さきの南斗大戦では、シュウやレイが率いる和平派についたシンであったが、それ以降はどちらにも組せず、よく言えば中立、悪く言えばやる気無しのグータラ生活を送り続けていた。
そんなシンのもとに、
ジャギ・・・と、
アミバの二人が訪れた。
あれ、余計なのもきたぞ?
(ユリアを)諦めないで!と、シンの燻っていた想いに再度火をつけんと、渾身のエールを送るジャギとアミバ。だが、治りかけのかさぶたをペリペリはがさんとするその二人の行為は、今のシンにとっては絶対にやってはならないことであった。
ブチ切れたシンの前に、一味もろともコテンパンにいわされるジャギアミ。
だがそのシンの凄みを受け、二人はこう切り返す。
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「そ、その執念だ!
その執念さえあれば、ユリアは奪える!」 |
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「そ、そうだ! 己の欲望に素直になれ!
迷うことないではないか!欲しいものは奪い取れ!」 |
そういい残し、二人はスタコラと逃亡するのであった。
「執念」・・・・「欲望」・・・・
シンの代名詞とも言えるこの二大詞が
こんな奴らからのインスパイアだなんて
イヤだ――――っ!
しかしこないだのユダといい、今回のジャギ&アミバといい
悪い事を企むにしてもここまで体張るなら許されていいと思う。
あの日以来、シンは活動的に動き始めていた。
「来るべき時」に備え、着々と自らの軍団を育て上げてゆくシン。
そんな中、シンの耳に、捨て置けぬ報せが入れられる。
ケンシロウとユリアが二人で旅立とうとしている・・・・
少し前までの自分であれば、無関心を決め込んでいたその報せ。
だが今のシンには、先日まで無かったはずの二つの意思が生まれていた。
「欲望」そして
「執念」という名の意思が・・・。
兵を連れて現れたシンの手によって、ケンシロウとユリアの華々しい門出の時は、一瞬にして血の惨劇へと変えられた。ノーダメで敗北した男の頭を踏みにじり、更にはその体に深々と指を突き入れながら、高笑いをあげるシン。
彼を変えもの・・・それはあの時、あの男達から言われた言葉に他ならなかった。
1人いねぇ――――!!
記憶から抹消された―――!!
シンが自らを
「KING」と名乗った理由。
それは、ユリアを
「QUEEN」にするためであった。
女王であるユリアの前にこの世の全ての人間をひれ伏させること。
それがシンの考える、ユリアへの最大の贈り物だったのである。
世を統べるQUEENに相応しきは、屈強なる男達の軍団。
その実現のため、シンは自ら戦場へと赴き、実戦形式による候補者のスカウトを開始するのであった。
よく働くなーこの王様。
まず声をかけてきたのは、後に
スペードと呼ばれることになる、粗暴な男であった。
彼の自己アピールによると、
特技はボウガンらしい。
とくぎ・・・?
あれが・・・?
お次に黍団子を欲してきたのは、アルフレッド君こと
ハートであった。
デブ将に対しても「デブ」ではなく「肉厚の体」という表現を用いるなど、肥満者に寛大な考え方を持つシンにとって、その男の肉体はあまりにも魅力的な逸材であった。
暴れ犬とデブ猿をお供に加えたシン太郎さん。
そんな彼の前に現れた、三人目のお供であるキジは・・・
何故かジュウザであった。
力で何でもできると思い込んでいる野郎に現実を教えてやるぜ!と意気込んで戦いを挑んでくる雲兄ィであったが、逆にその力の前にあっけなく返り討ちにあい、ジュウザはすごすごとその場を後にするのであった。
っていうかユリア取り戻しに来たとかでもないのね。
フドウといい、五車星は何しにきたのかわからん奴ばっかだな。
強力な軍団も手に入れた。
煌びやかなサザンクロスも完成した。
多くの人間の哀しみを礎にして・・・
己が生きていればシンは更に酷い事を続ける。
その哀しみの連鎖をとめるためにユリアが選んだのは、シンの野望の根源にある自分という存在を抹殺するという方法であった。
だが―――
城のテラスから身を躍らせたにも関わらず、ユリアの身体には傷一つなかった。
彼女を救ったのは、リハクをはじめとした南斗五車星の面々であった。
彼等は、ユリアの身に何かが起こる万が一の時に備え、物陰からずっとシンとユリアの動向をチェックするという、世が世なら民事待ったなしのプライベート侵害をもいとわぬ監視を行っていたのである。
恐怖の暴凶星の接近を知らされたシンは、心を決めた。
己の生は全てユリアの為に。
五車星に愛する女を預けたシンは、ユリア殺しの汚名を被り、拳王様と対峙する。
五車星がサザンクロスを発って未だ数時間・・・・。ユリアが確実に拳王様の手から遠ざけるために、シンはここで拳王様の足を止めねばならなかったのだった。
妹の仇と怒り狂うリュウガを退け、遂にラオウ様の前に立つシン。
何故ユリアを殺したのか。そう問われ、シンは答えた。
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「殺せば誰の手にも渡らぬ・・・・・・
違うか、ラオウ?」 |
拳王様グゥの音もでねぇ!
己が宿命に生きたとき、男は真の力を手に入れる。
ユリア亡き今、シンの歩を進ませるものとは―――。
己の剛拳を前にしても全く怯むことなく立ち向かってくる「殉星」としてのシンの姿に、一抹の違和感を覚える拳王様であったが、今はそれ以上問うことはしなかった。この戦いの決着をつけるのは自分ではなく、ケンシロウであることを予感した拳王様は、このユリア無き街からの撤退を命じるのであった。
うーむ・・・性能は毎回イマイチなのに
幻闘編じゃいっつもカッコイイんだよな、シンは。
決してハッピーエンドにはならないけどね。
〜エピローグ〜
その後、退屈を慰めるためにシンはユリアの人形をこしらえたそうな。
直立型!!
世が世ならジャパニーズオタク文化の急先鋒として名を馳せたであろうに・・・