
流飛燕との激闘が終わって暫くの後―――。ある一人の暗殺者が、ドイツから上海へと呼び戻されていた。彼の名は劉宗武。北斗三家拳最後の一つ、北斗劉家拳の伝承者であった。だが彼にとってその拳は、時代の英雄を殺し、歴史を弄ぶための手段に過ぎなかった。
拳志郎の前に現れた一人の女僧、夏文麗。彼女はかつて劉宗武に捨てられた、北斗劉家拳の女であった。彼女の願い、それは拳志郎に劉宗武を殺してもらう事であった。この世に平和をもたらすのが北斗神拳伝承者の使命……。ならば戦争を齎そうとする劉宗武を倒すは貴方の宿命―――。そう説く夏文麗であったが、拳志郎は、彼女の目に宿る宗武への愛を見抜いていた。愛を否定する宗武から、乳房を抉り取られた今でも、彼女は宗武を愛し続けていたのであった。
互いに一歩も譲らぬ壮絶な殴り合いを展開する二人。スピード、パワー、技能、全てにおいて互角の二人に、優劣を分けるものは無かった。そして放たれた最後の一撃が、互いの致命の秘孔を外れた瞬間、もはや二人には闘いを続ける力は残されていなかった。
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| ≪流飛燕編 | ヤサカ編≫ |