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プレイ日記 【第25回】

サイドミッション(4)




♯7「世紀末3秒クッキング」



♪ベッドの〜まわり〜に〜何もかも脱ぎ散らして〜









今回のご依頼は、執事の「じいや」さんから頂きました






西田局長、探偵の皆さん、こんばんは。

今回、どうしてもご相談したいことがあり、お便りを送らせていただきました。

悩みというのは、私が執事として働く良家の坊ちゃんのことです。

坊ちゃんは、戦争でご両親を亡くされました。なので今は執事である私が親代わりとなって坊ちゃんを育てているのですが、最近坊ちゃんが
「死んだママの得意料理だったハンバーグを食べたい、食べられなければ断食する」と騒ぐのです。

気丈に振舞っておられるとはいえ、坊ちゃんはまだ幼い子供。寂しさを紛らわすため、今は亡き母親との思い出であるハンバーグを食べたくなる気持ちは痛いほど分かります。

しかし今はまともな食料も手に入らない時代。戦争以前の豊かだったご家庭で食しておられたようなハンバーグを、私の力で作ることなどできません。

そこで探偵局の皆様にお願いです。死んだ奥様のハンバーグを再現し、坊ちゃんに食べさせてあげることはできませんでしょうか。

優秀な探偵さん、是非お願い致します。





といった依頼を受けて、思い出のハンバーグ作りに乗り出すことになった優秀な探偵さんであるケンシロウ。

しかしその味を再現するには「新鮮な高級生肉」が必要だという。

この世紀末に、そんな生鮮食品を手に入れるのは至難の技。
だが唯一、闇商人のポゾなる男ならば取り扱っている可能性があるらしい。







優秀な探偵さんであるケンシロウは直ぐにポゾ氏の居場所を突き止めるが、向こうが高級生肉の代金として要求してきた額はなんと1000万イディアル。

関西の深夜番組でそんな予算は出せないと渋るケンシロウ探偵。
しかし、番組的にここで引くわけにはいかない。
ここはもう一度、心を込めてお願いしてみよう。





「生肉をくれ」

普段は「生肉をよこせ」と恐喝まがいの物言いをするケンシロウ探偵が、最大限の低頭平身な口調でポゾ氏と再度交渉。

すると、ケン探偵の直球に心意気に打たれたのか、ポゾ氏は、快く無料で肉を譲ってくれることに。

この直前にポゾ氏のお仲間を5人ほどぶっ殺した件は多分無関係だとは思う。


ご協力ありがとうございます!!






まあ大きなお肉!

完全に業務用だこれ!

ていうかそもそもこれ、何の肉?

ていうかハンバーグなのに合挽きじゃなくていいの?




様々な疑問を抱えながらも、とりあえず調理スタートです。
この番組で料理と言えば辻調理師のあの人ですが、ちょっと所在がわからないため、今回はケンシロウ探偵が直々に調理を行います。

尚、依頼者である執事のじいや氏は、相当な料理下手であり、かつ調理中にツバをペッペッと飛ばす癖があるらしく、坊っちゃんから絶対にNGとの指示が出ていたので、調理はさせてもらえませんでした。

執事やめてまえ。





とはいえ、ケンシロウ探偵とて調理の腕前は不明。
おまけに調理するにしても、包丁一本すらない状況。

しかし、優秀な探偵さんであるケンシロウは慌てない。
肉塊の前に立ったケン探偵は、突如その身に闘気を纏って……







調理台の肉に向けて 百裂拳をぶちかます!!

どうやら焼くまでの全工程を、全て百裂拳で賄うつもりらしい。

確かに、人間とて突き詰めればただの肉。百裂拳が通じぬ道理は無い。それに百裂拳という技は、渾身のパンチを叩き込んでいるように見えて、その実は秘孔への的確なソフトタッチ。威力よりも正確なテクニックが求められる技なのだ。故に肉の繊維を壊すことなくミンチにすることができ、且つ肉の中の空気も完全に抜ききることができる、クッキング奥義なのである。






そんなこんなで第一工程完了!!

北斗神拳伝承者は、無意識に北斗七星の軌道を辿るとされています。
なれば
肉が自然と北斗七星の型に並ぶのも当然と言えるでしょう。


ただ、あの巨大な肉塊を使ってハンバーグ7個分しか作れなかったというのは、実に不可解な現象と言わざるを得ません。

そういえば、調理中にアホほど肉が飛び散っていたような気もしますが、コンプライアンス的にややこしくなりそうなので、見なかったことにしましょう。





ともかくこれで型は出来たので、調理は第二工程の「焼き」へ。

しかし火も無ければフライパンも無い。
流石の北斗神拳でもこればっかりはどうしようもない。
このままでは折角の新鮮な生肉が痛んでしまう……








しかしその時、頼りになる男・闇商人のポゾが再登場!
火を扱う調理器具を持って駆けつけてくれました!!


