第九章 究極への渇望
聖帝軍を退け、ジャギを葬り、ひとときの安息を手に入れたエデン。
だが一息つく間もなく、街には更なる脅威が迫っていた。
ある夜、突如エデンの街を大きな揺れが襲う。
だが、それはただの地震ではなかった。
揺れが収まった後、人々が目にしたもの。
それは、
ドームを解放したスフィア・シティ。
そしてその中で迸る
青白き電光。
このスフィア・シティの異変が、地震の発生に起因したことは間違いない。
そしてそれ以上の危機を予感させる、あまりに巨大な放電……
一体この街に何が起ころうとしているのか!?
しかし、ここで焦ってはいけない。
短期は損気。
急いては事を仕損じる。
待てば海路の日和あり。
発電施設がバチバチと音をたてて放電しているというヤバみMAXな事態ではあるものの、今日はもう時間も遅いということで、ケンシロウは
すみやかに帰宅しすこやかに就寝。
たっぷり睡眠をとった後、翌朝改めてキサナのもとへ訪れるのだった。
カテドラルに着くと、
キサナの従者がお出迎え。
そういえばキサナの従者さんってお二方いらっしゃるんですが、
どちらの方も
めっちゃ美人なんですよね……好きです。
特に右の方、超タイプです。全盛期のハル・ベリーみたい。好きです。
一方のキサナさんは、今日はやけにメイクのノリが悪いご様子。
昨晩の地震。そして突然のドームの開放。
キサナによると、その原因は
スフィア・シティの真実にあるという。
エデンの心臓とも言うべき「スフィア・シティ」。
その正体は、
世界最大の核ミサイル発射施設であった。
更にその軍事施設の動力は、内部にある
高速増殖炉で作られており、エデンの源である水や電気も、そのエネルギーを利用して生み出されているらしい。
透明な防壁によって核の炎による破壊を免れ、今でも世界を破滅させる力を有したまま稼動し続けているスフィア・シティ。
ナダイがこの地にエデンを創り、なん人も近づかせぬ強固な壁を作り上げたのは、その真実が外部に漏れることを防ぐためであった。
そして昨晩に起こった地震、ドームの解放、青白い放電は、その
「核ミサイルに関する何か」が動き出したことが原因ではないかという。
えーっとつまり、現状をまとめると……
なるほどなるほど……
ヤバすぎやろ
しかし、おかげで一つ分かった事がある。
北斗の拳序盤にあった「舞台は日本」という設定がここでも生きているのだとすれば、日本に核ミサイルの発射施設があるのはおかしい。つまりこっちの世界線では、
日本も核保有国となったのだと推測される。
そして90年代に日本国内にあった高速増殖炉は、福井県敦賀市の「もんじゅ」と、茨城県東茨城郡の「常陽」の二基のみ。
このどちらかの施設内に核ミサイルの発射基地を併設したのがスフィア・シティの始まりだと考えられる。当時の日本政府は、そこを国の最重要軍事施設と定め、他国からの核攻撃でも破壊されないよう強固なシールドで覆った。それがあの透明のドームというわけだ。
そしてケンシロウは、エデンを探して
北へと歩き続けた。つまりサザンクロス(関東)よりも南にある福井県は、除外される。
結論として……
エデン茨城県にあるということだ!!
「都道府県 魅力度ランキング」において6年連続最下位
(2018年現在)という不名誉な記録を更新中である同県は、ぜひこれをPR材料として活用すべきであろう。
ただ、所在地が分かったとて、キサナが茨城県民と分かったとて、現状の問題は何一つ解決されていない。
たっぷりのプルトニウムを有した施設が、
バチバチ放電中という事実。
そしてその施設のド真ん中で、
今まさに恋人が安眠中という事実。
ユリアが今いるのは、世界で最も危険な場所と言えるだろう。
しかし、彼女の命を救ったのが、そこにある"奇跡の間"であることも確か。
様々なリスクを伴うことを知りながらも、ユリアがその部屋に入ることを許可してくれたキサナに、改めて礼を述べるケンシロウ。
だがそんなケンに対し、キサナは淡々とした表情でこう答えた。
「私は感謝されるようなことはしていません。」
「ただ………
拳王様のご意思に従っただけです」
………へ?
「以前お話した、父・ナダイが仕えていた方とは、あの拳王…」
「あなた兄上、
ラオウ様なのです」
え
?
えっ………?
拳王様……?
今キミ、
拳王様って言った……?
自分は
拳王様の指示で動いてたって……?
ちょっと待って。パニックだわ。
色んなとこから変な汁出てきたわ。
なんか心臓の辺りキュッて痛くなってきたわ。
ジャグレ「たっ、大変だキサナ〜!!」
うるせえハゲ!
今それどころじゃねえ!
ひっこんでろクソ童貞!!
「け、け、け、け、拳王……」
「拳王が街に
乗り込んで来やがった!!」
な、なに―――ッ!!
