトキが裏では苦悩を抱えていたり、レイが女の園で事件に巻き込まれたりするのも、確かに「知らなかった」ストーリーではあるが、「意外」とまでは言い難い。だがあまりにも「意外」が度を過ぎると、原作の設定から大きく逸脱してしまう。ジャギ外伝は、この微妙な線引きの中でギリギリのラインを攻め、最も「意外」なストーリーを作り上げることに成功しているのだ。

 同時にこの作品は、ジャギに他の三兄弟に見劣りせぬ「背景」を与えた。ジャギは確かにキャラクターとしては人気があったが、それはあくまで「悪党」としてであり、「北斗四兄弟の三男」としてのものではなかった。他の三人との力の差は歴然であり、一人だけ北斗宗家の血筋に関係なく、素性も不明、伝承者候補になった理由も不明。これで三人と肩を並べろというほうが無理な話である。挙句の果てには「真救世主伝説シリーズ」では、最初からいなかったかのような扱いを受けた。そんな冥王星が如き不遇な存在であった彼を、「北斗四兄弟の一人」として改めて印象付けたこの作品の功績は大きい。伝承者決定までの十数年間という期間内においては、「リュウケンを最も知る男」「最も伝承者の座を望んだ男」「過去に最も大きな哀しみを背負った男」というエピソードが加えられたジャギは、今や誰よりもタフな人生を送った「主人公」であると言っても過言ではない。

 本作は単行本にして全2巻という短さであるが、ジャギというキャラクターを考えればこれは相応の連載期間であると言えよう。ジャギにそこまでの壮大なストーリーを用意されてもそれはそれで困るし、このような狂気の作品は太く短いに限る。最期のほうは若干バタついた感はあるが、この全15話の中で作者が描きたかった事はほぼ描ききれているだろう。
 しかし短いとはいっても、その中にはファンがニヤリと出来る細かいエピソードも数多く盛り込まれている。ジャギがバイクを愛するようになった理由や、フドウを真似て棘付の鎧をつけたというエピソード、更にはあのブオガガガという擬音くらいしか注目されなかった北斗羅漢撃が、歴とした北斗神拳の奥義であり、しかも通常の奥義よりも位の高そうな扱いを受けている点などがファンにとってはたまらない。安易に原作のシーンや台詞を用いたりするのではなく、外伝というからにはこういった新要素を描いてくれたほうが我々としては嬉しいのだ。ヒロモト先生のファン心理の掴み方は実に上手い。




作品キャッチコピー

髑髏転がる世紀末荒野を、
全速力でブッちぎる――――!
一日一善クソ喰らえ、
一日一悪がソイツの殺り方!!
獲物は"弱者"と"良く出来た弟"
そのクレイジーでイカした
極悪ヒーローの名は、ジャギ!!

掲載誌

週刊コミックバンチ

連載開始:366号(09年1月16・21日合併号)
連載終了:396号(09年8月21・28日合併号)



タイトルリスト

vol.1 Rome wasn't built in a day.
vol.2 The beast that goes always never wants blows.
vol.3 To sit on the stone for three long pears.
vol.4 One may as well be hanged for a long sheep as a lamb.
vol.5 It's like preaching to the wind.
vol.6 Constant dropping wears aways a stone.
vol.7 If you don't know, you can behave like buddha.
vol.8 You can't take the will of a man・of humble position.
vol.9 An excellent hunter hides his claws.
vol.10 The die is cast.
vol.11 It is no crying over spilt milk.
vol.12 Facts are studdorn things.
vol.13 The reason out of reason.
vol.14 A hungry belly has no cars.
vol.Last Charity is not for others(but for yourself).