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プレイ日記 【第44回】

最終章 北斗の男(3)







ナダイへの復讐という共通の目的の下、密かに手を組んでいた三人。


「艶っぽい女」「ゴリラ」「緑」という、改めてみるとドロンボー一味のような三人組であったが、本家のような絆は彼等の間に存在しなかった。

タルーガの凶弾は、「同志」である二人を容赦なく貫いたのだった。





タルーガの本当の狙い。

それはスフィア・シティの持つ核の力

それを我が物とするために、タルーガは「復讐」を口実にジャグレ、ライラと手を組み、ナダイをこの地へと誘き出したのであった。殺すためはなく、扉を開けさせるために。

その目的が果たされた今、タルーガにとってただの「手駒」に過ぎないジャグレとライラは、もはや用済みと化したのであった。






裏切りに次ぐ裏切り……。そしてジャグレ達の復讐までをも己の野望に利用せんとするタルーガに怒りを滾らせるケンシロウ。


そんな外道漢に鉄拳を叩き込まんと、タルーガに突進するケンであったが……






その拳が当たる瞬間、突如タルーガの姿が消失。

気付いたとき、タルーガの姿はケンシロウの数メートル後方……
そこで彼は、ナダイに銃口を突きつけて勝利の笑みを浮かべていた。


は、疾い!!

ケンシロウが眼で追えないだと!?
何故こんな奴が羅将ハンクラスのスピードを!?





その秘密は、彼の服の下に隠されていた。








こ、これは……!!


サイボーグ!!


男児なら100%反応する魅惑のワード「サイボーグ!」
輝くメタリックボディにみんなが夢中「サイボーグ!」
最後は自爆して読者が涙するパターン「サイボーグ!」



その要素だけで人気投票上位入り確定のキラー設定「サイボーグ」……
まさかこんなクソミドリにそんなトキメキな秘密があろうとは……
あっ、もしかしてあの超スピードは、加速装置だったとか……?






タルーガの身体は、その大半が機械に覆われていた。

199X年。タルーガは核の炎によって体の半分以上を失った。その後、欠損箇所を機械で補うことで生き永らえた彼は、その機械の力を借り、人間の限界を超えた力を手に入れることに成功したのだった。




しかし、その一方で、機械には明確な弱点も存在する。





それは「電気」

マシン系のモンスターが出現した際にはとりあえず雷属性の攻撃を選択するというのは、最早ゲーム界における一般常識と言えるだろう。



<水にも弱いぞ!





つまりタルーガにとってナダイは唯一の天敵であるということ。



<ワシもな!海だから!





その相性の悪さ故に、タルーガはナダイを力で捻じ伏せることが出来なかった。故に彼は、ジャグレ達と結託してナダイを誘き出し、「自らの意思で」扉を開けてもらう必要があった。

その後、不要となったナダイを「他の誰か」に片付けてもらう必要があったタルーガは、ケンシロウの力に目をつけた。今日ここでケンとナダイが闘い、ケンシロウが勝利したのも、タルーガの描いた筋書き通りだったのだ。






ううむ……目的や手段こそ外道極まりないが……

これは見事な謀略だと言わざるを得ない。

どこぞのヘッポコ軍師のヘッポコ采配とは雲泥の差だ。




<うるせーバカ










しかし、褒めると大概ロクなことにならないのが世の常。

あまりに策がハマって気持ちよくなっちゃったのか、人質を取っている状況を忘れて、全身で喜びを表現するという油断を犯してしまうタルーガ。






その隙をついて、ナダイのバリバリが炸裂!



<プッ!





