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プレイ日記 【第43回】

最終章 北斗の男(2)



ナダイは、世界のためにユリアを殺すべきだと言う。

ケンシロウは、ユリアも世界も生かす道を模索するべきと言う。



二人の意見が相容れぬ時は、闘い、勝利した方を正義とする。

それは、かつてナダイ自身が定めたエデンの掟。
其々が信じる正義のため、愛のため、今、二つの拳がぶつかり合う。





闘気を雷と変え、精神をも破壊する唯一無二の拳法、冥斗鬼影拳。
それは、もはや伝える者はいないとされていた幻の拳……
その最後の伝承者として、ケンシロウに己の全てをぶつけるナダイ。


全方位へと地走る強力な雷撃。

突き出した左手で全ての防御を担う鉄壁の構え。

瞬時に側面・背後へと回り込む熟練の歩法。

攻防全ての面において一切の死角なし。



だが、ここまでは以前の戦いでも見せた戦法。
一度対戦したケンシロウならば、問題なく対処できる範疇。

しかし、冥斗鬼影拳の真髄は、さらにその先にあった。






首に指を押し当て、己の身体に電気を流し込むナダイ。
全身を駆け巡る雷の闘気が、その身を熱く、赤き光りで満たしていく。








現れたのは「鬼」

拳の名が意味する、冥府に生きる鬼卒が如き姿への変異。
これこそが、冥斗鬼影拳の最終到達地であった。





言うまでも無く、その強さは圧倒的。

進化した雷神の拳が、ケンシロウを更なる窮地へと追い詰める。







だがナダイよ。



その拳…その姿…確かに今のお前は「鬼」かもしれない。

しかし今、お前の心は鬼に染まっているか?

ユリアを殺す事に一片の躊躇いも無い。そう言いきれるのか?





お前はかつて人類の為、妻の命すらも奪った。

だがその結果、お前は愛する娘に刃をとらせた。

以降、キサナは「親殺し」の業を背負って生きることになった。

そこに、お前は後悔を感じていたはずだ。

そんなお前が今、ユリアを殺して世界を守ったとして

キサナに、死んだ妻に、己を誇る事などできはしない。





大義はナダイにある。

だがお前は、その大義に僅かな疑念を抱いている。

己が正しいと信じながら、心咎める何かがある

ならばお前に勝利は無い。




何故なら相手は地上最強の男。

そしてユリアのために全てを投げうてる馬鹿。


迷いある真面目漢が

迷いの無い馬鹿に、


勝てるはずがないのだ!!





ナダイよ!喰らうがいい!


これぞ雑念無き愛の拳!!










手四つからの!!









ブリッジ投げ!!


しかも投げっぱなし!





ハン戦を彷彿とさせるまさかのプロレス技で闘いは決着。

冥界の鬼となり戦う拳、冥斗鬼影拳。
だが所詮鬼は、閻魔の従者に過ぎない。
かつて伝承者が「閻王」を名乗った北斗神拳に届かぬのは当然であった。







だがこのままケンを行かせれば、本当に全てが失われてしまう……
満身創痍の身体を起こし、再びケンシロウを止めようとするナダイ。




だがその時、拍手を打ちながら一人の男が現れた。




「いやぁ〜ありがとうありがとう〜♪
 これでやっと全ての目的を果たすことができたよ」









そう言いながら、一同の前へと姿を現したタルーガ


そして次の瞬間、タルーガの号令とともに、凶王軍の大部隊が出現
スフィア・シティの中へ向け、一斉に突撃を開始する凶王軍。


そうはさせじと、たった一人で大軍を迎え撃たんとするケンであったが……






「動くんじゃねえぞ!
 キサナがどうなってもいいのか!」











な、なにィ―!!??




ジャ、ジャグレ!!


何故だ……お前どうして……!!










「あら……ジャグレの言うことが聞こえなかった?」









ラ、ライラ!


まさかお前まで……!!



………いや、お前はそこまで意外でもないな。







突然、タルーガの側についたジャグレとライラ。
だがこれは「裏切り」ではなかった。

彼らは、初めから同じ目的を共有する「同志」
その関係を悟られぬよう、今日まで敵と味方を演じ続けていたのだった。





そういえば……いつかジャグレはこんな事を言っていた。

「誰でも多かれ少なかれ、自分のために嘘をついている。
 そしてその嘘がバレた時、裁かれる覚悟を持っている奴もいる。」


あれは、イスカの事を言っているのだと思っていた。
だが奴がリッパーである事を隠していたのと同じように、自分もまた素性を隠して生き続けている事への背徳感から思わず口をついた、ジャグレの本音だったのだ。




そう、ジャグレは己の嘘に「覚悟」を持っていた。

それこそが、ジャグレ、ライラ、タルーガが手を組むに至った共通の目的。







それは「ナダイへの復讐」




スフィア・シティの秘密を守るため、ナダイは多くの者を手にかけてきた。

その中には、ジャグレ、ライラ、タルーガの父親も含まれていた。

三人にとってナダイは、父の仇だったのである。




3年前に死んだとされていたナダイ。
だが彼が生きてエデンを出たことは確認されていた。
だってガバイだから。


姿をくらましたナダイを探すため、3人は各々の立場を利用して情報を集めた。
凶王の部下として。衛兵隊長として。ナイトクラブの支配人として。


そして事態は、ケンとユリアの登場で大きく動き出した。

やがて凶王の正体がナダイであることを知った3人は、彼が確実に動く今日この時を狙い、行動を起こしたのだった。




そんな3人の中でも、ジャグレの怒りは際立っていた。
何故なら、彼の父・ラジャは、エデンの初代衛兵隊の隊長を務めた男。
エデンのために尽くした人物であるにもかかわらず、無慈悲にその命を奪ったナダイに、ジャグレは計り知れぬほどの憎しみを抱いていたのだった。


だがジャグレは知らなかった。

かつてナダイの妻が「奇跡の間」に入ることになったのは、ラジャの凶弾による傷が原因であったことを。

スフィア・シティの力に魅了され、核の力を手に入れようとしたラジャは、ナダイの妻を撃った。故にナダイはラジャを殺し、そして危険を承知で妻を奇跡の間へと運んだのであった。





明かされた衝撃の事実に、愕然とするジャグレ。

だが、理由が何であれ、ナダイが父の仇であることに変わりは無い。

三人の間で交わされた「ナダイにも同じ気持ちを味あわせる」という取り決めを果たすため、キサナに銃口を向けるジャグレ。





その銃は、かつて父・ラジャが一人の女を撃った銃。

そして今、同じ銃を使い、同じ悲劇が繰り返されようとしている。

皮肉にも、その悲劇を起こした2人の忘れ形見達によって。





これが自分が望んだ復讐だったのか……

自分にキサナを撃つ事などできるのか……













ジャグレは、引金を引けなかった。

例えどれほどの怨讐に身を焦がされようとも、愛する女を自らの手で殺すことなど、ジャグレには出来なかったのだった。






だが同時にそれは、タルーガにとってジャグレが不要な存在に成り果てたことを意味していた。

「おつかれ」

先ほどのジャグレと対照的に、笑顔で引金を引くタルーガ。
放たれた銃弾が、ジャグレを、そしてライラの身体を鮮血に染める。





ジャグレ―――ッ!!

ライラ―――ッ!!








……といった所で、長くなったのでここで一旦切りますけど……


ここまでの流れを見て思ったこと、言わせてもらっていいですか?


銃が話のマストすぎませんか?

これ一応北斗の拳ですよね…?











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