ラオウ伝 激闘の章 |
ストーリー | 登場人物 | 流派・奥義 | STAFF |
無法の世界に覇を唱える男、ラオウ。 自らを拳王と名乗り、民を支配したラオウであったが、その覇道の前に立ちはだかる一人の男がいた。 軍入りを拒んだ男に対し、執拗に鞭を打ちつける拳王部隊。男の処刑を決めた拳王部隊は、その執行人を村人の中から選ぼうとする。その時、一人の男がその役目を名乗り出た。手渡された刀を男が振り上げた瞬間―――その刃が突き刺さっていたのは、拳王軍兵士の頭であった。怒り狂い、一斉に男に襲い掛かる拳王部隊。だが数十もの兵士達は、男に軽く指で突かれただけで、次々とその身を宙に飛散させていった。男の名はケンシロウ。弱き者のために戦い続けるその男は、人々から救世主と呼ばれる、北斗神拳の伝承者であった。恐怖の覇者と、民衆の救世主。運命は、二人を凄絶な戦いへと導こうとしていた。 死の海を望む岸壁の上、レイナと赤鯱は、ラオウを待ち続けていた。この海の向こうにあるというラオウの故郷、修羅の国。その国を平定することが、ラオウの最終目標であり、そしてラオウとレイナが幼き日に交わした約束でもあった。しかしレイナが待っていたのは、覇道の完成ではなかった。ユリアの死によって失われた、ラオウの愛―――。いつかラオウが愛を取り戻すその日を、レイナは待ち続けていたのだった。 |
覇道完成を目前に控え、無敵の軍団と化した拳王軍。だがそんな彼等に、果敢にも挑みかかる集団があった。南斗義勇軍。ケンシロウを救世主と信じて立ち上がったその男達を率いるは、南斗108派の頂点に立つ、南斗最後の将であった。 義勇軍の第二陣として現れたのは、将を守護する南斗五車星の一人、炎のシュレンであった。全身に炎を纏わせ、ラオウへと襲い掛かるシュレン。しかしその捨て身の攻撃も、ラオウには傷一つ負わせる事は出来なかった。彼等が命を賭けてまで守ろうとする、南斗最後の将。謎に包まれたその正体に興味を抱いたラオウは、配下のギラクに偵察を命じる・・・ 救いを求める民達のために生きよ。トキの残したその言葉を胸に、再び宿命の旅へと出ようとするケン。だがその時、リンの悲鳴が轟いた。突如現れた、山のように大きな男―――。自らを鬼のフドウと名乗ったその男は、かつてリュウケンに戦いを挑み、勝負を避けられたという経歴を持つ男であった。しかし、ケンもまたフドウと戦おうとはしなかった。ケンも、そして師リュウケンも、悪人ぶるフドウの内に隠された善の心を見抜いていたのである。ケンシロウという男の大きさをみたフドウは、その場に平伏し、全てを語った。南斗五車星の一星、山のフドウ。彼の役目は、ケンシロウを、自らの主である南斗最後の将のもとへと案内することであった。 フドウの動きは拳王軍にも伝えられていた。南斗最後の将とケンシロウが手を組めば、義勇軍が勢いを増す事は確実であった。しかし、危惧する将軍バルガをよそに、ギラクは拳王に媚び諂いながら言った。一気に義勇軍を制圧して、この国を手に入れてしまおう―――。その案に乗り、出撃を決めたラオウであったが、彼の中にはある迷いがあった。 その夜、ラオウの前に現れたのは、師リュウケンの亡霊であった。お前がギラクの案に乗ったのは、ケンシロウと戦いたくないからだ。そう告げるリュウケンに対し、ラオウは言った。ケンシロウと戦えば無傷ではすまない。もし俺が傷を負えば、軍は崩壊する。それを防ぐためにも、俺は傷を負うことすら許されないのだ、と。一見強固な己の覇道が、実は脆弱なものであることを、ラオウは知っていた。しかしそれでもラオウは覇道を往かねばならなかった。天がそれを許す限り・・・、 ガソリンを入れに立ち寄ったフドウの村では、フドウが育てる数多くの孤児達が、その帰りを待っていた。子供達のためにもお前を連れて行くわけにはいかない。そう言って一人で城に向かおうとするケンに対し、フドウはいままで隠してきた真実を明かした。南斗最後の将の正体―――それは、ケンシロウが唯一愛した女、ユリアであった。シンの城で命を絶とうとしたユリアは、南斗五車星によって命を救われ、そしてラオウに知られぬようにその正体を隠し続けてきたのであった。 だがその頃、ラオウもまた将の正体を知っていた。南斗の居城へと潜入したギラクは、隠されていた将の素性を目にし、ラオウへと伝えていたのである。ほぼ同時に南斗の城へと到着した二人は、ユリアを目指し、城の中へ・・・ |
