ストーリー | キャラクター | 流派・奥義 |
数ヶ月前。拳王軍が支配する村に、一人の男が現れた。顔の右面にだけ仮面を被ったその男は、凄まじい強さで、暴徒達を次々と切り裂いていった。彼の名はガルダ。南斗聖拳の一派、南斗神鳥拳の使い手であり、今は拳王軍の将軍・密偵として、各地を渡り歩いている男であった。 ガルダの目的。それは、南斗最後の将と呼ばれる者の首を獲り、その座を奪い取ることであった。将の行方を追うガルダは、かつてカサンドラの獄長ウイグルのもとを訪れ、将の居城の場所を示す地図を受け取っていた。だがそれは、南斗の者にしか謎を解けぬという、白紙の地図であった。南斗を冠する拳の使い手であるにもかかわらず、その秘密を解くことができなかったガルダは、ただあても無く各地を彷徨うことしかできずにいたのであった。 訪れた街がまた空振りに終わったかと思ったその時、ガルダに向けて小便をひっかけようとする男が現れた。ふざけた事をするその男に激怒するガルダは、渾身の拳を繰り出すものの、相手はその攻撃を華麗にいなし、さっさと逃亡。怒りの収まらぬガルダであったが、次の瞬間、白紙であった地図に突如絵が浮かび上がってきた。男の逃げた窓から差した慈母星の光・・・南斗を導くその光こそが、将の居城への導きでもあったのである。結果的に自らに謎を解かせたその男との出会いに運命を感じるガルダ。だがその男の正体が、ガルダが忌み嫌う南斗の将、その守護星である五車星の一星を担う雲のジュウザだった事に、彼はまだ気付いてはいなかった。 |
ガルダが将の居城をつきとめたとの知らせは、拳王の耳にも届けられていた。ガルダの素性を量りかねるリュウガは、この事実を危惧するが、拳王が興味を持っていたのは南斗の将の方であった。拳王が覇道を成すための最後の一片。それが南斗最後の将という存在なのであった。 遂に南斗の将の居城をその目に捉えたガルダ。だがその城下の街は、風の旅団と呼ばれる者達の厳重な守りで固められていた。現れた不審な男を排除せんと、一斉に襲いかかる兵達。だが次の瞬間、彼らはガルダが投げた無数の刃にバイクごと切り裂かれていた。相手が南斗聖拳の使い手であるという事、そしてその味方である筈の南斗の者が拳王の配下についている事実は、将の軍勢に戦慄を走らせるのであった。 その時、ガルダの前に一人の男が飛び出してきた。男は、風の旅団を率いる五車星の一人・風のヒューイであった。鋼鉄をも断ち切る真空の拳で、ガルダに戦いを挑むヒューイ。しかしガルダの南斗神鳥拳は、全てにおいてヒューイの力量を上回っていた。南斗神鳥拳奥義 輝翔斬で吹っ飛ばされ、あえなく戦闘不能に陥るヒューイであったが…… |
たった一撃で敗北を喫したヒューイ。だがガルダは、その命を奪おうとはしなかった。生きて己の無力さを、そして無能な将の配下である悲運を呪わせるために。 続いてガルダの前に立ち塞がったのは、朱の軍団を率いる炎のシュレンであった。炎を用いて幻惑する戦法や、得意とする空中戦で渡り合うシュレンであったが、やはりその強さはシュレンをはるかに上回っていた。それほどの腕を持ちながら、そして南斗でありながら拳王に降ったガルダに、その真意を問うシュレン。それに対し、ガルダは答えた。安穏と暮らすだけの南斗の将よりも、暴力という方法ながらも世を統治しようとする拳王の方が遥かに世の流れに沿っていると。しかし、五車の男達は知っていた。ガルダが忌み嫌うその南斗の将こそが、この世に光を齎す唯一の存在。将なくして真の平定などないということを。己達の信ずる将のため、シュレン、そして再び戦線に戻ってきたヒューイは、決死の覚悟でガルダに奥義を繰り出す。しかし捉えたかに思われた二人の拳は、何故か虚空を切っていた。炎と風。二人の拳によって生じた温度差を利用し、ガルダは自らの位置を錯覚させていたのであった。