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ユリア伝
ストーリー 登場人物 流派・奥義 STAFF



ストーリー


序章


 
世界が核の炎に包まれる以前―――。
 幼きユリアとジュウザの兄妹は、ダーマに連れられ、空港へと訪れていた。しかし搭乗の直前、突如ユリアは屋上へと逃げ出してしまう。乗り遅れた一同が、飛び発った飛行機を見上げていたその時―――機体は炎に包まれ、爆音と共に砕け散った。ユリアが持つ、予知の力・・・。ユリアは、天の声により、この事故が起きる事をあらかじめ察知していたのである。だがそれは、幼きユリアには余りにも重過ぎる力であった。怯えるユリアに、ダーマは言った。天が何故貴方に力を授けたのか、その意味を知るときが必ず来る。それまで貴方を御護りするのが、自らの役目であると。


 リュウケンの下で暮らすことになったユリアは、ダーマと共に北斗の寺院へ。しかしリュウケンの呼びかけに、ユリアは何も応えなかった。幼くして両親を失ったユリアは、感情というものを失くしてしまっていたのである。そんな彼女の腕の中には、一匹の子犬が抱かれていた。それは、寺院の門前に捨てられていたブルテリア犬種の子供であった。
 とその時、ユリアの中にある感覚が奔った。彼女を強張らせたのは、修行に励む北斗四兄妹の長男、ラオウであった。同じく気配を感じたのか、ラオウに向かい、執拗に吠え続ける子犬。苛立つジャギが子犬を蹴飛ばそうとしたその時―――、身を呈して子犬をかばったのは、末弟のケンシロウであった。ケンから子犬を受け渡されたユリアの顔には、生まれて初めての笑顔が浮かんでいた―――。






離別


 数年後・・・月日は北斗の四兄弟を、そしてユリアを大人へと成長させた。トビーと名付けられたあの犬も、齢を感じさせない元気な姿で走り回っていた。しかし、老いたリュウケンには、伝承者を決めねばならない日が近づいていた。伝承者が決まれば、四兄弟は別々に道を往く事になる。しかしユリアは、心に決めていた。自分が歩む道は、ケンシロウと共に往く道である事を・・・

 虎に死を恐怖させたラオウと、死を覚悟させたケンシロウ。暗殺拳である北斗神拳の伝承者としてリュウケンが選んだのは、ケンシロウのほうであった。その決定に納得できないジャギは、銃を武器に、ケンに辞退するよう迫る。だがケンの実力は、ジャギを大きく上回っていた。秘孔でジャギの頭を歪ませたケンは、さらに止めの八悶九断を振り下ろす―――。しかし、ケンにはジャギを殺す事はできなかった。北斗神拳の伝承者としては、ケンの性格はあまりにも甘すぎたのだった。

 旅立とうとするケンとユリアの前に、シンの軍団が立ちはだかった。この乱世の時代、甘いケンシロウではユリアを守り続ける事はできない。ならば今のうちにユリアを奪ってしまえ。そうジャギから唆されたシンは、愛するユリアを力で手に入れるため、二人のもとへと訪れたのである。そのシンの執念の前では、やさしいケンの拳はあまりにも脆かった。胸に七つの傷をつけられたケンを残し、ユリアはサザンクロスへと連れ去られたのであった。





ダーマとの約束


 一年後―――。シンはKING軍の王として民を支配し、略奪を繰り返していた。全てはユリアを喜ばせるために。だが、自らのために民が苦しむ事は、ユリアにとって哀しみでしかなかった。共にサザンクロスへと訪れていたトビーに、自らのネックレスをケンに渡すよう託し、ユリアは城のテラスから身を躍らせたのであった。
 シンとトビーが城を駆け下りた時、そこにあったのは、無傷のまま横たわるユリアの姿であった。南斗五車星―――。南斗正統血統であるユリアを救うため訪れたその男達が、彼女の危機を救ったのである。だが今、更なる危機が迫りつつあった。ユリアを狙うラオウが、軍勢を率いてこのサザンクロスに近づいていたのだ。ラオウが相手では、いくら自分でもユリアを護りきる事はできない。そう考えたシンは、五車星にユリアを託す事を決めた。自らがユリア殺しの悪名を被る事も厭わずに・・・



