
紅華会の後ろ盾であったジャン・カルネ巡査総長。黄西飛と繋がっていたインチキ司祭。そして霊王を殺した田学芳。紅華会に組する者たちへの粛清の嵐は、青幇の復活広告として上海に吹き荒れた。だがそれは同時に、拳志郎が上海に留まる理由が無くなったという意味でもあった。しかしそんな時、拳志郎の前に、かつて出会ったあの謎の道士が姿を現した。この大陸で強き男達と出会うがいい。そう言い残し、道士は煙のように拳志郎の前から姿を消したのだった。
上海の遥か南の地、西湖。杭州一の色町であるその地では、生き残った紅華会の面々が、復活に向けて動き出そうとしていた。彼等がこの地へと訪れたのは、紅華会の二番頭・張太炎の力を頼るためであった。女を抱くことにしか興味がないその虚け者は、北斗三家拳の一つ・北斗曹家拳の使い手であった。
紅華会の新戦力として章烈山が送り込んできたのは、辺境の馬賊達であった。そんな中、章が自らの嫁と称する女馬賊・李秀宝もまた、上海へと足を踏み入れていた。彼女が現れた場に偶然居合わせた拳志郎は、残しされたその匂いに衝撃を走らせた。懐かしきその香りは、行方不明となっていた恋人・玉玲のものに他ならなかった。
爆龍陽炎突、幻夢百奇脚といった独自の奥義で、拳志郎を一方的に攻め立てる張太炎。だが、北斗神拳の凄まじさは、太炎の想像を遥かに超えていた。獣のごとき速度で移動する奥義・雷暴神脚と、卓越した動体視力が合わさったとき、もはや太炎の奥義は拳志郎の身体に触れることすらできなかった。太炎が作り上げたのは、父・大厳を殺すためだけに編み出された奇襲の拳。憎しみによって練り上げられた奇拳では、闘神の拳である北斗神拳に及ぶはずもなかったのであった。
敗北した太炎が死を選ぼうとしたその時―――、それを止めたのは、北斗曹家拳の精鋭部隊「五叉門党」の者達であった。彼等が命をかけて太炎を守る理由……それは全て章大厳の命令によるものであった。大厳は、太炎から向けられる己への憎しみを見抜いていた。だが大厳は、それを知った上であえて太炎の北斗曹家拳を伝授したのだった。太炎がいつか己を倒し、真の北斗曹家拳伝承者となる事を信じて―――。章大厳と闘うその日まで、太炎は死ぬべき男ではない。その思いを汲み取ったギーズは、太炎の顔に十字の傷を刻みこんだ。それは、妹ソフィーを殺した罪を背負って生きろという、ギーズからの戒めの傷であった。
|
| ≪霊王編 | 再会編≫ |