反撃の輝翔斬により、二人をまとめて撃退したガルダは、再び将の城へと向けて歩き出す。 その頃、リハクより召集を命じられた山のフドウもまた、将の居城へと向かっていた。そんな彼の前に偶然現れたのは、同じ五車星の一人、雲のジュウザであった。同じ宿命を持つ者として、ジュウザを無理矢理トラックに同乗させようとするフドウ。しかし束縛を嫌うジュウザが、その頼みを聞き入れるはずも無かった。ガルダ一人に倒されるようであればその程度の器であったということ。その程度の"男"に命をかける価値はあるのか―――。そう言って再びジュウザは荒野に姿を消したのであった。 |
襲い掛かってくる海の兵団を次々と切り裂きながら、将の居城を突き進むガルダ。その頃、海のリハクは、南斗神鳥拳の正体を探るため、城の書庫に篭っていた。隠されていた南斗の歴史の真実をつきとめたリハクは、なんとしてもガルダを止めんと、将を守る最後の砦としてガルダの前に立ち塞がる。 仕掛た無数の罠を突破されたリハクであったが、彼にはまだ秘策が残されていた。仕掛けによって床に張り巡らされた大量の水。それを利用して戦うという"海"のリハク独特の戦法の前に、想定外の苦戦を強いられるガルダ。噴き上げられた水に視界を奪われたガルダが、無防備となったその瞬間、彼の体にはリハクの両手が突き刺さっていた。だがそれはガルダの目論見通りであった。自らの体に突き刺さる腕をしかと掴むことで、リハクを捉えることに成功したガルダは、奥義 輝翔千烈弾によって勝利をもぎとったのであった。 |
風、炎、海が倒れても、まだ五車の星は死んではいなかった。体当たりで壁もろともガルダをフッ飛ばし現れた、山のフドウ。更にはヒューイ、シュレンも駆けつけ、一気に数的不利に立たされるガルダ。しかし、それでもガルダの意思は揺らぐことは無かった。無力なる南斗の将。かつて己達が住んでいた南斗聖拳の村が滅びたのも、この乱世に動こうとしないのも、そして今、自分ひとりにいい様にされているのも、全ては将に力なき故―――。南斗の影としての宿命を全うした母ビナタの死を無駄にする将への怒りが、ガルダを突き動かしていたのだった。苛烈を極める戦いの中、ガルダは叫ぶ。「力が全てでは無いなら見せてみよ将!真の平定を!」その叫びに応えるかのように、遂に南斗最後の将がガルダの前へと姿を現したのだった。 仮面の下から現れた美しき女、ユリア。彼女が取り出したのは、神鳥拳伝承者の証の面―――。ガルダが身につける「戦の面」と対を成す「仁の面」であった。かつて南斗が二派に分かれて争っていた頃、次代の慈母星となるのが幼いユリアである事を不服とした覇権派は、ビナタを槍玉にあげ、これを妨害しようとした。だが直にユリアと会い、その力を悟ったビナタは、彼女に仁の面を託し、自らは忘星として彼女を守るという宿命に生きたのであった。だが、ガルダは納得できなかった。この乱世と無縁に生きる南斗の将が、母が命をかけて守ろうとした救世主などであるはずがない。既に死を覚悟したユリアに向かい、渾身の一撃を振り下ろすガルダ。だがその一撃が砕いたのは、自らの被る仮面であった。その面が意味する「鬼神」を破壊することで、ガルダは自身の戦いに終止符を打ったのであった。 母が死をかけてまで守り抜こうとした南斗最後の将。その慈母の力を見届けたくなった。そう言ってガルダは、将のもとを去った。それはまさしく南斗の影として生きる忘星の宿命、神鳥拳伝承者としての生き様であった。そしてこの戦いは、五車星にも大きな影響を与えていた。もはや逃げ隠れはしない。この世に真の平安を取り戻すため、我等粉塵となっても本望。今まで守に徹し続けてきた五車星を動かしたもの。それはまさしくガルダの死を賭した覚悟に他ならなかった。 |
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