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蘭山紅拳
らんざんくれないけん



使用: ベラ (対 ケンシロウ)
ベラ (対 ターゲル)
登場: アニメ版北斗の拳(38話)


 その動きは風に花びらの舞い散る如き華麗だが、その美しさの中に計り知れない破壊力を秘めた拳。TVアニメ版北斗の拳に登場した、女拳士ベラが使う拳法。殺人拳ではないらしい。

 かつてベラの父親が伝承していたが、病に倒れたため、拳を絶やすわけにはいかないという父親の遺言を受け、女であるベラが伝承。だがその後、拳の極意書をウイグルに奪われ、ベラはカサンドラに投獄。極意書の返還と、母親の命を握られたベラは、仕方なくケンシロウと対決し、軽功術を生かした体術で、(女に手を出せない)ケンシロウを一方的に攻め立てたが、己よりも少女の命を優先したケンシロウの姿を見て降伏した。
 その後、ターゲル黒掌十字拳と対決し、体を十字に切り裂かれて敗れ去った。



 ベラの構えはどう見てもフラメンコである。咥えた薔薇が決定打だ。あの突き上げられた手にカスタネットを持たせ、長めのスカートを履かせれば、どこからどう見てもジプシーである。フラメンコはスペイン南部のアンダルシア地方で生まれたダンス。おそらくこれを中国拳法と融合させたのが蘭山紅拳なのだろう。舞踏・フラメンコを題材にして拳を作り、蘭山で完成させた異端の天才がいたのだ。
 フラメンコ拳と考えるなら、闘い方はある程度想像できる。おそらくマタドール(闘牛士)のようにヒラヒラ相手を交わしながら側面に回り、攻撃に転じるのだろう。その動きは中国拳法の八卦掌に似ているかもしれない。ちなみに「ベラのオヤジ(ハゲ)も薔薇をくわえてあの構えなのか」と思われた方もいるかもしれないが、男性のフラメンコダンサーも居ることを考えれば別に変ではない。まあ男性の場合はマタドールみたいな凛々しい格好で、力強い踊りをするらしいんだが。蘭山紅拳は男性と女性とで構えが違うって事だろう。
 壁を利用して飛んだり、瞬間移動のような軽身功も、そのフラメンコの延長線上であろう。これが千葉氏の説明にある「その動きは風に花びらの舞い散る如き華麗」の部分である。しかし「その美しさに秘められた破壊力は量りしれない」の部分が謎だ。彼女はその細身から、どうやってその破壊力を生み出しているのか。
 フラメンコを調べていて面白い記述を見つけた。フラメンコには、アイレなるものが必要不可欠なのだという。アイレとは、直訳すると「空気」。フラメンコ的な雰囲気、みたいなものらしい。生きる喜びや悲しみ、苦しみを、フラメンコで表現したものがアイレなのだ。そのアイレのこもったフラメンコを観たり聴いたりすると、独特のオーラみたいな波長を感じ、血が騒ぎだすのだという。もしかして蘭山紅拳は、このアイレによる血の活性化を利用しているのではないだろうか。フラメンコが持つ独特の興奮作用を己に施す事で、自らの身体能力を高め、普段では発揮できないパワーをも生み出す。つまり北斗神拳が呼吸法で潜在能力を引き出すように、蘭山紅拳はダンスによりその力を引き出しているのではないかということだ。映像ではベラが踊っているような様子は見受けられないが、彼女クラスになると踊らずとも常時アイレ状態になれるのだろう。

 ちなみに蘭山という山は実在しない。しかし、甘粛省にある西夏王陵から西へ30kmいくと、賀蘭山と呼ばれる山脈がある。賀蘭山は、西暦366年、僧侶が修行の場として鳴沙山の崖に石窟を掘り始め、以後1000年間に渡って掘り継いだという莫大な数の窟があるらしい。その数1000以上あり、現在発掘されているのは500窟程度。その中には総面積4万5000uに及ぶ壁画と、2000体を超える塑像があるという。ここが蘭山紅拳発祥の地・・・かもしれない。