今のケンシロウではラオウに勝てない。そう考えるリハクは、自らがラオウの足止めとなり、ケンとユリアを城から逃がそうと考えていた。だがケンは逃げなかった。ラオウあるかぎりユリアに生は無い。ラオウを倒すまで、ケンはユリアと会うことはできなかったのである。そしてケンシロウは、それを成せるだけの力を手に入れていた。北斗神拳の究極奥義、無想転生。哀しみを知るもののみが成しうるというその奥義は、ラオウの拳に次々と空を切らせ、その身体に恐怖を与えたのであった。しかし勝負が決しようかというその時、凄まじい爆音と共に、床が崩れ落ちた。リハクの仕掛けた最後の罠が発動したのである。だが、運はラオウに味方した。ラオウが落とされた遥か下の階層。そこにあったのは、ケンを待ち続けるユリアの姿であった。 ケンシロウに恐怖を感じたという事実。ユリアに情をかけられる今の自分の立場を、ラオウは許せなかった。そんなラオウが、恐怖を払拭するために選んだ方法。それは、かつて唯一己に恐怖を抱かせた男・・・鬼のフドウと闘い、その鬼の血を飲み込む以外になかった。フドウの村へと訪れたラオウは、子供達の命を盾に、フドウへの戦いを挑む・・・ 再び鬼となりて、ラオウへと挑みかかるフドウ。圧倒的な実力差の前に、一方的にやられるフドウであったが、何度倒されても彼はその身を起こし続けた。フドウに歩を進ませていたもの、それは幼き子供達の哀しき瞳であった。その眼にケンシロウの幻影を見たラオウは、いつの間にかその身を後退させていたのであった。 拳王軍の射った巨大な矢によって、フドウは絶命した。だがそれは、己が境界線よりも退いた場合、自らの背に放てとラオウが命じたものであった。ラオウのためにやった部下達の行動は、ラオウにとっては侮辱でしかなかった。 |
迫り来るケンシロウとの決着の時。未だ哀しみの正体を掴めないラオウに、トキの霊が語った。レイナがラオウのために闘っていた理由。そしてラオウがユリアを手に入れた理由。それを成したのは野望ではなく、愛―――。それが判らぬうちは、決して無想転生を纏う事は出来ないだろうと。もはやラオウに残された道は一つしかなった。愛を知らぬラオウが哀しみを知る方法、それはユリアをその手にかける以外に無かった。部下達の制止をふりきり、ユリアに拳を突き入れようとするラオウ。しかしその時、ユリアは咳と共に血を吐いた。彼女は不治の病に犯されていた。残り少ない命、ユリア天命のままに生きる決意をし、愛するケンシロウにもその正体を隠し続けてきたのである。平和のため、幸せも命も捨てたユリアの覚悟は、枯れていたはずのラオウに涙を流させた。だがそれでも、ラオウはケンシロウとの決着をつけなければならなかった。ユリアへと放たれた一撃、それは"哀しみ"を帯びたラオウの拳であった。 ギラクをはじめとした将校達は、褒美を貰えると報され、玉座の間へと呼び出されていた。だがラオウが彼等の与えた褒美とは、死であった。自らが斃れた後、訪れるのは魂の平和でなくてはならない。そのためにラオウは、、腐った臣下の者達を一掃する必要があったのである。ケンシロウとラオウ。二人の戦いが、互いにこの世の平和のを望むためのものであったことを、バルガは今初めて知ったのであった。 |
北斗練気当座。黒王に導かれケンが訪れたその場所は、かつて彼等が修行に励んだ地であった。ケンシロウとラオウ。北斗最強にして最期の闘いが、幕を開ける。無想転生の前にやはり成す術無いように思われたラオウであったが、ケンシロウの拳もまたラオウの実体を捉えられなかった。ユリアをその手にかけた事で、ラオウは哀しみを知り、無想転生を会得していたのだった。 ラオウ無き拳王軍は、リハク達義勇軍の前にあっけなく鎮圧されていた。ラオウが覇行を捨てた理由を問われたバルガは、涙を流し答えた。全ては真の覇行成就のため・・・。この世に魂の平和をもたらすため、自らよりも強い"天"に倒される事こそがラオウの本望なのだと。 ぶつかりあう最強の二人。互いに究極奥義を纏った今、彼等の戦いは、ただ殴りあうだけの喧嘩へと昇華されていた。それはまるで、幼き頃の二人の戦いのようでもあった。かつてケンシロウはラオウに言った。もしラオウが道を誤ったとき・・・それを止める役目はトキだけのものではない。北斗の兄弟である自分にもその権利はあるはずだ、と。ケンシロウもまた、偉大なるラオウを超えるために今日まで拳を磨き続けてきた男なのであった。 迫る決着の時を感じ、その身体に闘気の塊を纏わせるラオウ。だがケンは、ラオウを見ようとはせず、その闘気の壁だけを見ていた。互いに拳を見切った勝負に決着はない。