思わず「びえええええ!!」と情けない声を出しちゃったタルーガは、激怒してナダイの脇腹を銃撃。そのままスフィア・シティの中へと逃亡するのだった。



<wwww








タルーガが向かったのは、核の発射装置のある「奇跡の間」
そして今、その部屋で起動装置を握っているのはユリア。
このままでは、核を手に入れるためにタルーガがユリアが殺すは必定。



最悪の事態を防ぐため、直ぐ様タルーガの後を追うケンシロウ。

だがその前に、彼はナダイに聴かねばならぬことがあった。



「……教えてくれナダイ。
 あの透明のドームを閉めることはできるのか?」







スフィア・シティがドームを開いたのは、ミサイルを飛翔させるため。

逆に言えば、ドームを閉じればミサイルは飛び立たない。

かつて核の炎を完全にシャットアウトしたほどの強度を持つドームならば、例え内部で核ミサイルが爆発したとしても、外の世界に被害が及ぶことは無い。そうケンシロウは考えたのである。





だがそれは、ドームを閉じた者が確実に死ぬことを意味する。

人類の救済と引き換えに、ケンシロウとユリアの身体は、塵一つ残さずにこの世から消滅することになる。




だがケンシロウは、それでも構わなかった。


ユリアが生き残るには、世界を犠牲にするしかない。
しかし例えそうして生き残ったとしても、彼女は自ら命を絶つだろう。
シンの暴走に責を感じ、身を投げた、あの時のように。



つまり世界の行く末に関わらず、最早ユリアが生き残る道は無い。

ならば彼女は、己の命と引き換えに、世界を救う方選ぶだろう。

そしてそんな女だからこそ、ケンは心の底から彼女を愛した。

最後にユリアと会い、たった一言を伝える。

ただそれだけ……その願いさえ叶うならば……
もはやケンシロウには一片の悔いも無かった。









死を賭した最後の戦いに向け、スフィア・シティを進むケンシロウ。

その行く手に立ちはだかるは、凶王軍の大軍勢



しかし、所詮彼らはナダイにコントロールされていただけの野盗。
そこには信念も、誇りも、そして将への忠誠心もありはしない。

彼らがエデンを翻弄できたのは、凶王として彼らを導いたナダイの優れた戦術があったからこそ。そんな優秀なる頭を失った今の彼らは、ただの烏合の衆。もはやケンシロウの敵ではなかった。







だがそれでも、時間稼ぎとしては十分……


「奇跡の間」へと先着したのは、タルーガの方であった。







だが、ユリアはまだ生きていた。

タルーガは、最初からユリアを殺すつもりなどなかった。





タルーガが抱く真の野望。

それは「支配」ではなく「浄化」



199X年、世界は核の炎に包まれた。
しかし、その叡智の炎がもたらしたのは混沌の世界。
強きものが弱きものを虐げる、獣が支配する醜悪なる世界。





何故こんな世界が生まれたのか。

それは「火力」が足りなかったから。

「強き者だけが生き残る炎」では足りない。

タルーガが求めるのは「全ての人間を焼き尽くす炎」




ユリアをこのまま目覚めさせ、今一度世界を核の炎で包む。

生き残るのは、この奇跡の間にいる人間。即ち、タルーガとユリア。

その二人の間に子を儲け、その子孫たちが新たなる人類史を築いていく。

それこそがタルーガの真の野望。高邁なる姦計。

そして「汚物は消毒」という概念の究極系。







「聖帝も拳王もいない新しい世界で……」






「俺は……神となる」





かつて「核」により身体の半分以上を喪失したタルーガ。

そんな男が今「核」の力で世界をリセットし、神になろうとしている。

これは「核」への、そしてそれを作った「人間」への復讐なのか。

それとも、もう彼は壊れてしまっているのか――――――。






タルーガの真意は判らない。

だが彼が野望を実現するには、超えねばならぬ壁がある。

第64代北斗神拳伝承者 ケンシロウ。

こことは違う世界で、「神」を目指した者達を倒してきた男。







北斗神拳は、時代に平安をもたらす英雄の守護拳。
その伝承者として、世界を破滅させんとする者を見逃すことはできない。




そしてなにより




「ユリアと子作りする」と宣言したこの男を




死んでも許すわけにはいかない。








ユリアの貞操をかけた、ある意味ケンシロウにとって過去最大級の
絶対に負けられない戦いが、始まろうとしていた。




次回、最終回!!








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