 リハクと共に、南斗最後の将が待つ城へ行くこととなったユリア。その旅の中でユリアが見たのは、ラオウが齎した今の世の姿であった。恐怖で支配された人々。滅ぼされた村々。そこには、一片の希望すらなかった。KING軍までもが陥落した今、もはや拳王の覇行は、目前に迫りつつあった。
 南斗の城でユリアを待っていたのは、病に犯された南斗最後の将であった。だが、彼は"代理"に過ぎなかった。真の南斗最後の将とは、南斗正統血統を引くユリアだったのである。そして、彼女が来るまで仮面を被り続けたその「将」の正体は、あのダーマであった。
 暗黒の世にユリアが見た見た唯一の光・・・。それがケンシロウである事を知ったダーマは、民の力を集めた軍を作り、その頂点にケンシロウを迎え入れるよう告げた。北斗と南斗が結ばれた時、必ず奇跡は起こる。そのために天はユリアに力を授けた―――そう、ダーマは確信していた。そしてそんなユリアを守るため、ダーマは彼女の代役として将を務めていたのだった。あの日、空港で交わした約束を果たすために・・・。息絶えたダーマから仮面を受け継いだユリアは、今新たなる南斗最後の将として立ち上がったのであった。






運命の強敵


 ユリアが将となって一年―――。
 彼女が目にしていたのは、荒野を逃げるマントの女と、それを追う盗賊達であった。だがそれは、盗賊達から食糧を奪うための"男"の演技であった。南斗水鳥拳のレイ。彼は、どんな手を使ってでも生き延びねばならなかった。妹アイリを拐った、七つの傷の男を殺すまで・・・
 五車星に命じてレイを捕らえた南斗最後の将は、レイの瞳に哀しみを見ていた。その中に見えたのは、レイの未来・・・。ケンシロウの運命の強敵となるべき「義星」の宿命であった。レイを解放し、「南斗最後の将」は言った。胸に北斗の星を持つ男、ケンシロウに会うがいい。その時おまえの哀しい旅は終わるだろう、と。


 雪の季節が終わりを告げた頃・・・自らの身体に病を感じたユリアは、トキの元へ訪れた。ユリアではなく、南斗最後の将として。あの核の落ちた日、ユリアはトキに命を救われていた。だがそんな命の恩人の前でも、ユリアは正体を明かすことは出来なかった。この世に平和を戻すまでは仮面は脱がない、ユリアはそう心に決めていたのだった。
 治療を終えた後、トキは将にあるものを渡した。束ねられた白髪・・・それは、あのレイのものだった。レイはケンシロウのためにラオウと戦い、敗れた。残りの命を三日とされたレイは、僅かに命を延ばす秘孔心霊台の激痛に耐え、その髪を白髪へと変えたのであった。しかし、レイに悔いはなかった。妹アイリを拐われ、餓えた狼と化していたレイ。そんな荒んだ心を拾ってくれたケンシロウに、そしてその出会いへと導いてくれた南斗最後の将に、レイは何より感謝していたのである。その白髪は、そんな最後の将への感謝の証、そして美しくも壮絶に生きたレイの証なのであった。





宿命の犬


 拳王軍と南斗最後の将の戦いは近い――――。それに合わせるかのように、南斗の城には続々と義勇兵が集まり始めていた。彼等の腕に巻かれた白い布・・・それはケンシロウにあやかったものだった。弱き民の為に闘うケンシロウは、彼等にとって勇気の象徴であり、文字通りの救世主だったのである。だがその時、良からぬ報せが入れられた。ケンシロウがサウザーに捕らえられた―――と。

 砂漠に倒れるケンシロウの姿を発見したユリア達。だがその身体に触れた瞬間、ユリアは全てを理解した。幼き頃、自らがケンシロウに感じたもの・・・それはケンが歩む救世主としての道であり、それに同行する自らの未来・・・。全てを捨ててケンシロウを護る。それが己に託された宿命である事を、ユリアは今知ったのであった。ラオウにケンの救出を託し、将はその場を後にした。いつか必ず「ユリア」として再会できる日を信じて・・・