ならば闘気を誘い、その乱れに乗じて無想の一撃を放つ。それがこの闘いを決する唯一の方法だと、ケンは考えていたのである。成す術をなくしたラオウは、意を決し、闘気の放出を止めた。しばしの静寂。そして放たれる、互いの全霊の拳。相手の身体を貫いたのは、ケンシロウの拳であった。 二人の勝敗を分けたもの。それは、互いの背負った愛の重さだとケンシロウは語った。数々の強敵達との戦いを潜り抜けたケンシロウは、その哀しみを背負うことで、今ラオウを越えたのである。だが、ラオウも愛を捨てていたわけではなかった。ラオウはユリアを殺してなどいなかった。平和のために殉じようとしたユリアの心は、ラオウの心に愛を取り戻させたのであった。恐怖による統治では、真の平和は訪れない。その事を知るラオウは、統一を果たした後、愛を持つケンシロウによって倒される事を望んでいた。だからこそラオウは最期にこう口にした。わが生涯に一片の悔い無し、と―――。高々と腕を突き上げ、暗雲をも突き破ったラオウの最期の一撃は、文字通りこの世に光を取り戻したのであった。 約束通り、ラオウはレイナのもとへと帰ってきた。遺灰へとその姿を変えて。変わり果てたそのラオウの姿に、レイナは呟いた。おかえりなさい、と。修羅の国を平定するというラオウの夢は、果たされなかった。だがレイナは信じていた。いつの日か、ラオウの意志を継ぐケンシロウが、この海を渡ることを。かつてラオウがケンシロウを抱いて海を渡ったように・・・ |
ストーリー要点抜粋&考察 | |
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原作からの追加&変更シーン | |
【南斗の都へ】 ・南斗最後の将の軍が「南斗義勇軍」という名前に。風の旅団などの五車の軍は登場せず。 ・シュレンの戦い方が変更。炎の塊となって正面からぶつかり、押し合いの末に吹き飛ばされ、消滅する。 ・トキの最期が「リュウガを抱えて死ぬ」から、「ケンに抱えられて死ぬ」に変更。サークレットもつけたまま。 ・原作のフドウはウドの大木を装ってケンに近付くが、本作では鬼のフドウとして勝負を申し込む形で接近。 ・原作では歩いて南斗の都へ向かうが、本作ではトラックの荷台に乗って移動。フドウの村で燃料補給する。 ・原作ではフドウが負傷した状態で村へと帰ってくるが、本作では無傷。しかし同様に村に残される。 ・原作ではジュウザとの闘いから将の正体を知るが、本作ではギラクからの報告で知らされる。 【南斗の城】 ・原作では南斗の城の前でケンとラオウが鉢合わせるが、本作ではケンが先に入る。 ・リハクの罠が原作とはかなり変わってている。最初に巨大な壁を落とすのが、二対の石像に変更。その後、巨大な鉄球で押しつぶそうとするも、パンチ一発で跳ね返される。矢の一斉放射に対しては、原作では床をひっぺがして盾にするが、本作では超スピードで駆け抜けてそのままリハクの首を捕らえる。 ・トウは登場せず。 ・キムの回顧はなし ・原作で最初に無想転生を使うのはダウン後の追討ちに対してだが、本作では壁に追い詰められての一撃。 ・ラオウが覚悟を決めて鎧を脱ぐシーンはなし。 ・ケン、目を負傷せず。 【フドウの村へ】 ・ウサは登場せず。 ・ジャドウ登場せず。 ・拳王軍、フドウのもとへと赴いた際に、先制の矢を射る。フドウ手刀で全て叩き落す。 ・小手調べの為にフドウに嗾けられる男は登場せず。 ・己を射らなかった部下達を殴る際、原作では多数の兵士を殴り飛ばしたが、本作では一人だけ。もう一人の首を絞めているときにバルガに止められる。 【練気闘座へ】 ・ラオウが炎の中の焼けた石を砕くシーンに、トキの亡霊が登場。 ・「我等の思慮の足りなさが・・・」という台詞や、ラオウの足に矢を射る役が、バルガの役目に変更されている。 ・原作では荒野に黒王号がくるが、本作ではフドウの墓の前にまで黒王が迎えに来る。 【最後の戦い】 ・原作では闘いの無惨さを知った拳王軍が、武器を炎で焼くが、本作では義勇軍の前に落城し、降伏。 ・過去に練気当座でユリアと出合ったシーンはカット。 ・二人の幼い頃の姿が見えた際に、過去の二人の組手シーンが挿入。道を誤った時に拳を封じる役目を 自分ではなく、トキにだけ託した事を不満に思い、ムキになってラオウにつっかかっていくケン。 ・決着の際、原作ではラオウの拳を交わした後にケンが拳を叩き込むが、本作ではケンが先に叩き込むだけ。 ・ユリアの命があと数年はもつというラオウの台詞は無し。 |