急展開!!
思考回路はショート寸前!今すぐ会いたいよ!!
こここここうしちゃいられねえ!!
拳王様をお待たせするわけにはいかねえ!!
早く!お出迎えにあがらないと!!
しかし、世紀末覇者がこうしてお越しになられたわけだから……
折角なんで
街頭インタビューしてみよう!!
「あ、あいつが拳王か……
強そうだなぁ…… すげぇヘルメットしてるな……」
「あ……あれがうわさの拳王……
おっかねえ顔してたわねぇ……」
「ありゃあ、この街の衛兵たちじゃ
どうにもならねぇだろうな」
流石は拳王様……力をお見せするまでも無く、ただ"お越しになられた"だけで村人たちを完全に畏怖させてしまっている御様子。拳王様の纏う闘気(オーラ)に、彼らの生物的本能が恐怖を感じているのだろう。
だがそんな中
「検問所前にいた人 とっても強そうだったね!
僕もあんなふうに大きくて強くなりたいなぁ!」
拳王様、若年層からの支持を獲得。
なかなか見所のあるガキだ。
よかろう、供を許す。
そして遂に、あの御方の待つ正門前へ。
仁王立ちでお待ちだーっ!!
バカ野郎てめえら!
槍なんか構えてねえで椅子もってこい!
あと熱いおしぼりな!
「なぜ貴様がここにいる?ケンシロウ」
第一声からケンシロウの登場を訝しむラオウ様。
それは、彼がエデンを訪れた目的が、ケンとは別にあることを意味していた。
張り詰めた空気の中、睨み合う二つの北斗。
だがその時、キサナがゆっくりとラオウの眼前へと歩み出る。
そして……
「お待ちしておりました…… 拳王様」
はああああああああああああああああああああああああああああ!!!
…………俺は…………
俺はさっき……キサナの告白を聞いて仰天した……
「私は拳王様の指示に従っただけ」と。
確かに、ラオウ様とナダイ&キサナの主従関係には驚いた。
だが俺が真に驚いたのは、そこじゃないんだ。
キサナの口から「拳王様」という単語が出たことに衝撃を受けたんだよ!!
私が北斗の拳の中で最もシンパシーを感じるキャラクター。
それは
ザク様だ。
拳王様に心よりの忠誠を誓い、あの覇王の傍らで片膝を付く御姿に、私は例えようもないほどの共感と魅力を感じてしまうのだ。
それと同じ事を!
キサナみたいな美女が!
やったんだぞ!
今まで「ケンシロウさんの味方です!」みたいなツラしてた女がいきなりそのケンの目の前で「拳王様」って言いながら跪いたんだぞ!!
こんな……こんな興奮することが他にあるかよ……
このゲーム史上、間違いなく一番のトリハダシーンだよ……
もう俺の中で一気にキサナの評価爆上げよ
さっきはメイクのノリが悪いとか言って本当にすまんかった。
今のアンタ、最高に輝いてるぜ!!
かわいい!スタイルいい!肌きれい!安産型!アダムスキー型!
ラオウ様がこのエデンに訪れた目的。
それは
ユリアの引き渡しであった。
以前キサナが言っていたとおり、ユリアを奇跡の間に入れるよう指示したのは、かつてナダイが仕えていた人物……。それこそがラオウ様だったということだ。
つまり、
ラオウ様はユリアの命の恩人ということですね。
これはもう結婚するしかないですね。
しかし、スフィア・シティはその扉を硬く閉ざし、閉店ガラガラ中。
そしてその開け方を知るナダイも、3年前に死んでしまった。
そうキサナより告げられたラオウ様は……
突然の激高!
いつまでたっても工事の終わらないエデンの正門を、
八つ当たり壁ドンにて更に破壊し、ますます工期を遅らせてしまうラオウ様。
「ナダイが死んでいるのなら、もはや手遅れ
ならばスフィア・シティは完全に目覚めるであろう」
どうやらナダイの死は、ラオウ様にとっても想定外の事態だったご様子。
そしてその影響で、想像以上にマズい事態となっているようだ。
最早ここに用はない。
そう言って踵を返し、エデンを後にするラオウ様。
どうやらマジで、ケンシロウには全く興味がないらしい。
そんな蚊帳の外の主人公に、拳王様のやさしさがとぶ。
「全てを知りたくば、貴様も山頂にくるがよい」
山頂!?……ってあの、
例の裏山の!?
あんなところに秘密が眠っているというのか!?
サザンクロス後のユリアの動向を全て把握しているし……
スフィア・シティの秘密も知り尽くしている御様子だし……
どうやらこの世界のラオウ様は
相当な情報通であらせられるようだ。
一方のケンシロウは、あいかわらずの
情報弱者系主人公のまま。
前章でもなかなかのアホっぷりを見せ付けたケンシロウ。
果たして彼に汚名返上の機会は訪れるのか!?