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幻闇壊
げんおんかい



流派: 北斗神拳
使用: シャチ(対 修羅)
登場: 北斗の拳(167話)


 北斗神拳の奥義の一つ。相手を石の様に固まらせ、身動き一つできぬようにする。その後、天空に北斗七星が輝く時に肉体が崩壊を始め、潰れるように死亡する。

 羅刹(シャチ)が、修羅の一人に対して使用。三日間の硬直後、雲の隙間から北斗七星が覗いた瞬間に効果が発動し、修羅を亡き者とした。




 この様子を見てケンシロウは「こ…これは北斗神拳奥義幻闇壊!! しかしこの拳はなにかが違う!!」と口にしていることから、厳密にはこの奥義は「北斗神拳奥義 幻闇壊によく似た北斗琉拳の奥義」であり、幻闇壊とは異なる。また、北斗琉拳ではどのように呼称されているのか不明であるため、正式な奥義名も判らない。そしてシャチが実際にこの技を使う瞬間も描かれていないため、どのような技なのかも不明。




 なんとも珍妙な奥義である。動けなくした時点で既に勝負は決しているのに、そのまま晒し物にし、ランダムなタイミングで死亡させるという悪趣味っぷり。にも関わらず「北斗七星が輝いた瞬間に死ぬ」という、原理不明の高難度な性能。才能の無駄遣いが生み出した奇天烈奥義と言えよう。


 それが災いしたのか、TVアニメ版では、奥義を披露するエピソードごとまるっとカットされてしまっている。アニメに登場しなかった奥義は、これと北斗断骨筋の二つだが(カイオウ死後を除く)、断骨筋の方はゲーム等でちょくちょく見かけるのに対し、幻闇壊の方は完全に無視され続けている状況だ。まあ厳密に言うなら、そもそも原作にも登場していないんだけどね。シャチによって「似たなにか」がお披露目されただけなので。


 おそらく奥義の用途は「人々の恐怖を煽り、己の名を知らしめる」事にあるのだろう。直ぐには殺さず、あえて数日の命を与える事で、修羅を喰らう羅刹の脅威を人々に広める。まさに拳王様秘孔 新血愁を用いた理由と一緒だ。流石はラオウチルドレンの一人である。
 ただ、新血愁は3日というタイムリミットさえ設定すればいいが、幻闇壊はそうはいかない。もし幻闇壊の方も死亡時間をセットする奥義だとするならば、何時何分何曜日に星空が見えるのか、正確に読み切る能力が求められる。そんなものはラプラスの悪魔でしか解りようがない。


 となると、やはり奥義を発動させるスイッチは、北斗七星にあると考えられる。その謎の解明に役立ちそうな奥義がひとつある。FCソフト『世紀末救世主伝説 北斗の拳2』に登場した、北斗紫滅光破だ。攻略本の奥義解説にはこのようにある。





太陽光を利用した一種のオーラ拳で、
特に紫色の物体に威力を発揮する。
ソリアの紫の鎧が災いしたのだ!



 つまり北斗神拳は、自然光を奥義に利用することが出来るということ。しかも特定の色にだけ反応するという細かな設定まで可能だという。

 夜空の星々も、当然光を放っている。大きさや距離によって明るさも違うし、星の表面温度によって色も変わる。その星光の微妙な違いを区別し、北斗七星の光にのみ反応するよう設定された秘孔。それこそが幻闇壊の正体ではないかと思われる。



 更に発展させて考えてみよう。光がどのような色に見えるか、視認できるか否かは、光の持つ「波長」が関係している。可視光線は赤橙黄緑青藍紫の七色として目に映り、波長が短くなるにつれて赤から紫へ。それを越えると視認できない紫外放射となる。つまり光に差異を生むのは波長であり、幻闇壊はその波長の違いによって北斗七星の光を区別しているのだと考えられる。

 しかし一般的に「波長」と聞いて思い出されるのは、光よりもむしろ「音」だろう。周波数で言うと、音の波長は光の100万倍。遥かに波が緩やかなのだ。つまり音の波の方が光の波よりも遥かに区別しやすいという事。ならば当然、特定の「音」にのみ反応する秘孔も可能であろう。









 その「音に反応する秘孔」を用いたと思われる場面がこれだ。





 ジャッカルを追うケンシロウは、別働隊の男に秘孔を突き、「メッセンジャー」としてジャッカルのもとへと送り出した。男が本隊に合流し、ジャッカルに報告を済ませたその瞬間、男の頭部は秘孔によって爆ぜた。

 男がいつジャッカルと合流するのかはケンシロウにも判らない。にも関わらず、ベストタイミングで破裂させることができたのは、この瞬間に男が秘孔が起動する条件を満たしたからだ。その条件とは、ジャッカルの声。トヨの村で聞いたジャッカルのダミ声を記憶していたケンシロウは、その声音の波長を秘孔のフラグに設定することで、再会した瞬間に爆死するというホラーを演出したのである。





 また、TVアニメ版には、ケンシロウが雑魚達を蹴散らした後、フィンガースナップ(指パッチン)をした瞬間に一斉に爆発するというシーンがある。これも指を鳴らす音を爆発の起動音に設定することで実現させていたのだろう。わざわざタイミングが一緒になるよう一人一人の余命時間をズラして突くなんて事はしてなかったんですよ!派手な演出の陰で涙ぐましい努力なんてしてないんだからね!