 ケンが聖帝サウザーに勝利したその時―――。ケンのもとへ駆け寄ってきたのは、あのトビーであった。ケンに渡して欲しいと託されたネックレスを、時を経て、トビーは今その指令を果たしたのである。そしてそれは、トビーの最期の役目でもあった。いずこかへ消え往くその友の姿を見て、ユリアは初めて知った。トビーもまた宿命の星を持つ者であった事を。ケンとユリアの想いを伝えるめ、北斗と南斗に仕える忠義の星。誰にも知られること無く、宿命の為に命を燃やし、ユリアを導いたトビー。自らの役目を終え、彼は今、静かに最期の時を迎えようとしていたのだった。

 ケンシロウとラオウの戦いの果てに待つ未来。それは、ユリアにも分からなかった。だが、ユリアは確信していた。幼き日に理解できなかった己の存在、己の力は、その未来のためにあるのだと―――。





ストーリー要点抜粋&考察

【ユリア関連】
・ユリアとジュウザ、ダーマに連れられ空港へ。しかし飛行機事故を予知したユリアは搭乗を拒む。
公式サイトでのダーマの紹介によると、彼は「ユリア達を日本に連れて来た」となっている。ということは、この空港は日本ではない別の国で、今から日本に向かうところという事だろうか。たしかにアテンダントの人とかも民族衣装のようなものを着ているし、日本ぽくはないが。
・ダーマ、ユリアに対し、いつかその力(予知能力)の意味を知る時がくると告げる。その時まで自分がユリアを守ることを約束。
結果的にはユリアが成長するまでの間、自らが「南斗最後の将」を務めることでその役目を果たしたわけだが、それでも「あなたを守る」と約束した直後に北斗の寺院にあずけてるってのは端から見たら真逆の行動にしか見えないよなあ。
・ユリア、ダーマに連れられ北斗の寺院へ。今後、北斗四兄弟と共に暮らすことに。
まあ確かにユリアは、ケン達と一緒にいる回想が多く描かれているし、北斗に住んでいた可能性もなくはない。しかしそれは、ケンやラオウの視点での回想であるので、「北斗の寺院でユリアに一緒に居た記憶」のみが描かれるのは当たり前であり、信憑性には欠ける。実際はジュウザと遊んでいたようだし、やはり南斗で暮らしていたと考えるのが本筋だろう。
・ユリア、リハクと共に南斗最後の将のもとへ。その旅の中で、ラオウの覇行によって地獄と化したこの世の真の姿を見る。
なんか、部分的に報道して視聴者を煽るマスコミに近しいものを感じる。
・ユリア、南斗最後の将と対面。その正体はダーマ。慈星の宿星をもつ正統血統者として、新たに南斗最後の将となるよう告げられる。民の力を束ねた軍団を作り、その頂点にケンシロウを迎え入れ、ラオウに相対させるよう命じられる。
おそらく慈星をもたない仮初の将であるダーマには、民を束ねることはできなかったのだろう。拳王軍の兵士すら虜にしてしまうユリアの慈母星が、いかに重要なものなのかが判る。
・天がユリアに予知の力を与えたのは、北斗と南斗が一体となり、奇跡を起こすため。
南斗と一体となるべき北斗の男が誰かを見極めさせるための力だったという事か。
・ユリア、南斗最後の将となって一年後、七つの傷の男を探すレイと出会う。
ユリアが飛び降りたのはケンvsシンの直前。その後、一年経ってもまだレイがケンと出会っていないという事は、GOLANやジャッカルなどのイベント消化に一年以上を費やしているということになる。
・ユリア、病に倒れる。トキのもとへと運ばれ、治療をうける。
例の病だと考えてしまうのだが、治療後にトキは特に何も言わない。ただの疲労?あと、トキもユリアを愛していたんだし、仮面越しであろうと正体に気付きそうなものだが・・・。勿論気付いていたとも考えられるが、それなら自分の愛した人と同じ風を纏っているとか言うかなあ。
・ユリア、ケンがサウザーに敗北したとの報を受けて救出に。
なんかケンって拳王軍だけじゃなく、いろんな人に監視されてんのね。
・ユリア、再会したケンに触れた瞬間、幼き頃にケンに感じたものの正体を知る。それはケンが救世主の道を歩む事と、自分がその道を共に歩むという未来。
幼い頃にケンに何か感じたけど、それが何かはよくわからなかったから、とりあえずつきあっちゃえみたいな感じなノリだったのだろうか。