(貴様を)丸焼きにしてやるぜ!」

と、肉の焼き方に自信を覗かせるポゾ氏。









しかし流石にそこまで手伝ってもらうのは申し訳ない。

というわけで今回は、あの肉焼き器の火力を確かめるための焼かれ要員……つまりは「デク」ならぬ「ニク」として、死んで頂きました。


ご協力ありがとうございました!









とうわけで、いよいよ焼き本番。


「おおおおおおおおおおおおお
 おおおおおおおおおおおっ!」


と放射する炎に渾身の気合を込めてハンバーグを焼いていきます。

お子様とYoutuberの皆様は、絶対に真似しないでください。
プロによる安全な指導の下で行っています。










完  成


百裂拳と火炎放射器を用いた究極の男の料理で、「おふくろの味」を作るという、矛盾を極みのようなハンバーグがここに爆誕しました。



「生肉のお兄ちゃん! ありがとう!
 生肉のお兄ちゃんのハンバーグ……
 本当においしかったよ!」



「じいや、ぼく決めた!
 ママの味を忘れないように
 自分でハンバーグを作れるようになる!」





ここで局長号泣!!



「だからお兄ちゃん!今度作り方教えてね!
 あのアタタタタって、ひき肉作るやつ
 あれかっこよかったし、ぼくもやりたい!」



「悪いことは言わない……包丁を使え」



テッテッテッ↑







♯8「職人と信念」







テ―――――――――ン(ピアノ音)








「肩当て」。

人体の要所である肩を、日々の危険から守ってくれる相棒。


だが忌憚の無い意見を述べるなら、実用的な装備とは言いがたい。
防具としては形骸化し、今ではファッションとして身につける者も多い。
普段あまり陽の目を浴びることの無い、地味な存在だ。



だが、そんな業界にも「プロフェッショナル」と呼ばれる者は存在する。







肩当て職人の朝は早い。

肩当を作り始めて、今年で丸50年。
このエデンにも、彼の作品のファンだと言う者は多い。


「肩当てはこの時代の、男の身だしなみの象徴……。
 強い男、素晴らしい男には、それ相応の肩当てが似合う。
 同じように見えて、実はピンキリなんですよ、肩当ても。」





だが今、そんな彼に廃業の危機が迫っていた。(ピアノ音)





エデンに突如現れた「ショルダーキラー」を名乗る男。

肩当てに魅入られたその男は、良い肩当てを付けている者を見つけては襲撃、強奪を繰り返しているという、歪んだ愛に心を狂わせた犯罪者であった。

誉れ高い評価を受ける老人の肩当ては、ショルダーキラーの格好の獲物。
今、老人の肩当てを付ける事は、我が身を危険に晒す事に等しい。
職人のもとに届いていた肩当ての注文は、全てキャンセル状態にあった。





己の生活のため。いや、それ以上に、肩当ての未来のため。
ショルダーキラーなる男の行為を許してはならない。

しかし肩当てを愛する人間に悪い人はいない。そう信じる職人は、ショルダーキラーを退治するのではなく、説得による解決を求めていた。





そんな老人に、頼もしい協力者が現れた。
彼の名はケンシロウ。武術家であるこの若者もまた、肩当てを愛する者の一人。


「肩当て界の未来のためにも……お願いします!」

そんな界は無い――――。

我々の内なる思いとは裏腹に、老人の熱い職人魂に心打たれたケンシロウは、迷う事無くその頼みを承諾する。



肩当てを愛する者達の闘いが始まった。







とにもかくにも、まずはショルダーキラーが姿を見せねば始まらない。

犯人をおびき出すため、職人は三日三晩寝ずに完璧な作戦を練り上げていた。

名付けて「高級肩当てで誘き出し作戦」







作戦概要は

「肩当てを持ったケンシロウを路上で棒立ちさせる」


これだけ。



この時、我々とケンシロウは、同じ事を思っていた。
「果たしてこんな作戦が上手くいくのか――――――。」


だがその後、我々は思い直した。
これは、「肩当て職人」だからこそ気付けた最も合理的な作戦であると。


ケンが手にしている肩当ては、職人の作品の中でも最高傑作と言われる逸品。ショルダーキラーが本当に肩当てを愛しているなら、間違いなくこの肩当ての魅力に気付くはず。つまり大事なのは、この肩当がショルダーキラーの目に留まること。通常通り肩に装備して歩き回っては、角度や地形によって見え難くなるケースも考えられる。故に多少不自然であろうとも、こうして聖杯を賜ったが如くに肩当てを両手で抱え、立ち尽くす事がベスト。最も相手の目に留る可能性が高い方法なのだ。


