
拳志郎との激闘を終え、眠り続ける劉宗武は、ある悪夢にうなされていた。それは、目の前で父が殺された幼き日の出来事・・・。それは、今でも忘れる事のできない、宗武の忌まわしき過去の記憶であった。父を殺した男の名は杜天風。今や秘密結社「大湖弊」の大ボスとして、闇の世界の権力者にまで登りつめていた男であった。そして今、その男の飽くなき野心は、青幇が支配する上海にまで伸びようとしていた。
贈りつけられたヘッケラーの死体を見て、そそくさと逃亡劇を開始する杜天風。だがそれは、宗武が杜の居場所を突き止めるための罠であった。車で逃げ惑う杜を競馬場へと追い込み、その悪夢の根源を討ち取らんとする宗武。だが拳志郎が駆けつけた時、傷を負っていたのは宗武のほうであった。杜天風は、対北斗神拳の切り札として、ある用心棒を雇っていたのである。その男が使った拳法の名は、西斗月拳。拳志郎は、かつてその拳法に纏わる不思議な体験をしていた。
1800年前、最強の暗殺拳・北斗神拳は、シュケンの手によって創始された。だがその歴史の中で、闇に葬られた拳があった。月氏族に伝わる秘拳、西斗月拳―――。それは、北斗神拳の秘孔術の祖となった拳法であった。
数日後、街中では、偽者の閻王相手に暴れるヤサカの姿があった。偶然居合わせた飛燕は、関与せずに立ち去ろうとするが、すでにその気配はヤサカに感づかれていた。不意打ちの秘孔針で動きを封じられた飛燕は、とある廃墟の中へと連れ込まれ、張り付けにされてしまう。北斗の傍流である極十字聖拳もまた、ヤサカの抹殺対象の一つだったのであった。来たる処刑の日に向け、執拗に繰り返されるヤサカの拷問を、飛燕はただその身に受け続けることしか出来なかった。
その頃、杜天風は、ある珍妙な装備をヤサカに見せびらかしていた。秘孔指突防御装置と名づけられたそれは、全身のスーツに高圧電流を流し、秘孔突きを防ぐというものであった。しかしその自慢の装備も、魚雷の前には何一つ役に立たなかった。一瞬にして船を沈められ、海へと投げだされる杜天風。だが彼の真の不幸はその後に待っていた。潜水艦と共に杜天風が浮上したのは、あの宿敵・劉宗武の目の前だったのである。作戦通り、宗武を感電させることには成功した杜であったが、無論その程度で宗武が倒せるはずも無かった。海へと蹴落とされた杜天風は、自らの電気で感電しながら、深い海の底へと沈んでいったのであった。
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| ≪劉宗武編 | 天授の儀編≫ |