【南斗関連】
・南斗聖拳108派、大半がラオウに服従を誓う。
次の「ラオウ伝 激闘の章」では、南斗の半数以上は聖帝配下ってことになってるし・・・せめて同シリーズ内くらいは設定を一貫しておいて欲しい。
・リュウケンは、南斗を重んずるが故に南斗正統血統のユリアを引き取った。
確かに北斗と南斗は争わずに〜とか一番口すっぱく言ってたのはリュウケンだったなあ。
・南斗乱れる時、北斗現れる。その北斗と共に最後に現れるが故に「南斗最後の将」と呼ばれる。
たまたま最後に残ったから「最後の将」じゃなかったのね。常に大トリなのね。
・トビー、ケンにユリアのペンダントを渡して、何処かへと去る。ケンとユリアの想いを繋げるため、北斗と南斗に仕える忠義の星。それがトビーの宿命。
よくわからんが、キューピッドだったってことか?長いスパンでの。


【レイ関連】
・レイ、五車星の手によって捕らえられる。城へと連れて行かれ、南斗最後の将と対面。胸に北斗の星を持つ男・ケンシロウと会い、その男を心で感じるがいいと告げられる。
あっさり五車星に捕まるのはアレだが、まあ三人がかりだし、不意打ちだし、まあ仕方ないか。しかしこの時点でケンの事を知ったのなら、ケンと出会った時、まず胸を確認したはずだよねえ。
・レイ、自らの白髪をトキに託し、将に渡して欲しいと頼む。ケンと引き合わせてくれた事への感謝の証。
このエピソード自体は好きだが、すこし時間的に無理がある。ユリアとレイの対面から、白髪を受け取るまでは、一冬の初めから終りまで。およそ3ヶ月程度だ。その間に牙一族、ジャギ、アミバ、カサンドラ、そしてラオウやユダというイベントをこなし、既にケンはシュウと合流までしている。とても3ヶ月で消費できる内容ではないと思うのだが・・・

【シン関連】
・KING軍の奴隷の数が減っているのは拳王軍の所為。シンとラオウには古い因縁がある
古い因縁ってなんだろう・・・気になる・・・。調子のってたらボコられたとか?
・KING軍、拳王軍に敗北し、降伏。シンの処遇は、いずれケンシロウが決着をつけるとして放置される。
原作では描かれなかった「攻め込んできた拳王軍は結局どうなったのか」という部分。これだと、ケンがサザンクロスに来たとき、既にKING軍は降伏した後ということになるなあ。




原作からの追加&変更シーン

【ケン、ラオウとユリアの出会い】

・原作ではユリアの感情を取り戻すために連れて来られただけだが、本作ではユリアを預けるために来訪。
・原作ではラオウとケンの二人稽古だが、本作ではラオウ-トキ、ジャギ-ケンの組み合わせでの稽古。
・原作ではまだケンは道場に入ることすら許されていないが、本作では皆道場内にいる。
・ユリアが道場の入口に捨てられていた犬を拾うというエピソードが追加。
・原作では落としたマリをケンが拾ったときに感情が戻るが、本作では犬(トビー)がジャギに蹴られそうになったところをケンが庇い、それを返される時に感情が戻る。


【虎を使っての伝承者選び】

・リュウケンが北斗神拳の使い道を聞き、ラオウが「天」と答えるというエピソードはカット


【伝承者決定】

・原作では銃を突きつけて椅子に座らせていたが、本作では椅子はなし。
・脚の自由を奪う秘孔を突かれたジャギが、足がもつれさせるシーンは無し。


【ケンvsシン】

・シンの部下が、ケン達に向けてボウガンを構えるというシーンが追加
・リュウケンn墓を壊す場面はカット
・本作では七つの傷の3つ目、4つ目の穴を指2本で同時につける。
・原作にはいないトビーがいる。

【ユリア投身】

・原作ではサザンクロスの完成をうけてユリアが身を投げるが、本作ではシンが宝石を持ってきたとき。
・ユリアが身を躍らせた瞬間、シンがその服をつかもうと腕を伸ばすシーンが追加。
・原作にはいないトビーがいる。

【トキ被爆】

・シェルターの中にいる老人が、自分が外に出ると名乗り出るシーンが追加。トキは無視して閉門。
・本作では死の灰を浴びた直後にはトキの髪が白髪に。