職人は、肩当てを作るプロ。

ショルダーキラーは、肩当ての良し悪しを見抜くプロ。

道は違えど、同じ肩当を愛する者同士であるが故に実行することの出来たこの作戦は、まさに乾坤一擲の妙案。肩当が紡ぎし、絆が生んだ奇跡。






しかし、万全を尽くしたからといって必ずしも成功するとは限らない。
この日、残念ながら犯人は姿を現さなかった。




ひとつ、想定外な事もあった。
ケンシロウなる青年が、意外と堪え性の無い男だったことだ。

職人の作戦内容が腑に落ちなかったのか、任務中の彼からは終始やる気が感じられず、最後の方では地べたに座り込んでいた。これでは作戦が台無しだ。





しかし、プロフェッショナルはそんな事で諦めたりはしない。
職人は、次なる作戦もちゃんと用意していた。








作戦βは、肩当を地面に点々と置いて相手を誘き出すという、とある童話をモチーフとした作戦。



おそらく、多くの人がこの光景を見て滑稽だと思うだろう。
だがこの作戦は、現代でも「パンくずリスト」という名称でIT業界に使われているほど利便性が高い手法なのだ。



ネットオークションのような複雑なサイトの場合、今いるページがツリー型の構造のどの位置にあるのかを示す、上記のような案内文字が表示される事がある。これが「パンくずリスト」と呼ばれるもの。ヘンゼルとグレーテルが道に迷わぬためにパンを撒き置いた事に由来する名称だ。

そう、つまりこの作戦は、道に迷わぬためのもの。

相手を誘き出すためではないのだ。

このことを職人に伝えるべきか、我々は悩んだ末、黙って見守ることにした。





立案段階から既に不安しかない作戦ではあるが、すっかり非協力的な態度をとりはじめたケンシロウの働きも不安だ。

第二作戦を開始する前に勝手に帰ろうとしたり、作戦内容を聞いて「こんなもんで誘き出せるのか」と怪訝な表情を浮かべたりと、明らかに職人に対する態度が悪くなってきている。肩当て界の未来は、暗い。




いざ作戦が始まっても、やはりケンシロウのモチベーションはあがらない。
今度は始まってすぐに座り込んでしまった。







そして遂には夢の中へ。

等間隔に並べ置かれた肩当て。
その先で地に横たわり眠る青年。
これほどシュールな光景を、我々は見た事が無い。






だがそんな中、事態は大きく動きだしていた。








来たっ……!


明らかに作為的に撒き置かれた肩当てに一切の疑念を抱くことなく、一人の男がホイホイと姿を現した。

間違いない。この男こそ肩当ての暗黒面に堕ちた男、ショルダーキラー

今、我々のカメラがハッキリとその男の姿を捉えた。




寝起きで意識がハッキリしていないケンシロウを尻目に、職人が飛び出す。

己の倍ほどの身の丈を持つ筋骨隆々の男を前に一切引くことなく、己が魂を言葉にしてぶつける肩当て職人。緊張が走る。




「……なぜ肩当てを奪おうとするのじゃ?」






「同じ、肩当てを愛する者なら分かるじゃろう?
 ……おぬしの肩当ての愛し方は、間違っておると!」






「へっ。何言ってるんだ?
 俺は別に、肩当てなんて好きでもなんでもねえよ。」






「えっ……?」






「売りとばすと、結構な儲けになるからな。
 それだけだ」



























♪ずっと探していた 理想の自分って 
もうちょっとカッコよかったけれど
ぼくが歩いてきた 日々と道のりを
ほんとは“ジブン”っていうらしい





Q:モットーはなんですか




「良い肩当ては、良い持ち主の元に」。

「誇り高い者達にこそ、私の肩当てを付けて貰いたい。
それが50年の職人人生の、一番の願いですね。」














「"肩パッド"って言わない人……ですかね。」




“あと一歩だけ、前に 進もう”









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